56 / 150
二章 逃亡生活
056 エルフの女王と会食
「なんとまぁ、まさか勇者に追われているとは……」
シモンが五層であった出来事から逃亡中ということまで説明すると、エルフの女王コルネーリアだけじゃなく、この部屋にいる家臣も信じられないといった顔をしている。
「本当のことです。だから俺たちは、ここならバレにくいと思って来たんですけど、まさかこんなに人がいるなんて……ぶっちゃけ、勇者パーティはエルフを狙っているから、ここは引き上げたほうがいいです。次の層に行く途中にエルフがいなかったら、疎開地を探すと思うんで。俺と同じ考え方をしたら、確実にここに来ます」
シモンが真剣に訴えると、コルネーリア女王も鋭い目に変わった。
「勇者がエルフを狙っているとは、どういうことでありんす?」
「現在、上の階層は、勇者対策で女子供を疎開させています……」
次は勇者対策の説明。勇者パーティは粗暴だから、各階層は女子供を守るために疎開させていること。これは六層にも情報が届いていたから、すでに対策済みだ。
問題なのが、勇者パーティが対策に気付いてしまい、四層を一気に抜けて予定よりも恐ろしく早く、五層の迷宮街に現れたことだ。
その時の勇者パーティの発言から、エルフを狙っているのではないかと迷宮街の雄姿と話し合ったこと。その証拠に、五層の領主やギルマスの手紙を提出した。
「間違いは無さそうでありんすな……」
「はい。だから、俺たちは3日ぐらいで出て行こうとしていたんです」
「なるほどのう……」
コルネーリア女王は持っていたセンスをパチンと閉じて、決断する。
「それならば尚の事でありんす。恩人をほっぽり出すほど妾や民の心は狭くありんせん。もしも勇者が現れたら、逃がす時間稼ぎぐらいしてやるでありんす。これを礼とさせてくれぬか?」
「えっと……」
シモンは答えに困ったのでプックを見たら、諦めたように首を横に振った。おそらく、コルネーリア女王は逃がしてくれないと察したのだろう。
「わかりました。謹んで頂戴します……」
「うむ。狩りのない時はゆるりとしてくれ」
シモンも一緒。脅しに負けたような気分でお礼を受け取るシモンであった。
これで面会は終わったのかと思ったけど、まだまだ女王地獄は続く。場所を変えて会食だ。
「久し振りの肉は美味だのう。のう?」
「「「「「はっ」」」」」
家臣一同も嬉しそうに食べているから、シモンたちはどうしていいかわからない。特にコルネーリア女王の目の前に座らされたシモンはどこを見ていいのかもわからないみたいだ。真っ直ぐ見たら、深い谷間が目に入るし……
「じょ、女王様も、お肉を控えていたのですか?」
「うむ。民が我慢しているのに、妾だけ食べるワケにはいくまい。今ごろ向こうも、笑顔で頬張っているからの贅沢でありんす」
「そうなんですね。故郷の王様と大違いです」
「故郷というと、五層かえ?」
「あ、俺は二層から旅をしていまして……」
シモンは故郷の国王に粗末な扱いをされていた愚痴から始まり、蒼き群雄と一緒に苦難を乗り越えて五層までやって来たと聞かせていた。
「蒼き群雄なら妾も会ったことがありんす。懐かしいのう」
「本当ですか??」
「うむ。エルフの少女が行方不明になる事件があってのう」
これは入口の迷宮街での話。数人の少女がいなくなったので探していたところ、蒼き群雄が迷宮の中で誘拐犯を捕まえたのだ。
その誘拐犯は六層の中では一番大きな組織で、五層にてエルフを売り払おうとしていたとのこと。その組織も蒼き群雄が先陣を切って戦ったそうだ。
「あった! 町で人身売買してたマフィアが壊滅したって聞いたことがある!!」
「へ~。そんなことあったんや。シモンはんはその時、何してたん?」
「退職金で、宿屋に引きこもってヤケ酒飲んでた……」
「やさぐれ期かいな……」
せっかくいい話を聞いたのに、プックがあの時代を思い出させたので、シモンのテンションは急降下だ。
「その方、シモンと言ったか?」
「あ、はい」
「蒼き群雄の皆が、こぞって褒めていたでありんす。あと、喧嘩別れみたいになったことも悔いてありんした。いい仲間やったんやな~」
「みんな……俺のこと、まだ覚えてたんだ……」
「そりゃ六層やからな。別れてそんなに時間が経ってないからやろ」
「プック~。感動してんだから、邪魔しないでくれない? 涙が引っ込むだろ~」
「あ、こりゃ失敬。お口チャックしますがな~」
せっかく上がったテンションもプックのせいで低下。それで笑いが起こり、この日は蒼き群雄の話を楽しくしたり聞いたりするシモンであった……
会食が終わると、やっと帰れると思ったけど、恩人にはゆっくり休んでほしいと部屋まで用意されていたから緊張地獄は続く。ただし、1人で入れる温泉まで用意してくれていたから、緊張は吹き飛んだ。
ただ、部屋は一部屋しかないとのこと。お風呂上がりに部屋に集合した2人はまた緊張だ。
「久し振りのベッドや~!」
「やらかっ。横になったらすぐに寝てしまいそうだ」
いや、温泉とベッドのおかげで天国気分だ。
「それにしても女王様、いい人でんな。あーしたちを匿ってくれて、こんなに扱いがいいなんて」
「それはどうだろうな~……いざとなったら、俺たちは勇者に売られるかも?」
「それは疑い過ぎちゃうか?」
「うちの王様、アレだぞ? さすがに女王様は見栄のためにはアレしないと思うけど、民のためならアレするって」
「あはは。だからアレってなんですの~ん」
プックが笑っているが、シモンの返事は来ない。
「あ、そうや。いちおう言っておくけど、このパーテーションを越えたらしばくで? ……シモンはん?」
それが気になってパーテーションから顔を出したら、シモンは目を閉じていた。
「もう寝てる……ちょっとはやり取りしいや~」
お決まりのやり取りは、シモンが寝てしまったので不発。プックは残念そうにしていたが、プックも目を閉じた瞬間に眠りに落ちるのであった。
2人は五層からの疲れが一気に来たのであろう……
あなたにおすすめの小説
ポテチ ポリポリ ダイエット それでも痩せちゃった
ma-no
エッセイ・ノンフィクション
この話は、筆者が毎夜、寝る前にボテチを食べながらもダイエットを成功させた話である。
まだ目標体重には届いていませんが、予想より早く体重が減っていっているので調子に乗って、その方法を書き記しています。
お腹ぽっこり大賞……もとい!
「第2回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしています。
是非ともあなたの一票を、お願い致します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~
ma-no
キャラ文芸
某有名動画サイトで100億ビューを達成した忍チューバーこと田中半荘が漂流生活の末、行き着いた島は日本の島ではあるが、韓国が実効支配している「竹島」。
日本人がそんな島に漂着したからには騒動勃発。両国の軍隊、政治家を……いや、世界中のファンを巻き込んだ騒動となるのだ。
どうする忍チューバ―? 生きて日本に帰れるのか!?
注 この物語は、コメディーでフィクションでファンタジーです。登場する人物、団体、名称、歴史等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ですので、歴史認識に関する質問、意見等には一切お答えしませんのであしからず。
❓第3回キャラ文芸大賞にエントリーしました❓
よろしければ一票を入れてください!
よろしくお願いします。
お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……
ma-no
キャラ文芸
お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……
このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。
この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。
☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1日おきに1話更新中です。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』