23 / 150
一章 出会い
023 プックの怒り
湖までやって来たシモンたちは、ライフル銃の試射中。シモンがいとも簡単に遠くの木を狙撃するのでプックが変わってみたら、一発も当たらず。
これでもシモンが懇切丁寧に向きを説明している。なんならもっと大きな岩を狙っても外れるから、シモンもプックもイライラだ。
「あぁ~! なんで当たらないんだよ」
「なんで当たりますん! ちゃんと言われた通りやってるんやで!!」
「そりゃ~……腕前?? フッ……」
「うが~~~!!」
「はいはい。ケンカしない。当てられるシモンも凄いし、こんな武器を作ったプックちゃんも凄いわよ」
ここはイレーナが間に入って仲裁。元はと言うと、イレーナが撃ちたいとか言うからプックが代わりになったんだけど……
ライフル銃の試射はある程度の話を聞けたので、プックはイレーナと一緒に軽く水遊び。シモンはまだライフル銃のスコープを覗いて、さらに遠くの標的を探しては撃っている。
ただし、1キロ近くも離れると、さすがのシモンも外すことが多くなり、当たったとしてもド真ん中とはいかないみたいだ。
そうしていたら、イレーナたちが近付いて来て水を掛けようとしたので、シモンはライフル銃を抱き締めて転がって避けた。
「フリやフリ。逃げ過ぎやわ~」
「おお~い。ビビらすなよ~」
どうやらプックは水を掛けるつもりはなかったみたい。ライフル銃はプックに取っても子供のような物だからだ。イレーナは掛けようとしてたけどね。
「そういえば、これって水に濡れたらどうなるんだ?」
「それは盲点やわ。たぶんそのまま撃てると思うけど、お勧めしまへんわ。帰ったら調べまひょ」
「また暴発したら怖いから、俺も気を付ける」
「もう難しい話はいいかな~?」
2人の話に割り込むイレーナ。元々イレーナはランチの準備をしようと話し掛けたのに、シモンが集中し過ぎて反応がなかったから、水を掛けようと言い出してプックに止められたんだって。
「メシか~……なんか狩って来ようか?」
「それええでんな。新鮮なホーンラビットとか、バーベキューで食べてみたいわ~」
「またお肉~? 私、捌けないわよ??」
「捌くぐらい俺ができる。こう見えて、親父に仕込まれてるからな。旨そうなの狩って来てやるよ」
「頼んますわ~」
イレーナはちょっと呆れていたが、このシチュエーションなら食べてみたくなっているので止めはしない。しかしプックに送り出されたシモンは、5歩ほど歩いたところで戻って来た。
「すぐ戻って来る予定だからたぶん何も起きないと思うけど、1号を預けておく」
「あ、自衛用でっか」
「ああ。獣の場合は、見たらすぐに撃て。音に驚いて逃げて行くはずだ」
「なるほど。てことは、消音アイテムをオフにしといたほうがええでんな」
回転式拳銃を受け取ったプックはすぐにイジろうとしたけど、シモンに止められた。
「なんやの? 険しい顔をして~」
「人間の場合もある。真面目に聞け」
「せ、せやな。その場合は……」
「引き付けてから、体のド真ん中を狙え。それなら当たるだろ。でも、人殺しなんかしたくないよな?」
「できることならやけど……」
「じゃあ、ちょっとでも危険を感じたら、空に向けて撃て。できたら2回な。その音を聞いたらすぐに駆け付ける。だから無理するなよ?」
「うん……そうさせてもらうわ」
ここは危険のある地帯。シモンは起こりそうな事態の対策を告げ、プックの頭をポンポンと軽く叩いてから森の中に消えるのであった。
「彼、頼りになるでしょ~?」
シモンが見えなくなった瞬間に、イレーナはニヤニヤしながらプックの隣に立った。
「まぁ……なんでんのん。その顔は」
「だって、プックちゃん、乙女の顔をしてたんだも~ん」
「ないし! あんな優男タイプちゃうし!!」
「またまた~。顔赤くなってるよ~?」
「なってないし! そもそもあんさん、元サヤに戻りたいんやろ! だからこんなにシモンはんに世話焼いてるんやろ!!」
「さあね。私たちはごはん作るよ~」
女の格ではイレーナが上手。プックが喧嘩腰にしても、余裕の表情で対応する。なのでプックは「ホンマにちゃうね~ん」と泣きそうな顔で料理を手伝い、イレーナも心ない謝罪をしながら手を動かすのであった。
