銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~

ma-no

文字の大きさ
57 / 92
二章 逃亡生活

057 シモンの不安

しおりを挟む

 エルフの隠し砦で休んだシモンとプックは、目覚めると大きな背伸び。久し振りにベッドで寝たから、体も調子が良さそうだ。
 このまま二度寝といきたい2人であったが、朝食が用意できたと呼ばれているから行くしかない。

 食堂に入るとすでに料理が並び、ユドークスたちはワイワイと食べている姿が目に入った。シモンとプックは言われるままに席に着き、パクパク食べ始めると、ユドークスから声が掛かる。

「客人、ゆっくり休めたか?」
「ああ。ぐっすりだ」
「本当はもっと休ませてやりたいが、今日も頼まれてくれるか? というか、もうみんな出てしまったんやけど……」
「事後報告かよ」
「すんまへんな~。そのかわり、ここを家として使ってくれていいからな。お嬢さんには、鍛冶場を用意しておいたで。必要な物は言ってくれたらなんでも用意するからな」
「俺たちのこと囲い込もうとしてない??」

 最初は和やかに話をしていたが、後半は気になるシモン。プックも逃げられないように物で釣ってるように聞こえたのか、激しく同意している。
 食事を終えたら別行動。シモンは馬に乗って狩りに。プックは隠し砦の近くにある鍛冶場で鍛冶仕事。各々の仕事に精を出す。

 この日の狩りも大猟。シモンはエルフたちから持てはやされ、ユーチェにも絡み付かれて帰って来た。でも、隠し砦に入る時には、お父さんに引き離されていたよ。
 夕食はそろそろできるらしいので、服のホコリを落としたらそのまま食堂へ。シモンはプックの隣に座った。

「今日も大猟やったらしいな~」
「ああ。52羽だ。そっちはどうだった?」
「やっぱりあーしもドワーフやねんな~。久し振りの鍛冶仕事は楽しかったわ」
「フッ。あんなに熱いところのどこがいいんだか」
「わかっとらんな~。火と鉄と音、全てが合わさると、酒が旨くなるってもんや」
「結局酒かよ」

 機嫌のいいプックの話を楽しそうに聞くシモン。料理が並んでも話は続き、お腹いっぱいになったら温泉をいただく。
 どうやらシモンたちのためにこの時間は空けているみたいだけど、2人は何も聞かされていないから知らない。

 部屋に戻るとシモンたちのテント等が運び込まれていたので、エルフのメイドさんに感謝してドアを閉めた。

「それで。新しい望遠鏡はどんなの?」
「これや」

 今日のプックの成果を発表。プックは望遠鏡と双眼鏡をシモンに手渡した。

「おっ……ほうほうほう……うん。狙いやすそう。特に真ん中がわかりやすくていいな」
「せやろ? それならあーしでも遠くの的を当てられそうや。あと、倍率も変えられるようにしておいたで。そこ捻ってみい」
「おお~。おっきくなった。すげっ」

 さすがのデキに、シモンも脱帽。次は双眼鏡を覗いて見る。

「凄いな。両目で見てるのにさっきのと同じように見える。この双眼鏡も同じように印が入ってるけど、プック用ってこと?」
「いんや。不本意ながら、ユーチェ用や。同じように見えへんと、指示とか出せへんのやろ?」
「おお~。ありがとな。これで狩りやすくなる。アイツ、たまに変な言い方するから、わかりづらい時もあったんだ」
「せやろな~。やっぱ、シモンはんの相方はあーししか務まりまへんわ~」

 ユーチェがミスが多いと聞けて、プックは上機嫌。しかし、プックがアサルトライフを整備して望遠鏡も交換している間にシモンが寝落ちしていたので、お約束のやり取りは今日も不発で終わるのであった。


 翌日もエルフは休む気がないので、シモンは狩りへ。ただ、今日の岩山はおかしなことが続いている。

「また2羽だ。左から落とすぞ」
「はいっ!」

 最初は望遠鏡のデキに感動していたシモンとユーチェであったが、ホーンホークが2羽で近付いて来ることが多いので気が抜けない。
 下にいるエルフもこの数には対応が難しいので、村から援軍を呼んでいた。

「もう50羽だ。どうなってんだ?」
「ウチに聞かれても……でも、多いにこしたことはありまへんやろ」

 昼過ぎには初日の収獲を越えたのでシモンは心配。ユーチェは楽観的に喜んでいる。

「いや、こんなに来られたら村が危ないぞ? 休むのが怖いほどだ」
「そうなん? ちょっとお父さんに聞いて来るどす~」

 村に危機があると聞いて、ユーチェも危機感を持って相談。ひとまず今日はこのまま様子を見て、明日は血の臭いを撒き散らさないことに決定。
 86羽のホーンホークを落としたら日が暮れたので帰宅。この日の村は大賑わいになっていたが、シモンの不安は大きくなるだけであった。


 その翌日……

「昨日より増えてるぞ!」
「な、なんでや……血も用意していないのに……」

 シモンの不安は的中。血で呼び寄せていないのに、朝から休みなくホーンホークが押し寄せているからてんてこ舞い。
 多くて3羽を同時に相手することになり、かなり近くまでシモンに迫っている。

「やっぱり何かがおかしい……」
「おかしいって何がおかしいん?」
「俺たちは狩り過ぎて、ホーンホークを怒らせたのかも?」
「魔獣がそんなこと考えます?」
「じゃあ、この数はどう説明するんだ? チッ……来たぞ! 今度のは多い! 総員、もしもの接近戦に備えろ!!」
「「「「「おう!」」」」」

 ユーチェと喋っていたら、ホーンホークは5羽も接近。遠距離でなんとか3羽落とし、残りの2羽はシモンが素早く撃ち落として事無きを得たのであった。


 ホーンホークが止まったのは、日が暮れてから。結局、今日は156羽も狩って帰宅する。
 もう辺りは暗いので、エルフが光魔法を使って岩山を下り、移動もその光頼り。全員クタクタで移動し、隊長のユドークスは隠れ砦に戻るなりコルネーリア女王の下へ走って行く。

 シモンもクタクタなので、食事とお風呂をいただいたら、部屋に入るなりベッドに倒れた。

「じゃじゃ~ん! プーシー6号の完成や~!! ……アレ??」

 プックはシモンの帰りを待っていたらしく、音が聞こえたら隠れていた場所から飛び出したけど、シモンの反応がないので残念な結果に。

「えっと……何がありましたん?」
「昨日の倍は来た……」
「そんなに? どうりでみんな、帰りが遅いと思ってたんや~……これ? プーシー6号、どう思う??」
「こっちはこっちで大変なんだぞ??」

 プック、プーシー6号を見せた過ぎて、それ以外はどうでもいい模様。シモンが大変だと言っているのに、プーシー6号を早く見ろと押し付けるのであったとさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...