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第二章 王都編 友達が出来たにゃ~

043 水遊びにゃ~

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 女性陣の水着披露に、わしは思い付くお世辞を言い尽くして、やっとの事で解放された。

 みんな、なんでわしに水着の批評をさせるのかわからん。猫じゃぞ?

 湖に着くとさっちゃん達は、荷物を置いて一斉に水に入って行く。残っているのはわしと兄弟だけ。なので、わしと兄弟は近くにあった小屋に入って日を避ける事にする。


 テーブルと椅子があるから休憩所みたいじゃのう。周りには敵らしい反応も無いし、ここでしばらく休むとするか。兄弟達のネコハウスを用意してと、わしの分は……作るか。
 箱を土魔法で作って、毛皮を何枚かふんわり入れれば完成っと。そうじゃ。馬車用の揺れ軽減ネコハウスを作ろうとしていたのを、いろいろあって忘れていたな。スプリングを作る鉄はまだあったかな?
 う~ん。少ない……これじゃ足りん。盗賊や暗殺犯から没収した剣を使いたいが、ソフィが許してくれないんじゃよな~。わしが倒した奴ぐらい、わしの取り分にしてくれたらいいのに。女王の許可を待てとは、真面目な奴じゃわい。


 わしがネコハウスを作り、スプリングをどうするか悩んでいると、さっちゃんが戻って来て話し掛ける。

「シラタマちゃん、泳がないの?」

 逆に聞こう。湖で猫が泳いでいる姿を見た事があるのかと。いまも猫型じゃよ?

「猫は普通、泳がないにゃ~」
「シラタマちゃんは普通じゃないじゃない?」
「普通にゃ~!」
「どこがよ!」

 いいツッコミ、ありがとうございま~す。自分でも普通じゃないとはわかっていますよ。

「変身して一緒に泳ごう!」
「敵がいつ来るかわからないし、誰かに見られたらまずいにゃ」
「そっか~。じゃあ、そのまま泳ごう!」
「にゃ!?」

 わしはさっちゃんに抱き抱えられ、湖に投げ込まれる。

「にゃ~~~!!」

 わしは宙を舞い、着水すると、勢いよく水しぶきが上がる。

 さっちゃん。扱いが雑じゃ! とりあえず犬かき! いや、猫かきじゃ!


 わしは泳いで岸に戻るが、途中でソフィに捕まった。

「シラタマ様。泳ぎもお上手ですね」
「は、離してくれにゃ」
「ウフフフ」

 なんじゃろう……嫌な予感しかせん。

「ソフィ、こっち~」
「アイノ、いきますよ~」
「にゃ~~~!」

 ソフィ、アイノ、ドロテ、さっちゃんの順に、わしは投げ回される。

 ちょっ、わしは丸いけどビーチボールじゃないぞ! それにみんなの胸が当たって……その、なんじゃ……もう一周ぐらい付き合ってやるか。


 わしは四周付き合ってから逃げ出し、沖に向けて泳ぐ。そして水魔法を使う。

「すごい! 浮いてる」

 よしよし。上手くいった。次はこれじゃ!


 わしは3メートルの高さの波を起こし、岸に向けて動かす。

「「「「きゃ~~~」」」」

 さっちゃん達は波に飲み込まれ、わしは波の上に上手く乗り、岸に辿り着く。岸に上がったわしは、体をプルプルと震わせる。

 わしを投げ回したお礼じゃ。ありがとうございました!


 わしが毛に付いた水を、体を振って落とすと、皆から非難の声が飛んで来る。

「猫ちゃん、ひど~い」
「ぺっぺっ。水、飲んじゃいました」
「水に浮くなんて、どうやったのですか?」
「今のなに? おもしろそう! 私もやらして~」

 仕返しのつもりじゃったが、さっちゃんには逆効果じゃったか。興味津々になっておる。こうなっては止められんか……

 わしは水魔法で皆を水の上に乗せ、波を作って滑らしたり、渦を作ってクルクル回転させたりする。リクエストに答えて噴水のように、水と共に皆を打ち上げたりもしてあげた。
 その時、アイノのブラが取れたらしいが、わしは見ておらん。ホンマホンマ。



「楽しかった~」
「猫ちゃんの魔法、本当にすごいね」
「シラタマ様。楽しかったです」
「でも、お腹すきましたね」

 みんなが楽しそうにするから、遊びに夢中になってお昼も過ぎておったのう。エリザベスもにらんでおるし、急いで用意しなくては。
 ルシウスは目を潤ませておるけど、そんなに腹がへっておるのか? エリザベスに八つ当たりされてないことを祈ろう。
 とりあえず、用意してもらった昼食をテーブルに置いて、みんなに摘んでもらおう。それと、このシチュエーションなら、アレをせんとなぁ。

 わしはパンをひとかじりすると、小屋の外に出て土魔法を使う。

 まず土台を作ってから編み目状の薄い板を作る。その下に次元倉庫から取り出した薪を置いて着火。隣に作業台も作っておくか。
 肉はどれにしようかな? 王女様もいることじゃし、奮発して黒い獣の一番高そうなのを出してやるか。

 わしがバーベキューの準備をしていると、アイノが小屋から出て来て声を掛ける。

「猫ちゃんは食べないで何してるの?」
「ちょうどよかったにゃ。アイノは料理できるかにゃ?」
「私は得意じゃないかな~。あ、ドロテが出来たかも。ドロテ! こっち来て~」
「なんですか?」
「ドロテに料理して欲しいにゃ」
「そんなに上手くないですよ」
「切って串を差して塩を振るだけにゃ」
「それぐらいなら……」
「じゃあ、肉と包丁を出すからお願いするにゃ」


