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06 反撃

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 人族の戦いに勝利した二日後、十分に休養をとった魔族は進軍する。ミニンギーの町までは徒歩四日の距離があるので、一万二千人の魔族軍はゆっくりと進む。
 魔王たち主要メンバーは巨大ホルスタイン、アルマに引かれた馬車に乗り、偵察を兼ねて先行して進む。あまり離れ過ぎるといけないので、ほどほどの距離で止まり、軍が追い付くと休憩。
 そして、また先行して進んでは追い付くと休憩。それ繰り返し、軍との歩調と合わせる。

 夜になると火を囲んで食事をとり、魔族のメイジの作り出したお湯で体を拭き、魔族と人族の交流の場となる。
 姫騎士はその交流に一抹いちまつの不安があったようだが、人族は魔族の優しさに触れたせいか、大きな問題は起きなかった。
 ただ、友を殺された人族もいるので、一部の者は魔族の輪に加わる事を避けているようだ。

 予想していた人族軍の強襲も無く、魔族の進軍は順調で、予定通り四日後、ミニンギーの町を視界に収める。
 そこで魔王は、魔族軍に陣を張るようにと指示を出し、戦闘の打ち合わせ会議を行う。

「さて、今回は姫騎士さんに作戦を決めてもらいましょうか」
「私が!?」

 突然振られた姫騎士は焦り出す。

「え? 姫騎士さんは慣れているのではないですか?」
「私は作戦を聞いて決定するだけだったから、一から作戦を立てるのはちょっと……」
「でしたら、姫騎士さんの私兵の方にも参謀として入ってもらいましょう」

 と言う訳で、姫騎士私兵、参謀の女性、ベティーナが会議に加わる。その作戦では、長い梯子はしごで壁を越えたり、太い木を斬り倒して車輪を付け、門を破る作戦が出て来たが、コリンナが呟く。

「アニキが、適当に壁に穴を開けたらどう? 魔王さん達なら、壁の修復もすぐに出来るでしょ?」

 コリンナ案、即決定。ベティーナは勇者の出鱈目でたらめさを理解していなかったので、仕方がない。あとは、町にどう近付くだけなのだが、ベティーナの案に、コリンナの案をくっつけると無事解決。明日に備えて、休息をとるのであった。




 そして朝。魔王が魔族軍を鼓舞する。

『おはようございま~す。今日、ようやくひとつの町を取り返す事が出来ます。ミニンギーの町に住んでいた人は、早く取り返したいと思っているとでしょうが、焦りは禁物です。命を大事に、怪我のないよう戦いましょ~~~う!』

 う~ん……暢気のんき? 戦いに行く者を送り込むような挨拶ではなく、農業の朝の挨拶のようだが、美人の魔王に、にっこり言われた魔族は気合いが入ったようだ。
 人族は……苦笑いだが……

「では、お兄ちゃん。人族軍に降伏勧告して来てください」
「おう!」

 魔王の指示に、勇者は二つ返事で応え、南門に向けて走り出す。姫騎士には馬を勧められたが、弓で射られるとかわいそうだと言う理由で断っていた。
 勇者が南門に着く頃には外壁に人族兵が並び、上から弓を構える。

『よう! 降伏しないと魔王が攻め込むって言っているけど、どうする?』

 勇者は大声で叫ぶが、軽い。そのせいで、笑われてしまっている。もちろん、降伏はしないと断れてしまった。
 なので勇者は振り返り、手を頭の上でクロスして大声で叫ぶ。

『ダメだって~~~!』

 声は届かなかったが、目のいいハーピーのフリーデには勇者の仕草が見えたようなので、降伏勧告の決裂は魔王に伝わったようだ。
 降伏の意思が確認出来なかった魔王は、軍に前進の指示を出す。ミニンギーの中に居る人族兵は、魔族の動きを確認すると、門の前に残っていた勇者に、一斉に弓を射る。

 しかし頑丈な勇者にその弓矢は効かない。服に穴が開く程度。勇者は弓矢の雨の中ゆっくり進み、門の脇に到着すると、そのまま歩を進める。
 すると壁はゆっくりと凹み、勇者の体が易々と通れるだけの大きな穴が開く。門も無い、壁から現れた勇者に焦った人族兵は、勇者を囲みに走るが攻撃しても武器を壊すだけ。結局は、しがみついて勇者の歩みを止める方法しか思い付かない。
 それでも勇者は人族を引きずって歩き、門の近くに開けた穴の反対側に行くと、ここもゆっくり穴を開ける。巻き込まれた人族は痛い目に合っていたが、勇者は小さく謝るだけだ。

 さらに二つ穴を開ければ、勇者の第一段の仕事が簡単に終わる。第二段は西側、東側の壁に穴を開けること。
 魔族軍が前進する中、勇者は穴から町に入ると、西に向かって走り出すのであった。
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