攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

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 義勇兵がゴブリンとの戦闘に突入した中、サシャは凄い速さで空に消えて行き、ゴブリンが三匹倒された頃に、凄い速さで戻って来た。

「ほい!」

 そして、バルトルトの前にふたつの首を投げ捨てる。

「ゴブリンとウルフ……」
「言ったっしょ? 六匹いるって。あ! ゴブリンライダーだったから一匹って言ったから、正確には七匹だったしぃ」
「しかも、素早いゴブリンライダー相手に、この短時間で戻って来ただと……」
「お~い? 聞いてるしぃ?」

 まったく話を聞いてくれないバルトルトを、サシャは服を掴んで揺すりまくる。すると……

「やめい!」

 怒られた。

「やっと戻って来たしぃ。てか、ゴブラゴブリンライダーが居るって事は、この先に大規模な群れが居るしぃ」
「何故、そんな事がわかるんだ?」
「はあ? そんな事も知らないなんて、ウチが逆に聞きたいしぃ!」

 サシャはバルトルトの質問にキレて答えるので、群れの出没の理由はいまいちわからないまま戦闘が終わり、義勇兵は先へと進む。
 バルトルトはいちおうはサシャのアドバイスを聞き、注意して進むように指示を出していたが、翌朝を迎えても何も起きず、その頃にはサシャを疑い始めていた。
 しかし少し進んだところで、サシャを信じる事となる。

 ゴブリンの群れだ。

 先見に出していた騎兵が百匹の群れを確認して、慌てて戻って来る事となった。
 義勇兵の数は総数30人。三倍差の数でも負ける事はないだろうが、新人ばかりの隊では死傷者は必至。
 それでも魔物と戦う事が義勇兵の任務。志願者は死を覚悟してやって来ているはずだ。
 そう確信しているバルトルトは、義勇兵の目を見て鼓舞する。

「これよりゴブリンの群れを殲滅する! 我らの功績により、この地に住む民の命が守られるのだ! 死など恐れるな。恐れる事が死ぬ事に直結するぞ! 誰一人恐れる事も死ぬ事も許さん! 我が剣に続け~~~!!」
「「「「「おおおお!!」」」」」

 バルトルトの声に、義勇兵が声を張りあげながら前進す……

「ちょっち待つしぃ!!」

 突撃仕掛けた瞬間、サシャの大声で皆の足が止まった。

「今度はなんだ!!」

 せっかく士気を上げたのに、サシャに止められてバルトルトはおかんむり。怒りの声で返した。

「追われてる人が居るみたいだしぃ。助けて来ていいしぃ?」

 サシャの意外な質問で溜飲の下がったバルトルトは、ゴブリンライダーに、いまにも追い付かれそうな馬に乗った人物を見る。

「あの距離ではもう無理だ。諦めろ」
「無理じゃないしぃ!」
「好きにする代わりに、私の命令は聞けと言っただろ?」
「助けられる命がそこにあるのに、おっちゃんの命令なんか聞けないしぃ!!」
「私の命令が聞けないならクビにするぞ!!」

 まったく命令に従わないサシャに、バルトルトはついにクビをちらつかせて脅す。これまでの度重なる違反に目をつぶって来たのだが、戦闘での指揮官の言葉まで聞かないのならば、居ないほうがマシだと考えたのだろう。

 だが……

「わかったしぃ。兄貴は馬の人を見てくれしぃ!」
「おう!」

 サシャは脅しに屈せず、あっけらかんと勇者に指示を出す。

「おい! 本当にクビにしていいのか!?」
「人助けを止めるような人の所に居たくないしぃ」
「くっ……好きにしろ! ただし死にに行くなら、バカ兄貴は巻き込んでやるな」
「兄貴なら死なないし、あんたらよりよっぽど使えるしぃ」
「サシャが俺を褒めてる……うぅぅぅ」
「バッ。泣くなしぃ! さっさと行くしぃ!!」
「うわ~ん!」

 サシャが空を舞ってゴブリンに突撃すると、勇者は大声で泣きわめきながら走って行った。それを見ていた義勇兵は、ポカンとして出鼻を挫かれるのであった。
 しかし、敵はすぐそこまで迫って来ている。呆けている場合ではない。バルトルトは再び声を張りあげ、命令を下す。

「全軍、隊列を崩さず前進だ~~~!!」

 くして、義勇兵はゴブリンとの戦闘を始めるのであっ……

 チュドーン!! ドコーン!!

 前方で大きな爆発音が響いて、またしても義勇兵の前進が止まるのであった。
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