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06 反撃
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しおりを挟む『皆さん。お疲れ様です! 我々魔族の完全勝利で~~~す!!』
「「「「「わああああ」」」」」
掃討戦も滞り無く終わり、向かって来る人族が居なくなると、魔王は勝利宣言を告げる。すると魔族達は喜びの声をあげ、隣の者と抱き合う。
『喜んでいるところ申し訳ありませんが、もうひと働きしてください。泥で動けない人族の方の救出、壁の外で怪我をした人族の方の手当て。四天王の皆さんの指示を聞いて、手分けして取り掛かってください』
勝利で浮かれる魔族に対して、敵であった人族の手当てを優先させる魔王。攻められ、怪我をした者が居る魔族だが、元より優しい性格なので素直に従い、親身になって人族の手当てにあたる。
各魔族のメイジは魔王主導で泥を固める作業にあたり、足場を固めてから人族を救出する。泥から救出された人族は、一人あたり魔族が四人で対応。両脇から抱える二人と、ピッチフォークを構えてもしもの反抗に備える。
壁の外で倒れている人族には、勇者と姫騎士が護衛にあたり、ミヒェルとレオンの指示の元、命の危険な者にはテレージアたち妖精が直接治療し、そうでない者は回復魔法で応急手当て。その後、担架に乗せて運ばれる。
連行される人族は、怪我の無い者は百人一組で土の檻に入れられ、怪我を追っている者は応急手当をされて、違う檻に入れられる。
その時、魔族が人族に一声掛けていたが、蔑む言葉ではなく、「汚れたまま入れてごめんなさい」とは、どこまでも優しい種族だ。
そうして日が完全に落ちる前に作業が終わり、約三千人の人族が檻に入る事となった。
魔族は宴会といく気分では無いのか、しんみりと夕食をとり、見張りを残して、早々に就寝して行く。
その様子を見ていたコリンナが、魔王に質問する。
「こう言う場合って、浮かれて宴会とかするんじゃないの?」
「そうなのですか?」
魔王は聞かれてもわからないのか、姫騎士と勇者に振る。
「まぁ戦で勝利を掴んだら、酒を振る舞ったりするから、自然と宴会になるかな?」
「俺も勝利した夜は、遠巻きに妹の酒に付き合っていたな~」
「勇者のそれは、一人で飲んでいるのと変わらないから!」
テレージアのツッコミは的確で、皆は苦笑いで応え、勇者はしゅんとする。そんな中、魔王が口を開く。
「幸い、魔族の皆さんは傷を負っただけですが、人族の方々には死者が出てしまいました。とてもじゃないですけど、喜べません」
魔王の発言に、四天王は頷く。これが魔族の総意なのだろう。しんみりした空気の中、姫騎士がポツリと呟く。
「そうか……だが、それが戦争だ」
「戦争……人族の方は、どうしてこのようなひどい事が平気で出来るのですか!?」
姫騎士の呟きに、魔王が声を荒げて質問する。
「欲しいのだろうな……」
「何が欲しいのですか!」
「土地、食糧、奴隷……全てだ」
「欲しかったら、奪っていいのですか!」
「ただ奪うのではない。大義名分を持って奪うのだ。今回ならば、魔族が侵攻して来たから、守る為に奪うのだ」
「そんな事はしていません!」
「わかっている。わかっているとも。ただ、欲している者は、大義名分と言う正義を持って奪うのだ」
「それの何処が正義なのですか……姫騎士さんも正義だと思うのですか?」
「私は……間違いだと思う。だが、人族は千年間、そうやって生きて来たのだ。奪い、奪われ、憎しみ合い、平定した。だが、平和が来ると、外に求めざるを得なかったのだろう」
「ひどい……」
魔王は姫騎士の話を聞くと、大粒の涙を零す。
「すまない……人族を代表して、謝罪する」
姫騎士は立ち上がると、深々と頭を下げる。
「ぐずっ……違うんです」
「違う?」
「千年間も憎しみ合って暮らしていた事を想像すると、自然と涙が……。人族の皆様は、大変な苦労をして来たのですね。ぐずっ」
「……そうだ」
「姫騎士さんは、その様な歴史をどう思うのですか?」
「ひどいと思うが、積み重なって私が生まれた。要は、その歴史を繰り返さないようにするのが課題だろう」
「繰り返しているのですが……」
「私一人では限界がある。せめて男に生まれていれば、玉座に座って改革を行えたんだがな」
姫騎士が諦めた様に笑うと、勇者が口を挟む。
「じゃあ、姫騎士が王様になったらいいんじゃね?」
「我が国は、男が王を継ぐのが決まっているのだから無理だ」
「別に男だ女だとか、決め付けなくてもいいだろ? サシャだって女なのに、立派に魔王をやっているし、何より国民が望んでいるじゃないか」
「国民が?」
「俺達が出会った町の酒場のオヤジは、姫騎士に王様になって欲しそうだったぞ」
「確かに人気はあるが……」
勇者と姫騎士の話を聞いていた魔王は、何やら閃いたのか、突如、大声を張りあげる。
「それ、いいですね! 姫騎士さんが王様になれば、戦争が無くなります!!」
「いや、我が国の法律は男系嫡男であってな……」
「そんなの関係無いです! 国民に愛される人が成るべきです!」
「愛されていても、私には力が無い……」
「勇者様がいるじゃないですか! 微力ながら、私も協力させていただきます!」
「いや……」
姫騎士は皆の期待の籠る目を見て困る。
「仮に私が立ち上がるとして、これは人族の問題だ。優しい魔族に、これ以上血を流させるわけにはいかない」
「もう流していますよ。それに、姫騎士さんの国に変わっていただかないと、もっと多くの血が流れてしまいます」
「魔王殿……」
「ですから、姫騎士さんが王様になってください。お願いします!」
魔王は姫騎士の手を握り、決意の目で見つめる。しばらく見つめ合う二人。その目に負けた姫騎士は口を開く。
「フッ。女王ならば、なってもかまわない。こう見えて、私も女だからな」
「あ! うふふふ。そうでしたね」
「「「「「あはははは」」」」」
姫騎士渾身のギャグに皆は笑う。いや、人族と魔族の明るい未来が見えて笑い出したのであろう。
その笑いは長く続き、姫騎士は、自分は男に見られていたのかと悩んだらしい。
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