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13 死の山の調査
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しおりを挟む「帝国兵……」
死の山の調査を始めたサシャとヨハンネスは、目の前にある、鎧を付けた上半身しかないミイラを見ながら話し合う。
「死んだにしては、おかしくね?」
「確かに……肉体が腐敗しているならわかるが、一週間やそこらでミイラになるとはとても思えない」
「ね? 死体も転がっているのに、血の跡すら残ってないしぃ」
「まるで地面に吸い取られたみたいだ……兵士は!? 他の兵士はどこにいるんだ!!」
ミイラを見付けた事によって、ヨハンネスは辺りを見渡してから、サシャに詰め寄る。
「それがね~……」
「それが?」
「魔獣の反応はあるんだけど、その他はまったくないしぃ」
「嘘だろ……四万の兵士が居たんだぞ!」
「ウチに言われても知んないしぃ」
「あ……」
「とりま、生存者が居ないか、この辺を見て回るしぃ」
「ああ!」
ひとまず二人は森に向けて歩き、転がるミイラを見ながらしばらくすると、陣営跡地に到着する。
「ここで陣を張ったようだが、壊されているな」
「う~ん……見た感じ、逆に行ったのかな?」
「死の山に向かったのか……」
「だろうね。そっち行くしぃ」
サシャの指示に従い、反転して真っ直ぐ死の山に向かう。そうすると、食い散らかされて転がるミイラを多数発見し、ヨハンネスは気分が悪くなる。
「うっ……」
「情けないしぃ」
「サシャは大丈夫なのか?」
「ウチはもっとひどい現場見てるかんね。ゴブリンの巣に乗り込んだ時の話……聞く?」
「ゴブリン……いや、いい。先に進もう」
「あの時はね~」
「聞きたくないと言ってるだろ!」
それでも話し続けるサシャ。ゴブリンに犯されて無惨に殺された女の死体の転がった巣の話は、ヨハンネスには刺激が強かったようだ。
なので、耳を塞いで叫びながら走って行ってしまった。当然、サシャも飛びながら追い掛け、ケラケラと笑っている。
そうして速度の上がった二人は死の山間近、深い崖にまで到着する。
「ちょっ、止まるしぃ!」
「いやだ~……う、うわ~~~!」
サシャがしつこく話し続けるので、ヨハンネスは聞く耳持たず。そのせいで、崖に突っ込んで行った。
そうして落ちて行くヨハンネスは、サシャに救出されて崖まで戻され、地に足を着ける。
「ハァハァ……」
「だから止まれって言ったしぃ」
「それは! ……なんでもない」
サシャに文句を言ったところで、聞いてくれないのでヨハンネスは諦めてしまう。
「それにしても、変わった形だな。崖も真っ直ぐだ」
「人工物みたいだしぃ」
「人工物?」
「誰かが作ったんじゃね?」
「こんなに巨大な物をか!?」
「自然にできるほうが不自然じゃね?」
「確かに……」
サシャの言い分に、ヨハンネスは納得してしまう。
「とりま、ライナーの終着点はこの辺かな?」
「可能性はあるな。でも、不自然なまでにミイラが揃って落ちているのはどういう事だろう?」
ヨハンネスの指摘で、サシャは浮いて空から辺りを確認する。そうすると、崖から半円状にミイラが並んでいる姿が見られ、サシャはなんとなくヨハンネスに指示を出す。
「ちょいそっちに動いてくんない?」
「こうか?」
「もう少し左だしぃ。……今度は行き過ぎだしぃ!」
と、「ギャーギャー」指示を出したサシャはふわりと地上に降り立つ。
「やっぱしね」
「何かわかったのか?」
「誰かを取り囲んだ跡みたいだしぃ」
「魔獣がか!?」
「たぶんね」
「魔獣がそんなに統率された行動を取るわけないだろう」
「普通はね。でも、魔獣を操る程の力ある者が居ればどうよ?」
「あ……」
サシャの推測に、ヨハンネスは、一人の人物の顔が頭をよぎる。
「……魔王」
「う~ん。あの子はないっしょ~」
「しかし、それ以外は考えられないぞ」
「この一週間そばに居たし、その上ウチと一緒でかわいいから、ないない」
「……かわいいは関係あるのか?」
「あるしぃ~!!」
ないな。けど、何故か力説しているから、放っておいてあげよう。
「仮に魔獣が囲んだとして、囲まれた者はどうなったんだ?」
「さあね~。殺されたか、それとも……」
「……飛び降りた」
「もしくは、空を飛んで死の山に降りたとか……行ってみっか?」
「死の山にか!?」
「じゃあ、ヨハンは留守番、ヨロ~」
「え……近くに魔獣は??」
「なんかぞろぞろと近付いて来てるから、頑張るしぃ!」
「お供させていただきます」
サシャの脅しに負けて、素直に宙を舞うヨハンネス。魔獣を相手するより、言葉の通じる勇者のほうがマシに感じたのだろう。
そうして死の山頂上に降り立った二人は、辺りを観察する。
「何も無いな」
「う~ん……体はどうだしぃ?」
ヨハンネスはサシャの言葉で「ハッ」として、手や足を動かして確認する。
「……なんともない」
「ふ~ん。面白くないしぃ」
「なっ……いいだろ!」
「ま、もうちょっと調べて見るしぃ」
ヨハンネスが苦しむ様を想像していたサシャは、心底残念がり、反論は無視して歩き出す。
と言っても、何も無い平坦な地面を歩き回るだけで、これといった物も見付からず、時が過ぎる。
「ダメだこりゃ」
「ん?」
「入口でもないかと探していたけど、見付かんないや」
「やはり、自然にできた山なんじゃないのか?」
「いや……ウチの勘が何かあるって言ってるしぃ」
勇者の勘……サシャは普通の人間より鋭い感覚を持ち合わせている。事実、この勘で自分の命だけでなく、多くの人々の命を救って来たのだ。
それなのに……
「気のせいだろ?」
ヨハンネスは、またよけいな事を言う。
「失礼だしぃ! もう助けてやんないしぃ!!」
「助ける? ……う、うわ~~~!」
サシャがムキーっとなったその時、空から大きな影が降って来るのであった。
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