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三章 パーティ活動
078 二度目のミノタウロスキング
しおりを挟む「おっき……ムッキムキ……こわっ。お漏らししそう……」
安全地帯を立ったプーシーユーは進撃し、早くも迷宮ボス部屋に到着。ユーチェは巨大なミノタウロスキングを見て、恐怖に震えている。
「ククク。どっかで聞いた台詞だな」
「あーしやろ? アレは冗談やん」
「ホンマか~?」
「無理してドワーフ弁使うなや」
「あ~! 2人でイチャイチャしてないでウチもかまってや~」
ユーチェの台詞がプックと似ていたから、シモンは軽く笑う。そのやり取りはプックに肩を叩かれてシモンが痛がっていただけなのに、ユーチェは勘違いして緊張は解れたみたいだ。
「さて……無駄話は……」
「ちょい待ち。ええもん作って来たんや~」
「もう待てないって! ユーチェ、撃て!!」
「あ、はい!」
「せっかちやな~」
ミノタウロスキングが動き出したのだから、待っている暇はない。シモンがユーチェに指示を出して、戦闘が始まる。
今回の戦い方は、ユーチェとシモンはアサルトライフルを使用。ユーチェがミノタウロスキングの胸を狙い、避け損ねたところをシモンがヘッドショットを決める作戦。前回シモンが1人でやっていたことを分担したのだ。
その作戦はまずまず。ユーチェが胸を狙い、シモンがミノタウロスキングの動きを先読みして撃つから、いまのところ一発も無駄弾がない。
「プック! そろそろ出番だぞ!!」
「わかってまんがな。もう準備終わっとるから、箱の交換の時にこっちきなっせ」
シモンとユーチェはミノタウロスキングから目を話せないので、プックの言葉を信じるしかない。
「なんかよくよくわからないげど、2、1、ゼロ!!」
「こっちこ~~~い!!」
「おっ」
「わ~」
攻撃役は交代。シモンの合図でプックがサブマシンガンを連射すると同時に、シモンとユーチェはプックの声が聞こえたほうに急ぐ。
「鉄製? これは安心感があるどすな~」
「感心するのはあとだ! 早く箱を入れ替えろ!!」
「あっ! はい!!」
プックの用意した物は、3人が並んで隠れられる分厚い鋼鉄製のシールド。土台は固定されて銃を置く溝もあるから、シールドから頭を出すだけで撃てる。
これは前回の戦闘を踏まえた物。その時はミノタウロスキングの灼熱炎を浴びそうになったので、プックはあったらいいと思って作ってくれていたのだ。
「ユーチェ、いけるか?」
「大丈夫どす!」
「じゃあ、もうじき代わるぞ。合図を待て」
プックの弾が切れるのに合わせて、ユーチェとシモンのコンビ撃ち。ここで少し喋る余裕ができたシモンは、弾倉を交換しているプックに話を振る。
「高さもみんなに合わせたんだな。すっげえ撃ちやすい。いつの間にこんなの作ってたんだ?」
「村におる時や。ええ鋼鉄とアイテム使ってるから、確実にミノタウロスキングのブレスを耐えられるで」
「へ、へ~……高かった?」
「鬼高い! ま、女王様払いやけどな」
「よかった~~~。あ、2、1……」
「ツッコミ待ってぇや~」
喋っていたら、プックの出番。サブマシンガンを連射しながら「ケチ~!」と叫んでる。シモンは弾倉交換していて聞いてないけど。
そうしてシモンたちの順番が来たら、またお喋りだ。
「プックの場所はかなり低いけど、それは大丈夫なのか?」
「ちゃんと考えとる。高さ調整できんねん」
「へ~。やっぱりプックはさすがだな~……そろそろ交代だな」
「忙しいわ。終わってから喋ろ」
いまは迷宮ボスとの戦闘中。この中で余裕があるのはシモンだけだから、プックの意見を尊重してシモンも集中するのであった。
今回のローテーションはユーチェがいるので、ミノタウロスキングの接近は遅い。これはアサルトライフルの威力が強いから、胸に当たってもそこそこのダメージになっているからだ。
その甲斐あって、前回よりHPの減りも早い。
「来た! ブレスだ! 頭を下げろ!!」
「はいっ!」
「これをこうして……」
「もう一発喰らえ!」
従ってミノタウロスキングの灼熱炎も早い。ユーチェはすぐに固定シールドの下に頭を隠し、プックはギミックを上げて固定してから。シモンはミノタウロスキングの大口に弾丸を御見舞いしてから潜り込んだ。
「おお~。ちょっと熱いくらいか?」
固定シールドの中は、石柱を盾にするよりは快適。シモンは感心してプックを見た。
「完全には熱は遮断できんな。もっととなると、ユーチェの風魔法を使ったらええんちゃう?」
「それええどすね。全員を包み込める【風の御守り】って魔法を使いましょか?」
「これぐらいならいらないだろ。それよりユーチェ、あと5発残っているけど、箱を替えとけ」
「ずっと思ってたんやけど、なんでウチらの残りまでわかるんどすか~」
「シモンはんは変態やと言うとるやろ」
「だから変態って言うのやめてくれない?」
無駄口を叩きながらもシモンとユーチェが弾倉交換をしたら、そろそろ灼熱炎が途切れる時間。シモンから頭を出してヘッドショットを決めたら、ユーチェも頭を出して続く。
そのまま2人で撃っていたらプックの出番は来ないまま、シモンのヘッドショットでトドメとなるのであった。
「うわ~。おっきいどすな~」
「せやろ? なのにシモンはん、ぜんぜん共感してくれへんねん」
ミノタウロスキングが沈むとシモンの足元に魔石が現れたので、ユーチェとプックは感動。若干悪口になっているから、シモンは話を変える。
「それよりこの盾ってすぐに片付けられるのか?」
「ちょっとは余韻、楽しまへん?」
「今回はいいけど、片付ける時間も計っておかないと、七層に行くとき困るだろ? 扉が閉じたらどうすんだ」
「へ~へ~。やりますよ~だ」
固定シールドを使ったのは初めてなので、シモンは慎重。プックはブーブー言いながらも、シモンたちも使って固定シールドを片付けるのであった。
「「か、固い……」」
「杭はあーしが抜くから、2人は収納バッグに入れえや」
「「重っ……」」
「あーしのジョブ、非戦闘員なんやけど……」
この中ではプックがパワーは一番。力仕事はプックがやって、シモンとユーチェは2人掛かりで固定シールドを片付けるのであったとさ。
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