攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

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06 反撃

063

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 町長の家に入った魔王一行は、勇者の指差す黒い物体を見た姫騎士が驚いた声をあげたその時、部屋の中に男の冷たい声が響く。

「よく来たな……野蛮な魔族ども」
「誰だ!?」

 勇者も危険を感じているのか、声を大にして声の主を探す。だが、人影は無く、声の方向にはスピーカーのような物があるだけ。その物の正体に気付いたのは魔王。

「通信マジックアイテム……」
「そうだ。野蛮な魔族でも、このような高度なマジックアイテムを作れるのだと、驚かされた」
「あなたは誰ですか!」

 魔王は何度も野蛮と言われ、ムッとしながら声の主に食い掛かる。

「私はお前達が探しているであろう、最高指揮官のラインホルトだ。残念ながら、もうその町には居ないがな」
「じゃあ、なんで連絡なんてして来たんだ?」

 長兄が魔王の質問に答えると、今度は勇者が質問する。

「その部屋に入るのを待っていたのだ」
「部屋? 暇な奴だな。そうまでして、俺達と話をしたかったのか?」
「ああ。その部屋に入ったと言う事は、町は魔族に占拠されたと言う事だろう?」
「……たぶんな」
「まさか、もしもの為の保険を使う事になるとはな。クックックッ」
「兄様! 何をなさるつもりなのですか!!」

 長兄の話を黙って聞いていた姫騎士は、嫌な笑い方を聞いて声を荒げる。

「その声は……クリスティアーネか?」
「そうです! こんな爆発アイテムなんて持ち出して、何をなさるつもりですか!! 町には人族の兵が残っているのですよ!」
「クックックッ……お前がそこに居るのは、手間が省けて好都合だ」

 長兄の言い分に、姫騎士は何かを感じて険しい顔になる。

「……どう言う意味ですか?」
「父上と私の計画では、お前は魔族との戦いで死ぬ事となっていたのだ」
「なっ……」
「魔族の進行に怒り、お前が軍を引き連れて進軍。千人の兵では魔族との戦いですぐに死に、国民が怒りでひとつにまとまる計画だったのだが……それがどうだ? 死なないどころか、町をみっつも落とし、ますます英雄に拍車が掛かった」
「……英雄の私が邪魔だったと?」
「いや。国民の火付け役には持って来いの優秀な駒だ」
「ふ……ふざけないでください!」

 姫騎士が怒鳴り声をあげると、勇者がのほほんと割り込む。

「つまり、魔族の町をみっつも落とせる姫騎士に、それより多くの兵を使って落とせなかった長兄は嫉妬してるってことか?」
「フッ。何を馬鹿な事を……」
「違うのか? このまま国に帰れば、国民はそう評価するだろ? 無能な長兄は、兵を失って逃げ帰りました~ってな」
「ああ。それも問題ない。魔族は非道な兵器を持ち出して来るのだからな」
「兵器?」

 勇者は自然と黒い物体を見る。

「そこにある物だ。その兵器は爆発マジックアイテムの集合体だ。そのひとつで町をふたつは消し飛ばせる威力なだけに、我が国でも使用を禁止した兵器なのだよ」
「ふ~ん。こんな物、持ち運べばいいだけだ」
「そんな事もあろうかと、重力魔法の魔法陣も刻んである。1トンもあれば、動かす事も難しいだろう」
「兄様! おやめください!!」
「やめろだと? もう起動はしているのだから、止める事も出来ないな。クックックッ」

 姫騎士の悲痛な叫びにも、冷酷に笑う長兄。その笑い声に、姫騎士は全てを諦めたのか、へたりこんでしまった。

「これだけ話してやったのも、死に行く者への、せめてもの慈悲だ」
「ただの姑息な時間稼ぎだろ?」
「フッ。なんとでも言え。死は避けられないのだからな。クックックッ」

 姫騎士を宥めていた魔王は、長兄の笑いに嫌気がさしたのか、怒鳴り声をあげる。

「笑っていられるのも今のうちです! 姫騎士さんは必ず生き残って、人族の女王様になりますからね!!」
「クックックッ。面白い冗談を言う女だな。名をなんと言う?」
「第三十三代魔王、シュテファニエです!」
「アーハッハッハッ!」

 長兄は、突然大声で笑い出したので、魔王はさらに機嫌が悪くなる。

「何がおかしいのです!!」
「まさか妹だけでなく、魔王まで付いて来るとは嬉しくてな。その名前、しかと覚えた。歴史に、我が名と供に刻まれるだろう。私が葬ったとな」
「あなたなんかに殺されません!」
「強がっていても、もう数分もすれば爆発する。話はここまでだ。さらばだ!」

 長兄のその言葉を最後に、通信マジックアイテムから音は消えた。

啖呵たんかを切るサシャも、かわいかったな~」
「もう! お兄ちゃん。時間が無いんですよ! 早くなんとかしてください!!」
「え? サシャが魔法でなんとかするんじゃないのか?」
「え? お兄ちゃんが余裕で話しているから、何か策があるのかと……ど、ど、ど、ど、どうするのですか!?」

 魔王、勘違い。さっきまでの威勢がどこかに行って、急に焦り出す。

「焦るサシャもかわいいな~」
「だから、そんな事を言っている場合じゃありません!」
「あ、ああ。しかし、どうしたものか……」
「収納魔法! お兄ちゃんの収納魔法に入れられませんか?」
「その手があったか! アイテムボックス……ダメだ」

 勇者は魔王に言われた通り、アイテムボックスに爆発物を入れようとするが、弾かれてしまった。

「それじゃあ……」
「まぁなんとかなるだろう。……姫騎士! いつまでそうしているんだ!!」

 勇者は突然、項垂れている姫騎士に怒声を浴びせる。すると、姫騎士はゆっくり顔をあげて勇者を見る。

「勇者殿……」
「俺がなんとかするから、サシャを連れて逃げろ!」
「逃げる? この町の倍はある爆風から逃げられるわけがないだろう! 1トンもある物を運べるわけがないだろう!」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
「「へっ?」」

 勇者が爆発物をひょいっと持ち上げると、魔王と姫騎士はとぼけた声を出す。

「な? なんとかなりそうだろ?」

 勇者が質問すると、二人はコクコクと頷いた。

「サシャ。町の破損は、少しは許してくれよ」
「は、はい……」
「姫騎士はサシャを引いて南に走れ! 行け!!」
「は、はい!」

 勇者の勢いに押された二人は走り出し、勇者も北に、壁も家も障害物も無視して真っ直ぐ走る。
 しかし、残り時間が少なかったせいか、爆発物から強烈な光が放たれ、勇者も焦る。

「くっ……点滅が……アソコ!」

 焦った勇者は進路を変えて井戸に飛び込んだ。

 その少し後、爆弾の破裂する轟音と、衝撃波が町を襲うのであった。
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