時間が流れ、シモンが森に入ってから1時間になりそうな頃に、料理中のプックとイレーナに迫る影があった……
「ラッキー。こんな所に金が落ちてた」
「ヒュー。あっちの女はいい体してんな。これは高く売れるぞ~」
盗賊だ。シモンは辺りを確認してから森の奥に向かったのだが、たまたま偶然、10人以上の盗賊がこの場所を通ってしまったのだ。
「な、なんでっか? あーしたちになんか用でっか??」
「ドワーフ女は……まぁそんな趣味のヤツもいるから売れるか」
「はあ? 盗賊やな? あんたら盗賊で間違いあらへんな??」
「だったらなんだ。大人しくしてれば、傷付けずに売ってやるぞ」
「えぇ~……お頭、あっちの女、ヤラせてくれよ~」
一際ガラが悪くて大きな男が前に出て、子分がお願いした瞬間に、プックは空に拳銃を向けて二度撃った。
「テメェ……いま何しやがった!?」
すると、盗賊たちの目の色が変わる。大きな音が二度も鳴ったからだ。
「あーしらの主人に合図を送ったんや」
「ハッ……んなヤツ、見せしめに殺してやるよ」
「殺すのはもったいないで~? あーしの主人、金持ってるからな。あーしらを丁重に扱って、身代金要求したほうが儲かるで。端金でいいからおこぼれ貰えたら、演技に付き合うで~? そしたら労せずあんたはんは大金持ちや」
その目をかわそうと、プックはあることないことを吹き込む。しかし、それは効果覿面。本当に身代金で大金を稼げるなら、奴隷売買に加えて二度美味しいからだ。
「ひでぇ……自分が助かりたいからって、主人を売るなんて……」
「プック……シモンになんか恨みあるの?」
「なんでみんな引いてるんでっか!!」
いや、こんな交渉を持ち掛ける人質は初だから、盗賊も困ってる。イレーナまで信じて同じ顔をしているので、プックは恐怖よりも怒りが勝るのであった……
あなたにおすすめの小説
ポテチ ポリポリ ダイエット それでも痩せちゃった
ma-no
エッセイ・ノンフィクション
この話は、筆者が毎夜、寝る前にボテチを食べながらもダイエットを成功させた話である。
まだ目標体重には届いていませんが、予想より早く体重が減っていっているので調子に乗って、その方法を書き記しています。
お腹ぽっこり大賞……もとい!
「第2回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしています。
是非ともあなたの一票を、お願い致します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~
ma-no
キャラ文芸
某有名動画サイトで100億ビューを達成した忍チューバーこと田中半荘が漂流生活の末、行き着いた島は日本の島ではあるが、韓国が実効支配している「竹島」。
日本人がそんな島に漂着したからには騒動勃発。両国の軍隊、政治家を……いや、世界中のファンを巻き込んだ騒動となるのだ。
どうする忍チューバ―? 生きて日本に帰れるのか!?
注 この物語は、コメディーでフィクションでファンタジーです。登場する人物、団体、名称、歴史等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ですので、歴史認識に関する質問、意見等には一切お答えしませんのであしからず。
❓第3回キャラ文芸大賞にエントリーしました❓
よろしければ一票を入れてください!
よろしくお願いします。
お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……
ma-no
キャラ文芸
お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……
このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。
この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。
☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1日おきに1話更新中です。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』