33 / 150
一章 出会い
033 シモンの夢
勇者パーティの対策会議は、シモンは情報を全て出し尽くしたのでプックと一緒に退室。すると冒険者ギルドのギルマスが追って来た。
「おい。シモン……お前、これからどうするんだ?」
どうやらシモンが勇者パーティを騙したから、心配で聞きに来たみたいだ。
「俺は消える。ここにいたら迷惑になりそうだからな」
「そうか……ちなみに行き先は?」
「ああ~……勇者パーティに聞かれたら、単身六層に向かったと言っておいてくれ。どうせ殺されるぐらいなら、夢を叶えるとか適当なことを言ってな」
「まぁ死んだことにしたほうが安全か……本当に向かったりしないだろうな?」
「さあな。フッ……」
シモンは含み笑いをしたあとはすぐに背を向け、右手を振ってギルマスと別れるのであった。
その足でシモンは下の階にある銀行の応接室に入って預金の半分を引き出す。その手配に少し時間が掛かるので、ソファーに座って待っていた。
「なあ? ホンマは六層に行こうとしてるやろ?」
そこにプックは勝手について来ていたので、シモンは「だから入って来るなよ」とか思ってる。
「別に俺がどこに行こうと構わないだろ。それよりプック……急いで故郷に帰って身を隠すんだぞ? 俺と一緒に顔を見られたんだからな」
「なんでんのん。かっこつけて……プーシーシリーズの整備は誰がしますん? あーし抜きじゃ無理でっしゃろ」
「整備ぐらいなら俺でもできる。新しい武器は作れないけどな……プック。今までありがとな。プックのおかげで、本当に俺は夢を叶えられそうだ」
シモンが優しい目で感謝して頭を深々と下げると、プックの肩は震える。急な別れとシモンの男気に感情が揺れたのだろう。
「……うが~~~!! だからかっこつけんな言うとるやろ!!」
いや、怒っていたみたい。
「あーしもついてく!」
「は??」
「これは決定事項や! 六層でも地獄でもついて行って、もっと凄い武器作ったるわ!!」
「いや、もう充分凄い武器作ってくれたし……」
「あんな中途半端なのであーしが納得いくか! 絶対ついて行くからな!!」
プックが一方的に怒っていたら、受付嬢が「痴話喧嘩ですか~? お若いですね~」と半笑いで近付いて来たので、お金を受け取ったらそそくさ退出。
それからもシモンとプックの問答は続いているけど、プックがシモンの腕に絡み付いて離れてくれないから歩きにくそうだ。
言い争いしながら行き付けの酒場までやって来た2人は、中に入ったところでイレーナと出くわした。
「あなたたち……そんなに進んでたの??」
「「ちっが~~~う!!」」
イレーナはお盆を落として青ざめていたので、シモンとプックは仲良くツッコミだ。
「こいつが離れてくれないんだ」
「シモンはんがあーしを捨てようとするから悪いんやろ」
「それはシモンが悪いわね。ちゃんと責任取りなさい」
「だから違うって言ってるだろ~」
やはり痴話喧嘩にしか見えないので、イレーナはシモンだけ非難してるよ。
「それよりイレーナに話があるんだ」
「わたし? 私はほら? もう縒りを戻すつもりはないから……」
「だから違うんだって。お別れを言いに来たんだ」
「え……」
驚きのあまり固まってしまったイレーナに、シモンは勇者パーティを怒らせることをしたから逃げる旨を簡潔に説明した。
「これから発表があるはずだから、イレーナもすぐにここから離れてくれ。俺の関係者だとバレたら何をされるかわからないんだ」
「そういうこと……シモンはどこに行くの?」
「知らないほうがいい」
シモンはイレーナのために言うつもりはなかったみたいだけど、プックが言っちゃう。
「六層やで」
「おお~い。なに言ってんだよ~」
「あーしもついてくねん」
「おお~い。なにしれっとウソついてんだよ~」
また痴話喧嘩みたいになっているけど、イレーナは目に涙を浮かべていたので2人はギョッとして喧嘩をやめた。
「そう……ついに蒼き群雄を追いかけるんだね……」
「いや、勇者パーティから逃げるだけなんだけど……」
「ウソつかなくても、私、知ってるんだからね。この日が来るの、私も待ってたんだもん。やっとだね」
「いや、その……」
イレーナに自分の未練が見透かされていたのかとシモンは焦ったが、手を取られたところで覚悟を決めた。
「ああ。やっとだ。イレーナには何かと迷惑掛けたな。絶対に蒼き群雄に追いついてやる。その時は、手紙を書くよ」
「うん。待ってる……弱音も待ってるから、こまめに出してね。あ、シモンのことは待ってないから、プックちゃんと仲良くね」
「ああ……って、だからこいつを連れて行く気はないんだって~」
途中までいい感じの別れだったけど、プックの名前が出たのでイマイチ締まらないのであった。
今日のところは時間も時間なので、このまま夕食。明日は1日やることがいっぱいあるけど、その前にシモンはやることがある。
「マジでついて来るのか?」
「当たり前や。シモンはんにはまだあーしの力がいるやろ」
「俺について来たほうが危ないぞ? 勇者パーティに見付かったら、殺される可能性が高い。殺されない場合は奴隷扱いだ。見付からなくっても、俺は冒険者。いつ死ぬかわからない身だぞ?」
シモンが脅すように言っても、プックの意志は固い。
「その時はその時や。勇者パーティの目を盗んで武器を作ったるわ。それで殺したらよろしいでっしゃろ」
「勇者殺しって……誰がやるんだ?」
「……シモンはん?」
「おお~い。女神様が怒ったらどうすんだよ。天罰落ちて結局俺だけ死ぬだろ~」
プックは大それたことを言うし、シモンが迷宮で死んだ場合は遺産で五層に戻るとか言っていたので、ついにシモンも折れた。呆れたとも言う。
「もう好きにしろ」
「やった! 最強コンビ、再出発やな!」
「誰にもそんなふうに呼ばれたことはないけど……まぁ、これからもよろしく」
シモンとプックの活動は秘密裏に進行しているので、誰も知らない。それでも2人は固く握手をして、結束を固めたのであった……
あなたにおすすめの小説
ポテチ ポリポリ ダイエット それでも痩せちゃった
ma-no
エッセイ・ノンフィクション
この話は、筆者が毎夜、寝る前にボテチを食べながらもダイエットを成功させた話である。
まだ目標体重には届いていませんが、予想より早く体重が減っていっているので調子に乗って、その方法を書き記しています。
お腹ぽっこり大賞……もとい!
「第2回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしています。
是非ともあなたの一票を、お願い致します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~
ma-no
キャラ文芸
某有名動画サイトで100億ビューを達成した忍チューバーこと田中半荘が漂流生活の末、行き着いた島は日本の島ではあるが、韓国が実効支配している「竹島」。
日本人がそんな島に漂着したからには騒動勃発。両国の軍隊、政治家を……いや、世界中のファンを巻き込んだ騒動となるのだ。
どうする忍チューバ―? 生きて日本に帰れるのか!?
注 この物語は、コメディーでフィクションでファンタジーです。登場する人物、団体、名称、歴史等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ですので、歴史認識に関する質問、意見等には一切お答えしませんのであしからず。
❓第3回キャラ文芸大賞にエントリーしました❓
よろしければ一票を入れてください!
よろしくお願いします。
お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……
ma-no
キャラ文芸
お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……
このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。
この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。
☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1日おきに1話更新中です。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』