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二章 逃亡生活
041 最後の確認
しおりを挟むゴーレム戦は、プックのアイデアを採用して、まずはシモン1人で飛び出した。
シモンは両手で半自動式拳銃を握って、体を低くして素早く走り回る。ゴーレムはシモンに気付いた瞬間にドシンドシンと向かって来たが、シモンのスピードに振り回されてまったく捉え切れていない。
その間に、シモンはゴーレムの足関節の隙間を確認し、チャンスがあれば一瞬止まって引き金を引く。
そうして何発も撃ったら、ゴーレムは足が動かなくなった。関節の隙間に弾丸が詰まったのだ。
「なんか、かわいそうでんな……」
「もう出て来たのかよ」
「ええやん。もう何もできへんやろ」
ゴーレムはその場に止まって腕をクルクル回しているので、プックは哀れみながらシモンの下までやって来てしまった。
「これ、壊せそうか?」
「せめて寝てくれていたら……」
「登るのも危ないからな~……行くか」
「そうしましょ。しっかし、シモンはんといると、冒険者の常識が崩れ落ちて行きますわ~」
「俺に言うな。俺もこんな冒険者見たことないんだ」
ゴーレムは倒せていないが、動きを封じたのだから勝利には変わらない。しかし、2人とも勝った気分になれないのか、ダラダラとその場をあとにするのであった。
それからも先に進み、チャンスがあればボス戦の練習。モンスターも防御力が上がっているので注意して、プックの弾倉交換や、弾倉を落としても焦らず新しい弾倉に交換する訓練も重ねる。
そうしていたら、本日の野営地に到着。2人は慣れた手付きで野営の準備をして、食後には銃の手入れと弾込め。弾込めはシモンも飽きが来てる。
しっかり寝て休んで朝食を食べていると、プックが心配そうな顔をしていることにシモンは気付いた。
「また眠れなかったのか?」
「いんや。今日はゆっくり眠れたで。ただ、今日ってアレから5日目やろ? 今ごろ上では騒ぎになってるんじゃないかと思って」
「勇者パーティか……」
シモンが勇者パーティの逆鱗にも触れているから、追って来ないかも心配らしい。
「ま、アレは最短の予想だから、もっと掛かってもおかしくない。いまからなら追いつけないって。初めて入る迷宮は慎重になるもんだからな」
「そうやとええんやけど……」
「心配するだけ無駄だって。そもそもアイツら、ご無沙汰だから遊びまくってるんじゃないか? 強姦はダメだけど、娼館とか……俺もご無沙汰だったな……」
「女の前で言うことか!!」
「いだ~~~っ!? お前、どんだけ力強くなってんだよ!!」
途中までいいこと言っていたのに、最後はスケベな顔をしたシモンが悪い。プックに肩を殴られて、出発前にHPを大きく減らしたシモンであった。
この日もボス戦の練習しながら奥へ奥へと進み、プックが巨大なモンスターに驚き、シモンが一発で倒すことには2人で驚いて進んでいたら、安全地帯に到着。
まだ休むには早い時間であったけど、シモンは野営を決めた。
「なんででんのん? ゆっくりしていたら、勇者パーティに追いつかれまんで?」
「最初に言っただろ? 迷宮ボスがいるのは地下5階だと。んで、ボス部屋はもうちょっと先で、ここが最後の安全地帯なんだ」
「ついに迷宮ボスのお目見えかいな……」
「そうだ。だから、ここで疲れを取ってから挑もう。武器もいつもより念入りに確認してな」
「わかったわ。ピッカピカにしてやるで」
勇者パーティに追い付かれる危険はあるが、急がば回れ。2人はゆっくりと食事をとり、武器も体も労って、翌日には気合いを入れて安全地帯を立つのであった。
今日の戦闘は、プックというかサブマシンガンは温存。ボス戦で少しでも弾詰まりにならない可能性を上げるためだ。
たまに2人で一緒にモンスターの前に立って、口だけのシミュレーションはやっておく。プックの緊張を解すためでもあるらしい。
そうしていたら、大きな扉がある部屋に着いた。
「おっきな扉やな~。この先に、迷宮ボスがいるんでっか……」
「そうだ。俺が見張っているから、5号の整備と弾込めを頼む。焦らなくていいからな?」
「はいな~」
ボス部屋前はわりと安全だが、たまにモンスターが巡回するように現れるので気を抜けない。プックを物陰に隠したシモンは、そこから半自動式拳銃を握って作業の終わりを待つ。
運良くモンスターが現れることなく整備等が終わると、プックは水筒をシモンに渡した。
「シモンはんもちょっとは休憩し。見とくわ」
「ああ。何か見たら声を掛けてくれ」
シモンも少しは疲れがあるので、腰を下ろしたら水を飲み、横になって軽くストレッチ。体調を確認し、5分ほど経つと半自動式拳銃を確認してから立ち上がった。
「準備はいいか?」
「いつでもござれや!」
プックはこう言っているが、シモンがプックの武器や防具をしっかり確認していたから「心配症やな~」とツッコまれていた。
「あとは、これを渡しておく」
「隠密マント?」
「俺が勝てないと判断したら、プックだけでも逃げろ。地図もプックのリュックに入れておいた」
「そういうことかいな……ぶっちゃけ1人で帰る自信ありまへんから、必ず勝ちましょうや。てか、迷子になる未来しか見えまへん。逃げる時は一緒に逃げてぇな」
「フッ。そうだな。素人を連れて来た俺の責任だ。必ず生きたまま地上に帰してやる」
弱音はナシ。お互い笑顔を見せ、シモンがプーシー5号の銃口を上に向けて前に出すと、プックがプーシー4号の銃口をそこにコツンと当てた。
「さあ、行こうか!」
「撃ちまくったるわ!」
こうしてたった2人だけで、ボス部屋に消えるシモンとプックであった……
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