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二章 逃亡生活
047 勇者パーティの帰還
新しい弾丸の話をしてからも北西に進み、太陽が真上に来た頃に休憩するにはいい小川を見付けたので、そこでプックを馬から降ろしてシモンは馬のお世話。
馬に水を飲ませて木に繋いだら、干し草を近くに置いてシモンはプックの近くに座った。
「ほい。昼飯だ」
「あんがとう。こんなんいつ用意したん?」
「朝、待っている間に買って来た。エルフパンってなってたけど、普通のサンドウィッチだよな?」
「五層でも似たような物がありますな~」
これは六層の入口にある迷宮街の名物料理らしいが、2人には不評。確かに微妙な味の違いはあるが、誤差の範囲だからだ。
なのであっという間に食べ終えて食休みしたら、プックは収納バックから道具を取り出して新しい弾丸の調査。シモンは馬と離れた位置でとお願いして設置する。
「行くで~?」
新しい弾を木に向けるように固定したら、プックが後部を叩いて発射。ズドンッと今までとは違う音が鳴り響いた。
「なんか飛び散ったな」
「ああ。木も穴だらけになった。なんだこれ?」
弾丸の名前は、バックショット弾。とある世界では散弾銃に用いられる弾丸だ。
「これは~……接近戦用やない? 遠くに行くほど広がる弾とか??」
「なるほど……すばしっこい小物を狙う時には役に立つかな? でも、気を付けないと危ないかも??」
「ホンマやな……人間に使ったら全身穴だらけになるで。なんちゅう危険な弾なんや……」
「これも勇者の世界では常識なのかな? 人殺しの道具とか言ってたし……勇者の世界ではこんなの使って人間どうしが殺し合っていたのか……」
「恐ろしい世界やな……」
普通の弾丸でも危険なのに、致死性の高い弾丸が手に入ったのだから、2人の顔色が険しくなる。
「とりあえず、単発のヤツを作ってみるわ」
「いいのか? 危ないぞ??」
「こんなん見たら、作りたくなるや~ん」
「ちなみにそれって誰用??」
「……あーし??」
「俺の金なんだけど……」
シモンは百発百中の腕前なのでショットガンは必要ナシ。プックは命中率が低いので持って来い。
結局「パーティメンバーやろ」とプックに押し切られて、ショットガン製作が決まるのであった。
この日はできるだけ長距離を進み、野営するにはちょうどいい場所を見付けたら、手分けして準備をする。
また冒険者メシだとプックが残念そうにしているので、シモンは申し訳なさそうだ。
「本当は村に寄りたいんだけどな~……足跡を残したくないんだ。少し我慢してくれ」
「なんかすんまへんな。お互い命が掛かってたの忘れてたわ」
「俺たちが死んだと騙されて、勇者たちがすぐ七層に行ってくれたらいいんだけどな~」
「それやと自由に観光とかもできるんやけどな~……あの人らもエルフに興味津々なんちゃうか?」
「だろうな。はぁ~……」
この逃亡生活がいつまで続くのかと、2人は意気消沈。ため息も何度も出てしまうので、プックは話題を変える。
「そういえば、誰とも擦れ違わんかったけど、どうなってるんやろ?」
「ホントだな。やっぱり、みんな勇者が怖くて外出を控えてるのかも」
「普通、旅の敵は魔獣か盗賊やねんけどな~。これじゃあ盗賊はんも商売上がったりやな」
「なんだ。勇者も役に立つことあるんだ」
「こんな役の立ち方、あーしらは求めてへんねん」
「まったくだ」
何を喋っても勇者と繋がるから、2人は何度も話題を探す。こうして2人の旅は、明るい話題はたまにシモンが狩る魔獣を美味しく食べることだけで、ひたすら前に進むことしかできないのであった……
時はシモンたちが迷宮に入った10日後……
「おらっ! シモンを出せ~~~!!」
五層の出口の迷宮街にある冒険者ギルドに、勇者パーティがドアを蹴破って現れた。普段冒険者ギルドは夕方には人で溢れることもあるが、勇者警報が出ているので、腕に自信のある高ランク冒険者が少数しか残っていないから驚く人も少ない。
