攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

文字の大きさ
40 / 187
05 戦準備

039

しおりを挟む
 パリングラ温泉に着いた魔王一行は、宿までの道のりを真っ直ぐ進む。だが、初めて見る魔族の町に、コリンナ達はキョロキョロと歩き、魔王に質問する姿があった。

「ねえねえ?」
「どうしたのですか?」
「魔族って、どこにいるの?」
「ここにいる人、全員魔族ですよ」
「え!? みんな人族に見えるんだけど……じゃあ、アレも?」

 コリンナは、髭面の背の低い集団を指差す。

「あの人達は、ドアーフさんです。休暇で出て来たみたいですね」
「ドアーフ!? ドアーフの方が、魔族っぽいのね……」
「そうですか?」
「そうよ。どの魔族も、人族とさほど変わらないじゃない」
「確かにそうですね……あ、ここです。お腹すいてますよね? 食事をいっぱい用意させていただきますね」

 コリンナと喋りながら歩いていた魔王だが、旅館に到着すると質問を打ち切る。食べ物の話をしたので、コリンナ達は魔族の姿はどうでもよくなったようだ。

 魔王は旅館に入ると手の甲に鱗のある女将に、部屋と料理を手配する。コリンナ達には四人部屋、魔王達も四人部屋を取って、姫騎士の監視をする。
 女将は部屋の案内をすると、次に宴会場へ案内し、手早く出せる料理から順に、魔王達の前に食べ物が並ぶ。

「明日から忙しくなるので、今日だけはゆっくりしましょう。さあ、召し上がれ~」

 魔王の挨拶で宴会が始まる。コリンナと三少女は競うように食べ始め、魔王がいっぱいあるからと落ち着かせる。

「すっごく美味しいけど、野菜ばっかりなのね」
「お兄ちゃんと同じ事を言ってますね。そろそろメインのステーキが運ばれて来ますから、満足していただけますよ」
「ステーキ!? それは楽しみ~」

 と、言うやり取りをして、ステーキをひとかじりするコリンナ。美味しいのか、おかわりをしてから魔王に尋ねる。

「これも、うまいわね!」
「気に入ってくれてよかったです」
「何の肉なんの?」
「肉ではなく、コンニャクです」
「……コンニャク?」
「コンニャク芋を使った加工食品です」
「野菜じゃない!!」
「そうですよ?」

 コリンナはツッコムが、魔王は首を傾げて返す。その時、魔王の胸が揺れ、それが目に入ったコリンナは、巨乳の秘訣を思い出したらしく、またおかわりをしていた。
 コリンナ達はおなかいっぱいに食べられて騒いでいたが、姫騎士は料理に手を伸ばさない。魔王と勇者は心配する目を向けるが、そっとして、宴会の幕を閉じる。



 部屋に戻ると備え付けの岩風呂。勇者の待ちに待った入浴の時間だが、魔王が姫騎士と裸の付き合いをすると言って、勇者とテレージアは追い出される。
 しょんぼりとした勇者は、コリンナの部屋にお邪魔する事にしたようだ。

「アニキ! ど、どうしたの?」
「暇だから遊びに来たんだ」
「元気なさそうだけど……」

 コリンナが勇者を心配していると、テレージアはぐふぐふとコリンナに耳打ちする。

「魔王に追い出されたのよ。慰めてあげたら~? ぐふふ」
「慰める……どうやるの!?」
「一緒にお風呂に入って、背中を流してあげなよ~」
「お風呂? なによそれ?」

 どうやらコリンナは、お風呂に入った事が無いようだ。孤児であったコリンナや三少女は、その日生き抜く事でやっとだったため、そのような文化に接していなかったのだろう。
 テレージアの作戦は早くも失敗に終わるが、違うアプローチを思い付いたようで、勇者に声を掛ける。

「コリンナがお風呂に入った事がないんだって~。一緒に入ってあげたら~?」
「そうなのか? じゃあ、みんなで一緒に入るか?」
「え……女の子よ? いいの??」
「使い方がわからないと、宿の者にも迷惑が掛かるだろ」
「ま、まぁそうだけど……」

 テレージアは、勇者があたふたする姿を見ようとしたが、これも失敗。勇者はコリンナと三少女を連れてお風呂に入る。
 次のテレージアの作戦は、コリンナがあたふたする顔を見てやろうと一緒にお風呂について行くが、また失敗。自分の体を見られても、勇者のアソコを見てもまったく反応の無い二人に飽きて、湯船に浮かんだ桶で温まる。

