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二章 逃亡生活
057 シモンの不安
しおりを挟むエルフの隠し砦で休んだシモンとプックは、目覚めると大きな背伸び。久し振りにベッドで寝たから、体も調子が良さそうだ。
このまま二度寝といきたい2人であったが、朝食が用意できたと呼ばれているから行くしかない。
食堂に入るとすでに料理が並び、ユドークスたちはワイワイと食べている姿が目に入った。シモンとプックは言われるままに席に着き、パクパク食べ始めると、ユドークスから声が掛かる。
「客人、ゆっくり休めたか?」
「ああ。ぐっすりだ」
「本当はもっと休ませてやりたいが、今日も頼まれてくれるか? というか、もうみんな出てしまったんやけど……」
「事後報告かよ」
「すんまへんな~。そのかわり、ここを家として使ってくれていいからな。お嬢さんには、鍛冶場を用意しておいたで。必要な物は言ってくれたらなんでも用意するからな」
「俺たちのこと囲い込もうとしてない??」
最初は和やかに話をしていたが、後半は気になるシモン。プックも逃げられないように物で釣ってるように聞こえたのか、激しく同意している。
食事を終えたら別行動。シモンは馬に乗って狩りに。プックは隠し砦の近くにある鍛冶場で鍛冶仕事。各々の仕事に精を出す。
この日の狩りも大猟。シモンはエルフたちから持て囃され、ユーチェにも絡み付かれて帰って来た。でも、隠し砦に入る時には、お父さんに引き離されていたよ。
夕食はそろそろできるらしいので、服のホコリを落としたらそのまま食堂へ。シモンはプックの隣に座った。
「今日も大猟やったらしいな~」
「ああ。52羽だ。そっちはどうだった?」
「やっぱりあーしもドワーフやねんな~。久し振りの鍛冶仕事は楽しかったわ」
「フッ。あんなに熱いところのどこがいいんだか」
「わかっとらんな~。火と鉄と音、全てが合わさると、酒が旨くなるってもんや」
「結局酒かよ」
機嫌のいいプックの話を楽しそうに聞くシモン。料理が並んでも話は続き、お腹いっぱいになったら温泉をいただく。
どうやらシモンたちのためにこの時間は空けているみたいだけど、2人は何も聞かされていないから知らない。
部屋に戻るとシモンたちのテント等が運び込まれていたので、エルフのメイドさんに感謝してドアを閉めた。
「それで。新しい望遠鏡はどんなの?」
「これや」
今日のプックの成果を発表。プックは望遠鏡と双眼鏡をシモンに手渡した。
「おっ……ほうほうほう……うん。狙いやすそう。特に真ん中がわかりやすくていいな」
「せやろ? それならあーしでも遠くの的を当てられそうや。あと、倍率も変えられるようにしておいたで。そこ捻ってみい」
「おお~。おっきくなった。すげっ」
さすがのデキに、シモンも脱帽。次は双眼鏡を覗いて見る。
「凄いな。両目で見てるのにさっきのと同じように見える。この双眼鏡も同じように印が入ってるけど、プック用ってこと?」
「いんや。不本意ながら、ユーチェ用や。同じように見えへんと、指示とか出せへんのやろ?」
「おお~。ありがとな。これで狩りやすくなる。アイツ、たまに変な言い方するから、わかりづらい時もあったんだ」
「せやろな~。やっぱ、シモンはんの相方はあーししか務まりまへんわ~」
ユーチェがミスが多いと聞けて、プックは上機嫌。しかし、プックがアサルトライフを整備して望遠鏡も交換している間にシモンが寝落ちしていたので、お約束のやり取りは今日も不発で終わるのであった。
翌日もエルフは休む気がないので、シモンは狩りへ。ただ、今日の岩山はおかしなことが続いている。
「また2羽だ。左から落とすぞ」
「はいっ!」
最初は望遠鏡のデキに感動していたシモンとユーチェであったが、ホーンホークが2羽で近付いて来ることが多いので気が抜けない。
下にいるエルフもこの数には対応が難しいので、村から援軍を呼んでいた。
「もう50羽だ。どうなってんだ?」
「ウチに聞かれても……でも、多いにこしたことはありまへんやろ」
昼過ぎには初日の収獲を越えたのでシモンは心配。ユーチェは楽観的に喜んでいる。
「いや、こんなに来られたら村が危ないぞ? 休むのが怖いほどだ」
「そうなん? ちょっとお父さんに聞いて来るどす~」
村に危機があると聞いて、ユーチェも危機感を持って相談。ひとまず今日はこのまま様子を見て、明日は血の臭いを撒き散らさないことに決定。
86羽のホーンホークを落としたら日が暮れたので帰宅。この日の村は大賑わいになっていたが、シモンの不安は大きくなるだけであった。
その翌日……
「昨日より増えてるぞ!」
「な、なんでや……血も用意していないのに……」
シモンの不安は的中。血で呼び寄せていないのに、朝から休みなくホーンホークが押し寄せているからてんてこ舞い。
多くて3羽を同時に相手することになり、かなり近くまでシモンに迫っている。
「やっぱり何かがおかしい……」
「おかしいって何がおかしいん?」
「俺たちは狩り過ぎて、ホーンホークを怒らせたのかも?」
「魔獣がそんなこと考えます?」
「じゃあ、この数はどう説明するんだ? チッ……来たぞ! 今度のは多い! 総員、もしもの接近戦に備えろ!!」
「「「「「おう!」」」」」
ユーチェと喋っていたら、ホーンホークは5羽も接近。遠距離でなんとか3羽落とし、残りの2羽はシモンが素早く撃ち落として事無きを得たのであった。
ホーンホークが止まったのは、日が暮れてから。結局、今日は156羽も狩って帰宅する。
もう辺りは暗いので、エルフが光魔法を使って岩山を下り、移動もその光頼り。全員クタクタで移動し、隊長のユドークスは隠れ砦に戻るなりコルネーリア女王の下へ走って行く。
シモンもクタクタなので、食事とお風呂をいただいたら、部屋に入るなりベッドに倒れた。
「じゃじゃ~ん! プーシー6号の完成や~!! ……アレ??」
プックはシモンの帰りを待っていたらしく、音が聞こえたら隠れていた場所から飛び出したけど、シモンの反応がないので残念な結果に。
「えっと……何がありましたん?」
「昨日の倍は来た……」
「そんなに? どうりでみんな、帰りが遅いと思ってたんや~……これ? プーシー6号、どう思う??」
「こっちはこっちで大変なんだぞ??」
プック、プーシー6号を見せた過ぎて、それ以外はどうでもいい模様。シモンが大変だと言っているのに、プーシー6号を早く見ろと押し付けるのであったとさ。
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