攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

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06 反撃

059

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 魔族と人族の戦いが終わった翌日……

 姫騎士は捕らえられた人族の説得に走る。そのかたわらでは、魔族が水魔法で人族を洗い、美味しい野菜を振るまい、さらにその傍らでは、野菜の成分などを説明している魔族もいた。

 姫騎士の説得に一番始めになびいたのは、姫騎士の私兵。ついにこの時が来たのだと、喜びの声をあげる。
 そこからは下級兵が雪崩れ込むように姫騎士の味方に付く。残念ながら長兄、次兄の側に付く兵士も少なからずいるので、全ての兵とはいかないが、約二千五百人の人族が姫騎士の兵隊となった。



 姫騎士はその兵隊の前に立ち、演説を行う。

「先ほど説明した通り、私はクーデターを起こす。皆には、その矛となってもらいたい。少ない兵で心配だと思うだろうが、私には強力な味方がいる」

 姫騎士は両隣に立たせた魔王と勇者の顔を見てから、演説を続ける。

「こちらの勇者殿の力の一旦を見ただろ? とてもじゃないが、人間とは思えない……。こちらの魔王殿の配下の優しさを見ただろ? とてもじゃないが、魔族とは思えない……」

 突然ディスられる勇者と魔王は、頬を掻いて苦笑いだ。そんな二人に気付かず姫騎士は演説を続ける。

「その二人の全面協力を得られるから、クーデターを成功させられる。いや、必ず成功させる! 私が人族に平和をもたらせてやる!!」

 姫騎士の決意の決起に、人族は温かい声や拍手を送り、決起集会は解散となる。昼食を食べた人族は、ひとまず檻での生活を余儀なくされるが、今のところ文句はないようだ。



 昼食を終えた魔王達は、会議と明日からの準備に取り掛かる。

「次は町の奪還ですね。姫騎士さん。何かいい策はありませんか?」
「一般的な作戦なら、功城戦だろうな。町の人員の三倍の兵で囲んで落とすのだ」
「三倍ですか……戦闘の苦手な魔族でも、当てはまるのですか?」
「問題はそこだが、人族の兵も手に入れたのだから、なんとかなるだろう」
「そうですか。では、あとは敵の残存兵力ですね」
「逃げた兵がおよそ二千。多くて三千ってところだろう」
「一万の魔族兵を動かせば三倍。人族兵と合わせて四倍になりますね。これぐらい居ればいいでしょうか?」
「そうだな。応援の可能性はあるが、ここからミニンギーの町まではおよそ四日。キャサリの町からもおよそ四日。急いで出れば、応援が来る前に襲撃できる」

 姫騎士から話を聞いた魔王は立ち上がる。

「皆さん、聞きましたね? ただちに準備を開始し、明日の朝に出発しましょう!」
「「「はっ!」」」

 四天王の三人は魔王の指示に応えると、急いで兵をかき集める。ちなみにフリーデはお昼寝してしまったので使えない。普段から寝てばかりなので、数には入れていないから問題ないのかもしれない。
 コリンナは、このままでは仕事が無くなると思ったのか、ミニンギーの町の詳しい立地を魔王から聞いていた。

 姫騎士は人族兵の檻に出向いて戦の準備。汚れを落とした鎧を皆に返却するが、武器はまだ渡さない。魔王は返すつもりだったようだが、姫騎士が止めた。
 どうやら兄達の兵士がまざっていると思って、ここで暴れられると人族の印象が悪くなる懸念を持っているようだ。なので、武器についてはありのまま伝え、魔王が信用していないと思わせないように言い聞かせていた。

 移動する魔族は元々テント生活を送っていたので、順調に移動準備が整い、次の戦闘の為に体を休める。
 残る兵士は戦の後始末。泥沼として使った土地を元に戻し、壁を補強する。出番の無かった罠は、念のため残しておくようだ。一万の魔族が残るが、急ぐ必要は無いので、休みながらゆっくりやるようにと指示が出ていた。

 勇者は相変わらず暇なのか、魔王の後を追い、ついて歩くが、邪険にされてしゅんとする。ストーキングするから悪い。


「やっと見付けた」

 しゅんとして項垂れている勇者を見掛けた姫騎士が駆け寄って来た。

「な、なんだ? また何か取るのか??」

 勇者は姫騎士のカツアゲに身を構える。

「取ると言えば、取るのだが……」
「やっぱり……」
「今回は別件だ。ベルント将軍の剣を返して欲しくてな」
「あ~……魔族の誰かが使えないか、お土産に没収したんだった。そのベルントも味方になったのか?」
「いや。将軍は父に心酔しているから、首を縦に振らなかった。しかし魔族に渡すのか……人族でも使える者が少ない剣だが、扱える者がいるのか?」
「大柄のレオンやミヒェルなら持つぐらい出来るだろうが、どうだろうな。無理だったらドアーフ行きだ」
「いまは武器が必要だから、その二人が使えないなら、人族で持たせよう」
「わかった。二人に聞いて来るよ」


 勇者は魔王に、レオンとミヒェルが居そうな場所を聞いて移動するが、姫騎士にあとをつけられる。勇者は気付いていたが、向かう場所が一緒なのだろうと気にしていない。
 その後、レオンを発見したので声を掛け、アイテムボックスから大剣を取り出す。

「おお! やはり大きな剣だな。貸してくれ!!」

 レオンの為に出したのに、真っ先に食い付いたのは姫騎士だった。どうやら剣に触れたくて、ついて来たようだ。
 勇者は剣マニアの姫騎士の目に負けて、手渡す事にする。

「うっ……重たいな。これでは私が使う事が出来ない……」
「姫騎士には刀があるだろう」
「そうだが、一度振ってみたかったんだ。将軍には貸してくれと言い出しづらくてな~。勇者殿は軽々持てるのだから、使ってみてはどうだ?」
「俺はいいよ。レオン。持ってみろ」

 姫騎士の勧めを断って、勇者はレオンに大剣を手渡す。

「お! 持てそうだな」
「まぁ俺は、力はあるからな」
「振ってみてくれ」

 勇者のリクエストに応え、レオンは大剣をブンブン振るう。だが、へっぴり腰だったので姫騎士がレクチャーし、なんとか形にはなった。

「うん。これなら、敵兵も真っ二つだな」
「真っ二つ……」

 姫騎士の褒め言葉に、レオンはごくりと唾を呑む。この後続く言葉は、容易に想像できる。

「やっぱり俺には無理だ~~~!」

 うん。思った通りの答え。優しいレオンは人を真っ二つにする姿を想像してしまい、プルプルと震える事となった。

 その後、恐怖で震えるレオンを説得する二人の姿があったとさ。
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