【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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三章 引きこもり皇子、働く

069 フィリップの金銭感覚

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 ダンマーク辺境伯領で行われた一斉査察の演技は、無事、慌てた早馬がハルム王国に向けて走って行ったと報告があったので、フィリップはほくそ笑む。
 ノリノリで一番騒いでいたのはフィリップなのだから、アカデミー賞物だと思ってるっぽい。
 そのことについて自慢したりダメ出しされたりワイワイ楽しくやっていたフィリップだが、最近気になることがあるらしく、夕食の席で口にする。

「最近、食事が質素になってない?」

 その質問に、食堂にいる全員がギクッとして肩を揺らした。辺境伯夫人だけは、ウンウン激しく頷いてる。

「とうとう気付かれましたか……」

 その質問に答えるのはエステル。口が重そうだ。

「とうとうって?」
「ひと月ほど前からこのレベルでしたから、エリクは味がわかないと思っていたのですわ」
「やだな~。気付いていたけど、人様の家だから言わなかっただけだよ~」
「……本当ですの?」
「ホントホント。アハハハ」

 遠巻きに味オンチと言われたのに笑っているので、フィリップは皆にジト目で見られて気恥ずかしくなる。

「えっと……ひょっとして、財政難?」

 なので、核心を突いてごまかす。これはエステルも言いづらいからか、ホーコンが代表して答える。

「救出作戦で少し無理をしすぎたようで……」
「おお~い。だから無理するなって言ったんだよ。てか、それならそうと、早く言ってよね~」
「殿下を不安にさせるのは悪いと思いまして」
「そんなことで不安になるわけないでしょ。ちょっとそこ立って」
「はあ……」

 フィリップは怒るわけでなくホーコンを呼び寄せ、目の前に来たらポケットから茶色いコインを取り出し、親指で弾いた。

「それあげるよ」
「はあ……お気持ち、ありがたくちょうだいいたしま…す……ぬおっ!?」

 コインを片手でキャッチしたホーコンは「銅貨でどうしろと?」と思ったものの、なんとか感謝の言葉を口にしたのも束の間、コインが重たいかのように床まで手を落として両膝を突いた。

「お父様、何を遊んでおりますの? 高々銅貨ですわよね??」

 誰もホーコンの行動が理解ができないのでエステルが聞くと……

「しょ、初代硬貨……」
「え?」
「銅貨なんかではない! これは初代硬貨だ!!」
「「「「「ええぇぇ!?」」」」」

 初代硬貨とは、名前の通り帝国で初めて作られた金貨で、姿絵すら残っていない初代皇帝が彫られている歴史価値がズバ抜けて高い硬貨。
 現存する物は2枚しかなく、その価値は領地が買える程の値が付くと言われ、度々小説や絵本なんかで金持ちの象徴として出て来るので誰でも知っている。
 だが、現物は領主や上位貴族クラスしか見たことのない夢のようなお金なのだ。

「こ、これを、ど、どこで……城を出る時に盗んで来たのですか?」
「親子揃って盗っ人扱いなんてひっどいな~。カールスタード学院のダンジョンで僕が手に入れた物だよ。最下層辺りのモンスターを倒すと、たまに落とすんだ」
「はい??」
「100枚ぐらい持ってるから、好きに使うといいよ」
「「「「「ええぇぇ!?」」」」」

 意味不明な話でも、数を聞けばありえない話だと、また驚きの声。その中でエステルが一番最初に動き出し、フィリップに詰め寄った。

「そ、そんなに持ってるなら、わたくしたちが私財を投げ打たなくてもよかったじゃないですか!?」
「そうだけど……忠誠心を試したみたいな? あと、復興費用にしようとしていたとか? 復興にも、お金って必要じゃない??」
「嘘っぽく聞こえるのはわたくしだけですの?」

 エステルが皆を見るとウンウン頷いているので、フィリップの嘘はモロバレ。

「本当だって~。それに換金の仕方がわからないから、忘れてたってのもあるんだよ~」
「「「「「あぁ~……」」」」」

 フィリップが忘れていたとカミングアウトしたけど、エステルたちはその前の言葉で超ガッカリ。

「そんなお金、お父様に渡してどう使えと言うのですの?」
「あ……無理っぽい??」
「ですな……」

 初代硬貨は、絵に描いた餅。価値はあるものの使えないのでは意味をなさない。

「仕方ない……白金貨、100枚くらいで足りる??」
「「「「「先にそれを出せ~~~!!」」」」」

 なので、フィリップも使いやすいお金を山積みにしたら、総ツッコミを受けるのであったとさ。


 それからどこから出て来たのかの質問になったので「手品。てへ」と、フィリップが無理なごまかし方をしていたら、唯一アイテムボックスを知っているエステルが助けてくれる。

「白金貨はどれぐらいお持ちなのですか?」
「たぶん……1千万枚ぐらい??」
「この大陸だって買えるじゃないですの!?」

 でも、たった1人で大陸全土のお金を所有していると聞いて、エステルも怒鳴っちゃった。そのおかげと言うわけではないが、皆もアイテムボックスのことは忘れている。

「金貨も大量にお持ちなのですよね?」
「金貨は少ないよ。荷物にな……なんでもない」
「いま、何を言いかけたのですの?」
「だって~。ぜったい怒るも~ん」
「怒りませんから、教えてくださいませ」

 全員から「怒らない」と説得され、「ぜったいに? ぜったい? ぜ~ったいに?」と何度も確認したフィリップは、答えを告げる。

「初代金貨と白金貨以外のお金は、荷物になるからダンジョンで全部捨てちゃった。えへ」

 ダンジョン内で手に入れた物は、しばらく放置すればダンジョンに戻る特性を使って廃棄処分したのだから、フィリップがいくらかわいく言っても全員の額に血管が浮かんでいる。

「あっ! もうこんな時間!? 僕、塾に行って来るね~~~!!」

 なのでフィリップは謎の言葉を残して、この日は帰って来なかったのであったとさ。


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☆告知☆
いまさらですけど、一週間前から新しい小説を書いています。
お暇があれば『お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。』も読んでいただけたら幸いです。
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