「「「うわ~~~」」」
「何これ?」
「水が温かい!」
「水浴びしても、寒くないんだ~」
「あ! まだ入るなよ。こっちで体を洗うんだ」
「「「え~~~!」」」
「ほら、あんた達。アニキに迷惑を掛けるな」
「「「は~い」」」

 勇者の注意には反抗する三少女だったが、コリンナの言葉には素直に従い、ひのきの椅子に座る。だが、全員洗い方も知らないので、勇者がコリンナの髪と体を洗って見本を見せる。
 それを見た三少女はゴシゴシとマネして洗い合う。だが、洗い残しがありそうなので、勇者が仕上げ。洗い終わっているコリンナを湯船に送り込み、三少女を洗ってあげる。



「ちょっと~? 顔が赤いんじゃな~い?」

 ブクブクと顔まで湯船につけたコリンナを、待ってましたとテレージアが茶化す。

「胸を洗われた……これは普通なの?」
「ぐふふ。愛し合う二人なら普通かな~」
「じゃあ、オレ達は愛し合っているの!?」
「そうかもね~。ぐふふふ」
「あいつらとも愛し合っているのか……」

 コリンナは三少女に目を移すと、勇者に洗われてキャハハハと笑う姿がある。

「あ、アレは違うわよ。子供に対する接し方よ」
「子供に……じゃあ、オレも子供だと見られているんだ……」

 またブクブクと顔を湯につけて落ち込むコリンナ。テレージアは次なる作戦を思い付いたのか、ニヤケながらコリンナをそそのかす。

「それなら、コリンナも洗ってあげなよ~。体に泡を付けて洗うと、きっと落ちるわよ~。ぐふふふふ」
「わ、わかった!!」

 コリンナは、三少女を湯船に送り出す勇者の後ろに立って声を掛ける。

「オ、オレも洗う!」
「ん? ああ。背中を流してくれるか?」
「う、うん!」

 コリンナは体に泡を付け、勇者を洗うが、どうやらテレージアのお眼鏡に叶わなかったみたいだ。しかし、テレージアが悪い。
 テレージアが主語を付けずに説明したので、コリンナは勇者の背中に泡を付けて汚れを落としたのだ。ぐふぐふ見ていたテレージアは、興味を無くし、三少女と次なる作戦を話し合うのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 時は少し戻り、勇者の退室した魔王の部屋は、沈黙に包まれる。そんな空気を魔王は打開しようと、姫騎士にお風呂を進めるが反応が無い。なので手を引き、強引に風呂場へ連れ込んだ。
 心ここに在らずの姫騎士は服を脱がされても反応は無く、桧の椅子に座らされ、綺麗に洗われて湯船に入る。
 湯船に入ると溺れないように魔王が支え、姫騎士からピッタリくっついて離れない。

「あちらは楽しそうですね」

 隣のお風呂からは、三少女が勇者に洗われる笑い声が聞こえ、魔王はポツリと言葉を漏らす。

「でも、お兄ちゃんが女の子と一緒に入るのは、どうかと思いますね。私の時なんて目も開けられなかったのに、どうやって入っているのでしょう?」

 魔王は沈黙が耐えられないのか、一人で喋り続ける。

「それにおんぶも出来なかったんですよ! コリンナさんはお姫様抱っこしていたし、姫騎士さんだっておんぶしてたじゃないですか。どうして私だけ出来ないんですか!!」

 沈黙が耐えられないと言うより、勇者に対しての愚痴を聞いて欲しかったようだ。

「あ! 別にしてもらいたいと言う訳ではないんですよ? ちょっと、女性として魅力が無いのかと思っただけです」

 魔王が言い訳をしたその時、姫騎士がボソッと声を出す。

「……立派……がだ……」
「はい? 何か言いました?」
「こんな立派な胸を付けておいて、どこがだ~~~!!」


 姫騎士、激オコである。ずっと腕が胸に挟まれていたので、コンプレックスを刺激されたようだ。
 その後、魔王は八つ当たりを受けて、胸を揉まれまくるのであった。


*************************************
もう限界!
複数更新はここまでで~す。
次回から、一日一話更新となります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...