 わしは次元倉庫からブロック状の肉の塊と塩、包丁やまな板を取り出して調理してもらう。串は土魔法で作業台に作って置く。ついでに屋敷の料理人から分けてもらった野菜や、わしの集めた香草も出して自由に使ってもらう。
 ドロテが切り分け、焼き始めると、辺りに香ばしい匂いが漂う。その匂いに釣られて、さっちゃん達が小屋から出て来た。

「いい匂い~」
「シラタマ様は、また変な事をしているのですね」

 変って! みんなの為にしているのに……こんな事を言うなんて、ソフィもだいぶ砕けてきたのかのう。

「猫ちゃんは本当に変な事に、魔法を簡単に使うのね」

 また変って言われた! アイノの胸の成長具合に言われたくないわ! こんな事を思っていると知られたら、さっちゃん達に怒られそうじゃし自重しよう。

「シラタマちゃんが変なのはいつもの事でしょう?」

 さっちゃんまで! そんなにわしは変なのか? 猫で喋っているから十分変じゃけど……わし、泣くぞ?

「そろそろいい具合です。焼けました」

 味方はドロテだけじゃ。と言っても、わしにお漏らしを見られて、弱みを握られておるから滅多な事は言えんのか。

 皆は、ドロテが皿に乗せる肉の刺さった串を手に取ると、さっちゃんから順にかぶりつく。

「おいし~い!」
「ドロテ、やるわね」
「ただ切っただけですよ」
「美味しいですけど、何の肉なのでしょうか?」
「シラタマ様が出した肉なんですけど……」
「シラタマちゃん。何の肉なの?」
「猫ちゃん?」
「シラタマ様……」
「………」

 なにこの疑惑の目? さっきまで美味しそうに食べておったじゃろう? さっきから変、変って言ってたから、変な肉を食べさせられていると思い込んでおるのか? たしか、黒い鹿の肉だったはず。変じゃない! ……はず?

「変な物じゃないにゃ~。黒い鹿の肉にゃ~」
「黒い鹿って……」
「高級食材を、私が調理した……」
「美味しいわけです」
「私は食べた事あるけど、それより美味しいよ?」
「まさか……ダブル?」
「角付きとか?」
「たしか、尻尾が二本あって角が四本? 大きかったにゃ」

 またみんなが驚いて、食べるのが止まっておる。美味しいのに、何故じゃ?

「超高級肉じゃないですか!」
「高級食材を、私なんかが……あわわわ」
「そんな高級食材、市場でも滅多に出回らないよ!」

 なんじゃろう。去年出会った、ハンターのエレナの反応を思い出してしまうのう。あの時は、角一本の黒い熊じゃったか。しかし、王女様のさっちゃんまで驚いておるのが意外じゃ。

「さっちゃんは、こういうの食べないのかにゃ?」
「ここまでの品は、お母様の誕生祭でも滅多に出ないよ」

 マジですか? それなら、わしもうまいのかのう……。あ、いま寒気がした。考えるのはよそう。

「いっぱいあるし、気にするにゃ」
「シラタマ様がそう言うなら……」
「そうね。有り難く頂きましょう!」


 いきなりの高級食材の登場で、皆の手は止まっていたが、わしの言葉でまた食べ始める。皆で美味しい肉に舌鼓を打ちながらワイワイとバーベキューを楽しみ、食べ終わると、もうひと泳ぎすると言って湖に飛び込む。
 わしは片付けが終わると湖の側まで行き、お座りをしてさっちゃん達の楽しそうな姿を眺める。
 ボーっと眺めていたら、ソフィが戻って来て、わしの横に座る。

「シラタマ様。泳がないのですか?」
「普通の猫は泳がないにゃ」
「そう言えばそうですよね。シラタマ様が猫だと、つい忘れてしまいますね」

 どう見ても猫なんじゃけど……ちょっと丸っこくて、ちょっと尻尾が多いけど。

「それより、湖の水が少ないように見えるにゃ。こんなものかにゃ?」
「去年、今年と、雨が少なかったせいで、例年に比べてかなり少ないですね」
「ドロテから去年、農家は不作だったと聞いたにゃ。今年はどうにゃ?」
「この分だと、今年も不作になりそうです」

 今年もか……また盗賊が増えるのじゃろうか? まぁわしの心配する事じゃないな。心配するなら、目の前の事じゃろう。


 わしはソフィに、皆を集めるように指示を出す。ソフィが離れ、皆が集まるのを待っていると、呼んでいない兄弟達がやって来た。

「さっきから人が見てるけど、どうする?」
「俺が行って来ようか?」
「気付いていたか。少し様子を見たいから、手出しは無用じゃ」
「そう。じゃあ任せるわ」
「俺に任せてくれたらいいのに……」

 ルシウスは前の戦闘で、昔の自分を少し思い出したのかのう? いい傾向じゃ。ルシウスには、リーダーとしてしっかりして欲しいからな。

「シラタマちゃん。さっきのブァーってヤツやって~」

 兄弟達と話をしていたら、さっちゃん達が集まって来た。

「お客が一人来てるから無理にゃ」
「じゃあ、パパッとヤッちゃって遊ぼう!」

 さっちゃん……わしに殺せと言っておるのか? どんだけ遊びたいんじゃ。

「ただののぞきかもしれないにゃ」
「では、私がヤッて来ましょう」

 ソフィさんの目が怖いです。ヤッちゃダメじゃ! みんなもうなずいてないで止めるんじゃ!


 わしは皆を宥め、説得して帰る事を了承させる。そして、ひと芝居打ってもらう。

「アー、ツカレター」
「ツカレマシタネー」
「アシタハ、ヤスンデ、マタ、アサッテキマショウ」
「ソウシマショウ」

 みんな棒読み! そこまで緊張せんでもよかろうに……
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