「も、もしかして、勇者様でしょうか……」
ギルド嬢も疎開しているので、いまは男手しか残っていない。勇者パーティが荒れに荒れているから、スタッフの男が確認に出て来た。
「そうだよ! シモンを出せっつってるだろ!!」
「そのシモンさんなんでが、何人か同じ名前の人がいまして、特徴をお聞かせ願えないでしょうか? 調べようがありませんので……」
「弓使いのシモンだよ! 無駄にレベルが高いヤツいるだろ!?」
「しょ、少々お時間をください。総力を上げてお調べしますので」
「急げよ? 遅いと何するかわかんねぇからな」
「はいっ!!」
ここまでは、スタッフのマニュアル通り。全員がせかせかと動いて、資料を探している演技で時間を稼ぐ。
もちろんすぐにギルマスに知らせることも周知されているので、すでにスタッフが走っている。そして早すぎず遅すぎないタイミングで、ギルマスが資料を握って、エールを煽っている勇者パーティの前に立った。
「遅くなりまして申し訳ありません。このギルドのマスターをしています……」
「名前なんて聞いてないんだよ。シモンは? シモンはどこにいるんだよ!」
「それが、もう……」
「逃げやがったか……」
「いえ。おそらく亡くなりました」
「はあ?」
ギルマスはシモンの作戦通り、どうせ勇者パーティを怒らせて命がないのなら迷宮踏破に賭けたのではないかと、予想している演技をしながら説明した。
「隠してんじゃないだろうな……」
「めっそうもありません。迷宮に入る名簿に名前が載っていて、戻って来たともなっていませんから、死んだ可能性が高いかと。もしかしたら、下の階でまだ頑張っているかもしれませんが……」
さらにシモンが生きている可能性を示唆して、早く行けとのアレンジ。できる男だ。
「チッ……自殺しやがったか……」
「いや、ちょっと待て……」
その演技に勇者ユウキは騙されそうになったが、賢者トモヤは違う可能性が思い付いたらしく、ギルマスに問い質す。
「シモンの連れに、女の子がいたはずだ。その子はどこに行った?」
「女の子? パーティメンバーなら届けが出ていると思うのですが……シモンはソロのようですね。2年前にBランクパーティから契約解除されて、それ以降は何個か入ったみたいですけど、どれもクビになってますね……たぶんその子は、街中の知り合いか何かかと」
「プッ! アイツ、追放されまくってんのかよ! 最後まで笑わせてくれるな~。ギャハハハハ」
異世界物のよくある展開を聞いて、勇者パーティは大爆笑。トモヤだけは笑うことなく難しい顔をしていたので、ギルマスは冷や汗が垂れる。
しかし、これで勇者パーティのほとんどの者が溜飲が下がったらしく、ギルマスを邪険に追い返し、テーブル席に残った。
「しゃあね~。銃は諦めるか」
「いや、まだ諦めるのは時期尚早だ」
「なんだ? あのザコが生きてると言いたいのか?」
トモヤはメガネをクイッと上げて、考えていることを説明する。
「たぶんな。俺の記憶では、シモンの後ろにいた女の子はプック25歳となっていた。種族まで目が行ってなかったが、歳から察するに、ドワーフだろう」
「てことは、銃を作ったのは、そのプックってヤツだと言いたいのか?」
「ああ。プーシー1号2号……プックとシモンの頭文字を取って、そんな変な名前になってるんじゃないか? そして3号4号と続きがあるとすると??」
トモヤの言いたいことを理解したユウキは、飲んでいたエールをテーブルに叩き付けた。
「あの野郎……マシンガンだって作ってる可能性があるんだな……」
「そうだ。強力な重火器があれば、2人でも迷宮クリアーが可能だ」
「ふっざけやがって……追うぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
こうして勇者パーティは、シモンとプックの生存を確信して、迷宮を破竹の勢いで踏破するのであった……
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