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一章 出会い
005 シモンの能力
「なあ……余計な詮索しないでくれないか?」
いまはシモンとプックが出会ってから3日目の夕方。プックがカウンターに座ったところで、シモンは面倒くさそうに近付いて声を掛けた。
「なんのことでっか?」
「冒険者ギルドで俺のこと聞きまくってるだろ。そんなことされると迷惑なんだよ」
「もうバレたんか~。女関係の情報をマスターに売ったら、宿代負けてもらえたのにな~」
「はあ!? あの件じゃねぇのかよ!?」
シモン、ビックリ。てっきり謎の金属の件を調べられていると思っていたし、知り合いにもその件を聞かれたから注意しに来たのに、女性関係だとは思いも寄らなかったみたいだ。
なので、プックに顔を近付けてヒソヒソと問い質すシモン。
「ちなみにだけど、何か聞いたか?」
「定期的に娼館に行ってることと、お気に入りぐらいやな。これ、元カノさんと付き合っている時と重なっていたら、マスター怒るやろうな~……あ、でっち上げたらいいだけか」
「ないから! 余計なこと言うなよマジで!!」
「そんなに焦っとったら、マスターにバレるで~??」
いまのところマスターは離れた場所にいるから2人の会話は聞かれていないが、シモンとしてはプックがいつ嘘を吹き込むかわからないので怖い。
「ここの宿は気に入ってるから、追い出されるとマジで困るんだって」
「元カノさんがいるからでっか?」
「単純に立地だ」
「ああ~……迷宮もギルドも近いもんな。色街も……」
プックが悪い顔をしていると言うことは、絶対に言いそうだ。
「ああ~……クソッ。あのこと言えばいいんだろ。そのかわり、俺の情報は誰にも言うなよ?」
「フッ。毎度あり~」
商談成立。シモンが負けを認めることで、プックも秘密を守ると約束するのであった……
それから2日後。シモンが独自で決めている休日に、プックと一緒に迷宮街を出た。そうして街道を逸れて林に入り、少し開けた場所で腰を下ろした。
「これは俺の切り札だから、マジで誰にも言うなよ?」
「わかってますがな。あーしの実家は鍛冶屋やってるから、お客さんの情報はできるだけ守るようにしてますからな」
「できるだけってなんだよ」
「そりゃ剣を突き付けられて腕を切るって言われたら喋りますわ。足一本なら、ギリ喋らへんかな? 仕事には支障がありまへんからな」
「ハッ……死んでも喋らないって言われるよりマシな答えだな」
シモンは鼻で笑ったが、プックの答えは気に入ったようだ。
「まずこれなんだか……正直言うと、俺もわかっていないことのほうが多いってことだけは覚えておいてくれ」
シモンが金属を摘まんで話し始めると、プックの目が鋭くなる。
「それは迷宮で手に入れた物ってことかいな?」
「いや、スキルだ」
「スキル??」
「どこから話をしたもんだか……俺のジョブから言ったほうが早いか? 実は俺のジョブは、いまのところ世界初のジョブってことになってる」
ジョブとは、女神が邪神に敗れた数年後から、この世界の一人一人に現れた現象。諸説あるが、女神が人々の命を守るために与えていると言われている。
だいたいの人間は、種族や家系に合ったジョブが10歳前後に与えられ、その力を使って仕事に就く。ただ、時々種族や家系に合わない戦闘に特化したジョブが与えられるので、その者は冒険者になることが多い。
その中に、本当に稀だがレアジョブという物が存在する。戦闘に特化した中のさらに上位のジョブだ。
その者は、階層を統治する君主に報告の義務があり、冒険者になって下層に向かうことも義務付けられる。
昔は国で囲ってスタンピードに対応していたこともあったが、上層はそれほど被害がないし女神からの啓示もあったから、君主も逆らうことはやめた。
啓示というよりは、世界が滅びる未来しかないという未来を見せられたから、逆らえないというほうが正しい。
ここでシモンのジョブに話を戻す。シモンの家系は狩人で、父親も弓使いのジョブを授かっていたから、シモンも子供の頃から弓を習っていた。
兄は予想通り弓使いのジョブを授かったが、シモンは聞いたこともない狙撃手というジョブを授かった。そのことはすぐに審査官である神殿の者が国王に報告して、冒険者になるように命じられた。
