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二十章 最後まで夜遊び!!
504 誕生日会の本当の目的
しおりを挟むフィリップの知り合いを呼んで開いた誕生日&快気祝いパーティーは、出席者が次々に祝辞を述べていた。
「殿下~。飲んれますか~?」
「ラーシュ君。もうできあがってるの?」
「酔ってないれすよ~」
「それ、ペトさんがよく言ってた……」
6番目にフィリップに挨拶しようとやって来たのはラーシュ。ラーシュは酔っ払っていて、気軽にフィリップの肩を組んで来たから叩き落とした。酒臭いもん。
「てか、婚約はどうなったの?」
「流れました~。私にも女性を紹介してくださ~い」
「……既婚者でもいい?」
「いいワケないでしょ!?」
ラーシュは絡み酒で面倒くさいので、ボエルを呼んで手刀してもらう。
「できるか!」
「邪魔なの~。騎士たちの仲間に入れてあげてよ~」
ラーシュはファーンクヴィスト公爵家。そんな御方を暴力で気絶させるなんて到底ボエルにはできないので、肩を貸して護衛騎士の輪に入れた。未婚どうし、話が合うはずだ。護衛騎士は困った顔してるけどね。
「殿下、おめでとうございます」
「うん。ペトさんは、今日は酔ってないんだね~」
「はい。殿下の誕生日を汚すワケにはいかないので、一本だけです」
「飲んでるじゃ~ん」
7番目はデキるメイドモードのペトロネラ夫婦。なので飲んでないかと思ったのに、気付けに一本空けたんだって。
「それにしても、殿下を慕う人はこんなにいたのですね」
「ああ~。いつもはバラバラに来てたから、半分ぐらい知らないのか。あとで紹介しようか?」
「いえ。もう挨拶は済んでおります。元が侍女の方ばかりですので、殿下の話で盛り上がりましたよ」
「それはそれでヤだな~」
元メイドとは全員と体の関係があるので、どんな話をしているかは気になるフィリップ。でも、聞けないよね。
「お婆ちゃん、来てくれてありがとうね」
「いえ。こんな老骨を誘っていただき、感謝しておりますよ」
8番目は元メイド長のアガータ。現メイド長のベアトリスが車椅子を押して連れて来てくれたから、フィリップから足を運んで挨拶をしたのだ。
「まさか坊ちゃまがこんなに立派なパーティーを開くなんて、このアガータ、もう思い残すことはありません」
「ちょっと~。こんなパーティーのどこが立派なんだよ~」
「皆、笑顔だからです。こんなに笑顔で溢れるパーティーは見たことがありません。きっと坊ちゃまのお人柄に惹かれたのでしょうね」
「どうだろうね。このあとお兄様たちが来るから、笑顔は消えちゃうかも?」
フィリップがニヤリと笑うと、アガータは全てを察した。
「フフフ。それは見物ですね。坊ちゃまのことですから……」
「シーッ。お婆ちゃんもビックリして死んじゃダメだからね? また来年もパーティーするから長生きしてね~」
アガータから離れたフィリップは主賓席に戻らずに、ダンスホールの中央に立つ。そして楽団の奏でる音に合わせて、女性陣を取っ換え引っ換えして踊り続けるのであった。
フィリップのダンスは上手かったりひっちゃかめっちゃかだったりしたので、パーティーの出席者は笑顔が増える。
ここでフィリップは、ボエル、ペトロネラ、エイラ、ダグマーをひとつのテーブルに集めた。
「ちょ~っと聞きたいことがあるんだけど~……式典とかパーティーとかの雰囲気、どうだった??」
「「「「「……」」」」」
「うんうん。出席しなかった僕が悪う御座いました」
フィリップが誕生日会をこの日にしたのは、この話をまとめて聞くため。しかし4人は、サボったフィリップをジト目で見るから謝罪からだ。
式典などの雰囲気はというと、戦勝ムードが継続中だったから、フレドリクが皇帝になってからの式典よりさらに盛り上がっていたそうだ。
「そっか~……ダグマーも同じ感想?」
「はい……殿下は何をお聞きになりたいのですか?」
「父上がダンマーク辺境伯のことを気にしてたから、なんとなくね~」
「太上皇陛下がそのようなことを……」
ダグマーは太上皇にお世話になったので、フィリップの狙いは横に置いて報告してくれた。
「へ~……上機嫌だったんだ。なんで?」
「ダンマーク辺境伯様は武人ですからね。陛下の戦上手に惚れ惚れしていたと噂されてましたよ」
「あぁ~……あのオッサンも頭の中、筋肉詰まってるもんね」
「言い方……」
これならばとフィリップも安心してたけど、ダグマーに睨まれたのでブルッと震える。でも、背中をバシバシ叩かれた恨みを披露したら、皆もわかってくれた。
それで笑いが起こったので、このまま世間話を楽しくするフィリップであった。
4人だけ優遇すると他の出席者にも悪いのでメンバーを変えて喋っていたら、ついに特別ゲストの登場だ。
「フィリップ。誕生日おめでとう。皆も、フィリップのために集まってくれて感謝する」
フレドリクだ。それで終わらず、ルイーゼ、カイ、ヨーセフ、モンスの帝国トップ5の揃い踏み。いや、フィリップを入れたら、帝国の上位陣がほぼ勢揃いだ。
「あらら。みんな固まっちゃったか~。アハハ。お兄様、お姉様も今日はありがとね~」
「フィリップ。また大事なことを伝えなかったのか?」
「だって~。言ったら来てくれないと思ったんだも~ん」
「そんなことは……」
「あるよ。僕の知り合い、下級貴族ばっかりだよ。ね? お婆ちゃんもそう思うよね~?」
フレドリクに意見できる人間なんて、現在は帝国にフィリップと教育係をしたことのあるアガータだけ。そのアガータが大きく頷いているから、フレドリクも反論できなかった。
「しかし今回のパーティーは多く集まってくれたのだな」
「うん。最初から忙しい年末にやらずに、年始にズラしておけばよかったよ。そしたらもっと父上とお兄様に祝ってもらえたのに」
「それは寂しい思いをさせたな。すまなかった。次回もこの時期にやってくれたら必ず出席するからな」
「うん! 来年はもっとちゃんとしたパーティーにするね~」
フレドリクが参加することで会場は急に静かになったが、フィリップが握手会を開いたら大盛り上がり。皇子ではなく現皇帝の握手だもん。
特に護衛騎士が大興奮。「近衛騎士になりたかったッス!」と、フィリップが止めたような噓をついて握手してた。
カイサとオーセの場合は鼻血ブー。フレドリクに初めて触れたのだから仕方がないけど、フィリップの時はそんなこと一度もなかったから、ちょっと嫉妬してた。
ついでに逆ハーレムメンバーも全員巻き込んだので、カイサとオーセはフラフラだ。
他の人は少し喋る程度でも大満足。顔と名前を覚えてもらえただけでも、貴族にとってはプラスになるからだ。ボエルだけは、妻がフレドリクにキュンキュンしていたのを心配して見てた。
こうしてフィリップの誕生日パーティーは、笑い声のなか太陽が落ちるまで続くのであった……
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