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22 破壊神
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しおりを挟む「「ガ、ガガガ……グギギギギ」」
四本の刀と、三本の腕を生やした端末は、ふたつの口から声を漏らす。
「なんだ。制御できないんだしぃ」
サシャは端末の姿に焦りを覚えていたが、苦しそうな声を聞いて、勝機を見出だしたようだ。
「「マママ、マズイでデすネね。ぐぐああ~~~」」
「プッ。ウチの攻撃が効いてるしぃ」
小さく吹き出したサシャであったが、急に後ろを振り向いて刀を構える。
すると、「ギィーンッ!」と金属音が鳴り響いた。
「あ、危なっ……ぐふっ!」
そして、腹に打撃を喰らって吹っ飛ぶ事となった。
端末がサシャを斬り付け、防御された瞬間に拳を振るったからだ。
サシャは防御は間に合わなかったが、常に張り巡らせている防御結界と、後ろに飛ぶことでダメージを減らし、地面を削って止まる。
「どこ行ったしぃ!?」
急な攻撃で吹き飛ばされ、端末を見失うサシャ。その瞬間、嫌な予感がして咄嗟に前へ跳ぶと、元居た場所に、クレーターが作られた。端末が空から降って来たからだ。
「ぺっ」
サシャは血の混じった唾を吐きながら、クレーターの中心に立つ端末を睨む。
その姿は、先ほどとは違い、足が五本となっていた。
この足で、最初に戦っていた時よりも倍以上の速度を出したので、サシャは面食らって攻撃を受けてしまったのだ。
「それならこっちも……」
サシャは脳内で短縮詠唱を行い、収納魔法からもう一本の刀を左手に握る。右手の刀よりもやや劣るが、ドワーフの作りし銘刀なので、サシャの力でも折れにくい。
二刀流なんてした事が無かったのに、端末に対抗するために取り出したようだ。
しかし、端末の行動は逆。直接攻撃ではなく、サシャから学んだ魔法を使い出した。
歪んだ風の猫、歪んだ炎の兎、歪んだ氷の亀、歪んだ雷の鳥。一斉にサシャを襲う。
「こんちくしょ~!!」
サシャは自分の魔法をパクられた事に怒っていたが、冷静に対処。避けたり、同じ魔法で応戦。何度もぶつかる魔法生物のせいで辺りに暴風や熱気、冷気が荒れ狂い、地形が変わっていく。
そんな矢先、魔法勝負はサシャに軍配が上がる。なんの事はない。反対の属性でカウンターをしただけ。サシャの魔法のほうがやや強かったので、逆の属性をぶつけたら、あっさり突破したのだ。
サシャの魔法で作られた生物は、全て端末に命中。しかし、一度当ててダメージにすらならなかった攻撃だ。サシャは一気に距離を詰める。
「【剣の舞い舞い】だしぃ!!」
二刀流になったからか、「舞い」がひとつ増えたサシャの【剣の舞い】。二刀流初めてとは到底思えない剣捌きで端末を削る。しかし、この攻撃も通じなかったので、猛スピードで刀を振るいながら、次の技に移行。
「【聖剣の舞い舞い】だしぃ!!」
刀に聖なる光を纏っての斬撃。縮んで球体となった端末の四ヶ所に、大きな十字の穴が開く。
「【聖針崩壊】」
サシャか背中越しに呟くと、十字の穴の断面から光の針が飛び出て、端末は内部から串刺しとなった。
「グ、グギギギギ」
端末は苦しそうな呻き声を出すが、振り向いたサシャは険しい顔のまま。まだ、決着には至っていないと感じている。
もちろん端末は、サシャの猛攻がダメージになっていないと言わんばかりに、体をボコボコと盛り上がらせて、七本腕、五本足の姿に戻った。
「ピーー……」
「ピ??」
動きの止まった端末は、どこから出したのかわからない機械音を発する。
「ガクシュウシマシタ」
「学習??」
端末の機械音に、サシャは首を傾げて質問するが、今まで饒舌に語っていた端末は返事をしない。
「テキヲセンメツシマス」
「ちょっと~? ウチの質問に答えろしぃ!」
苛立つサシャに、端末は攻撃で返答とする。
一瞬で間合いを詰め、四刀流の斬撃。しかも、雷を纏っている。サシャも刀に雷を纏って応戦。威力は相殺となっているが、刀の数の差で、後退を余儀なくされている。
さらには、空いている三本の腕のパンチ、二本の足でキックとしてくるからにはたまったもんじゃない。サシャは踊りの足捌きでかわしていたが、端末の手数が勝り、吹っ飛ばされる事となった。
サシャはギリギリ刀を十字にして構え、防御結界を多重に展開したのでダメージは無し。だが、本当にギリギリであった為、悔しそうに端末を睨む。
その睨み合いのタイミングで、大きな声が聞こえて来た。
「お~~~い!」
勇者だ。勇者がタイミングよく、走って来たのだ。
サシャはその声に振り向きもせず、端末を注視し、次の攻撃に備えているが、勇者は最長老だと思っていたサシャの姿を視界に収めると、足が空回る。
空回るだけでなく、足はもつれ、前のめりに倒れてゴロゴロと転がり、偶然サシャの足元で止まる事となった。
「サ……サシャ? サシャだろ? お、俺だ……お兄ちゃんだ~~~!!」
よろよろと立ち上がった勇者は、涙を浮かべてサシャにハグ。もちろんサシャはさっと避けるが、勇者は追尾。勇者のタックルは、グーパンチにて止められる。
「知ってるしぃ!」
「うわ~ん! 会いたかったよ~!!」
「うっさいしぃ!!」
しばし大泣きする勇者に、サシャは迷惑そうな顔をし、端末は敵だと思っていた者がサシャに攻撃をしていると感じたのか、戸惑って動きを見せない。
そうして勇者の涙が少しだけ落ち着くと、グズグズ言いながらサシャに話し掛ける。
「グズッ……サシャが俺を心配して追い掛けて来てくれた……グズッ……うぅぅ」
「もう泣くなしぃ! いまはそれでいいから、ちょっとは状況を考えろしぃ!!」
「グズッ……状況??」
勇者はサシャに言われて、やっと状況を呑み込む。珍しくサシャが険しい顔をしており、その視線の先には気持ち悪い生き物。さすがの勇者も……
「サシャのレアフェイス、いただきました!!」
通常運転のシスコンのままだ。
「いま忙しいから、邪魔するならどっか行ってろしぃ……」
「あ……すみません」
サシャの本気の怒り。いや、怒りよりも呆れ果てて、興味の無い目で勇者を見る。この目は、勇者が一番されたくない目なので、素直に謝った。
「てか、あいつ、ちょっと厄介なんだしぃ」
「厄介??」
「ウチの攻撃があんまし効かないしぃ」
「サシャの美しい攻撃がか!?」
「たぶん、続けていれば、いつかは消滅すると思うけど……」
サシャは勇者をチラッと見る。
苦肉の策。いくら馬鹿でも、馬鹿とハサミは使いよう。絶対に頼りたくなかった人物に、サシャは頼るしか選択肢がない。
「あいつ、思ったより強いから、ちょっと手伝えしぃ」
「サシャが俺を頼ってる……ま、任せろ!!」
ぶわっと溢れた涙を、勇者は目を擦りながら止める。
「何をしたらいい?」
「ウチは攻撃に専念したいから、あいつの攻撃がウチに来ないようにしろしぃ」
「わかった! お兄ちゃんに任せろ~~~!!」
世界を救った双子勇者復活。
ただし、勇者兄は勇者妹の囮役に過ぎないが……
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