シモンも言われるがままに冒険者登録はしたが、思ったような活躍はしなかった。普通レアジョブを授かった者は、ジョブレベルが上がるのは早いし強力なスキルが複数使えるようになるのだが、シモンにはそれがなかったのだ。
正確には、ジョブレベルの上がりは早いが、スキルがみっつしか使えず、スキルレベルが上がらない物がふたつもあったのだ。
これは、神殿や国王の拍子抜け。まだ大々的に発表していなかったから、ギリセーフ。ひとまず国王は、女神からの啓示は無視できないからシモンに冒険者活動を続けるように命令して、狙撃手というレアジョブのことは隠した。
その甲斐あって、シモンの鳴かず飛ばずの活躍は広まらず。最初はチヤホヤされたシモンは「なんだかな~?」と思いながら迷宮通いを続けたそうだ。
この話を掻い摘まんで説明したシモンは、本題のスキルについて発表する。
「弾丸補充ってスキルがあってな。毎日10個の弾丸ってヤツが貰えるんだ。ただ、使い方がいまいちわからないんだよな~」
しかし、プックに渡した弾丸も謎だらけでシモンはわからない。
「わからないと言いながら、切り札とか言ってたやん。それはどう説明するん?」
「ああ。焚き火にくべたら、その先っちょが勢いよく飛び出したんだ」
シモンも最初は調べようと頑張ったけど何もわからなかったので、1人で野営している時に、腹が立って弾丸を何発も焚き火に放り込んだらしい。
その時、弾丸は急にパンパンと鳴り出して至る所に飛び散ったから、シモンもかなり危ない目にあったんだとか。
「この色が変わってる丸いところ? 鉄の塊に当たったら痛いということやな……」
「そうだ。俺の場合はこうやって使ってるんだ」
シモンはショルダーバッグから丸い木の板を取り出して見せる。
「おお……弾丸が所狭しと綺麗に詰められとんな」
「蒼き群雄ってパーティにいた時は、モンスターをこの下におびき寄せて、フレアサークルって魔法を使ってもらっていたんだ。その炎と弾丸の相乗効果で、強いモンスターも一発って寸法よ」
「なるほど……面白い使い方でんな。1人の時はどうしてますん?」
「使い捨ての炎が出るマジックアイテムで使ってる。まぁ接近された時の、もしもの保険だから滅多に出番はないがな」
シモンの説明を聞いたプックは実演も見たいらしいので、シモンは火を起こして、薪に埋め込んだ弾丸を焚き火にくべてその時を待つ。
「全然、先っちょ飛びまへんな~」
「そうなんだ。フレアサークルなら一発でパパパパンっと弾ける音が聞こえるんだけどな~……弱い火じゃいつ弾けるかわからないんだ。使い勝手も悪いんだよ」
「てことは、温度に関わっているのかも?」
「どうだろな……あっ。見えたか?」
喋っている間に、パンっと乾いた音が鳴り響く。シモンは太い木に減り込んだ弾丸を指差して質問すると、プックは目を輝かせていた。
「凄いでんな! こんなに小さいのに、あんな速度で飛んで、木に減り込むなんて、凄い威力でんがな!!」
「そうか~? まぁ速いとは思うけど」
「面白い……面白いでんがな! これこそ、あーしの求めていた物や!!」
プックが抱きついて来たので、シモンは痛いからって押し返した。
「求めていた物って?」
「いや~。鍛冶修行で剣を山ほど作らされてな。飽きてたっちゅうか……違う物を作りたいから、旅に出たみたいな?」
「ドワーフって、好きで武器とかを作ってるモノだと思ってた……」
「いや、あーしみたいなドワーフ、けっこういるで? 需要と供給が武器防具が多いから飽きて、キッチン用品手掛けたり……迷宮街に来てるドワーフは、せめて面白い素材で武器を作りたいヤツばっかやで。中には装飾をワザと変にしたりするヤツもいるわ~」
「あっ! 気持ち悪い装飾の剣のヤツいる!? アレ、そういうことだったのか??」
シモンが思い出した剣は、ドクロとか悪魔が施された剣。いつも「きしょくわるっ」って思っていたらしい。
「まぁ、そいつが気に入ってるなら、そう作れと言われただろうから、一概には言えへんけどな。そういうの、けっこう燃えるねん」
「ドワーフも変わったヤツがイロイロいるんだな~」
カルチャーショック。シモンは今までドワーフと話すことがなかったから、プックの話がけっこう面白くて話し込んでしまうのであった。
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