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ーここは、どこなんだろう…。
笠原優陽は1人、どこかもわからない神社の中で立ち尽くしていた。昨日都内のワンルームマンションに帰宅し、リクルートスーツを脱ぎ捨ててソファに倒れこむようにして眠りに落ちたところまでは覚えているのだ。しかし気がつくとこんなところにいる。何がなんだかさっぱりわからない。
ーもしかしてまだ寝ぼけてるのかな…。
そう思って頬をぺしぺしと叩いてみるがやはり夢から覚める気配は無い。
困った。今日も大事な就活の予定が午前中から詰まっているというのに。今が何時ごろなのか時計どころか、何も持って無いので正確な時間がわからないが、おそらく明け方だろう。もし夢遊病とかで無意識のうちに外に出て徘徊していたとかならば、早くここがどこなのか調べて自宅に戻らなければ。
「…ここほんとにどこ…?」
少し歩いてみると向こうの方に鳥居が見えたので、ここが神社だということはわかった。鳥居の作りからして、かなり格式の高そうな神社だ。
「…こんな立派な神社、近くにあったかな…」
疑問は尽きないが、これほどの神社なら社務所に人がいるに違いない。事情を説明して道を教えてもらうのが手っ取り早いように思った。優陽はとぼとぼと、本殿のある方向へと向かおうとして、目を疑った。
”晴明神社”
大きな五芒星とともに、古びた看板にはそう書いてあった。
「…嘘?!…晴明神社って確か京都だよね…」
私は寝ている間に歩いて500kmも移動して京都に来たというのだろうか。京都なんて高校の修学旅行で一回来たきりだ。
「…どうしよ」
と声に出してみたはいいものの、私は突然のことに全然頭がついていけなかった。
少し歩いて社務所を探すが、朝早すぎる時間のせいか明かりがついている気配は無い。神社の外に出て見るかと思っているところに、本殿の中にぼんやりとした明かりがついているのがみえた。
ーもしかしたら、朝の掃除をしにきた神主さんとかがいるのかもしれない。
そう思って、普段はお賽銭を入れる時しか遠目に見えない、神社の本殿の中に入って声をかけてみることにした。
「ーあの、すいません!誰かいませんk…」
ーそこで私が目にしたものは、さっきの看板よりももっと信じ難い光景。
本殿の中には5、6人の人がいた。外からは人の気配さえ感じられなかったのでここにこんなに人が居たのも驚きだがー更に驚くべきことには、その人達は皆袴や僧衣、着流しなどの和服に身を包み物々しい雰囲気を醸し出している。
「…ひっ」
ー私は何かとてつもなく怪しい集団に出くわしてしまったのかもしれない。
逃げなきゃ、と本能が警告するけども足がすくんで動けない。
異形な者たちの視線が優陽に集まっている。恐怖に支配されていると、その中の1人ー白装束に烏帽子みたいな帽子をかぶった糸目の青年が立ち上がってにっこりと微笑んで優陽にこう話しかけた。
「…遅かったなぁ、こっちから迎えにいこーか思っててん!」
屈託のない笑顔を予想外に向けられて、私は咄嗟に言葉が出なかった。
「…え?」
…そこで私の記憶はもう一度途絶えている。
笠原優陽は1人、どこかもわからない神社の中で立ち尽くしていた。昨日都内のワンルームマンションに帰宅し、リクルートスーツを脱ぎ捨ててソファに倒れこむようにして眠りに落ちたところまでは覚えているのだ。しかし気がつくとこんなところにいる。何がなんだかさっぱりわからない。
ーもしかしてまだ寝ぼけてるのかな…。
そう思って頬をぺしぺしと叩いてみるがやはり夢から覚める気配は無い。
困った。今日も大事な就活の予定が午前中から詰まっているというのに。今が何時ごろなのか時計どころか、何も持って無いので正確な時間がわからないが、おそらく明け方だろう。もし夢遊病とかで無意識のうちに外に出て徘徊していたとかならば、早くここがどこなのか調べて自宅に戻らなければ。
「…ここほんとにどこ…?」
少し歩いてみると向こうの方に鳥居が見えたので、ここが神社だということはわかった。鳥居の作りからして、かなり格式の高そうな神社だ。
「…こんな立派な神社、近くにあったかな…」
疑問は尽きないが、これほどの神社なら社務所に人がいるに違いない。事情を説明して道を教えてもらうのが手っ取り早いように思った。優陽はとぼとぼと、本殿のある方向へと向かおうとして、目を疑った。
”晴明神社”
大きな五芒星とともに、古びた看板にはそう書いてあった。
「…嘘?!…晴明神社って確か京都だよね…」
私は寝ている間に歩いて500kmも移動して京都に来たというのだろうか。京都なんて高校の修学旅行で一回来たきりだ。
「…どうしよ」
と声に出してみたはいいものの、私は突然のことに全然頭がついていけなかった。
少し歩いて社務所を探すが、朝早すぎる時間のせいか明かりがついている気配は無い。神社の外に出て見るかと思っているところに、本殿の中にぼんやりとした明かりがついているのがみえた。
ーもしかしたら、朝の掃除をしにきた神主さんとかがいるのかもしれない。
そう思って、普段はお賽銭を入れる時しか遠目に見えない、神社の本殿の中に入って声をかけてみることにした。
「ーあの、すいません!誰かいませんk…」
ーそこで私が目にしたものは、さっきの看板よりももっと信じ難い光景。
本殿の中には5、6人の人がいた。外からは人の気配さえ感じられなかったのでここにこんなに人が居たのも驚きだがー更に驚くべきことには、その人達は皆袴や僧衣、着流しなどの和服に身を包み物々しい雰囲気を醸し出している。
「…ひっ」
ー私は何かとてつもなく怪しい集団に出くわしてしまったのかもしれない。
逃げなきゃ、と本能が警告するけども足がすくんで動けない。
異形な者たちの視線が優陽に集まっている。恐怖に支配されていると、その中の1人ー白装束に烏帽子みたいな帽子をかぶった糸目の青年が立ち上がってにっこりと微笑んで優陽にこう話しかけた。
「…遅かったなぁ、こっちから迎えにいこーか思っててん!」
屈託のない笑顔を予想外に向けられて、私は咄嗟に言葉が出なかった。
「…え?」
…そこで私の記憶はもう一度途絶えている。
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