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02 カーボエルテ王国 ハミナの町

013 買い物デート1

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 タピオがペコペコと謝り、冒険者ギルドの外に出た瞬間、中から弾けるような騒ぎ声が聞こえて来た。
 その声から逃げるように、タピオはイロナの手を引いて足早に歩く。

「怒っているのか?」

 一言も発っしないタピオに、イロナは不思議に思って質問する。

「いや、別に……あいつらが悪いと思うし……ただ、俺は目立ちたくないから、すぐに立ち去りたかったんだ」
「主殿は、徹底的に目立つことを避けるな。それほどの力があるのなら、主殿を止められる者は滅多にいないだろう」
「それでもだ。もう、誰かに目を付けられて騙されたくないんだ。イロナも、俺のやり方に合わせてくれ」

 タピオが苦しそうに胸の内を明かすと、イロナは渋々頷く。

「わかった。主殿の命令ならば仕方がない。だが、降りかかる火の粉は払わせてもらうぞ」
「いいけど……できれば逃げて欲しいんだが……」
「我に逃げろと……」

 失言でイロナの殺気が膨らみ、怖くなったタピオは言い直す。

「あ、いや……俺が守るから、イロナは何もしなくていいかな~?」
「守る……か。それもありか……」

 すると、イロナは意外な反応を見せて殺気が消えた。

「ど、どうした?」
「昔読んだ絵本を思い出してな……」

 イロナが子供の頃に読んだ絵本は、騎士にお姫様が守られるといった普通の女の子憧れのシチュエーション盛り盛り。ただ、普通の女の子ではないイロナは、まったく違う感想を抱いていたそうだ。

「騎士に守られなくても、自分で倒せばいいだろう? 我ならその騎士に決闘を挑むだろうな」
「ですよね~」

 イロナが子供の頃からの強者であったと知ったタピオは、それしか言えないらしい。

「でも、まぁ、実際に自分がされたらどうなるか、少しは興味が出た。我は主殿の所有物ゆえ、しかと守るのだぞ」
「はっ!」

 奴隷としての自覚があるイロナの偉そうな言葉にも、タピオは敬礼するしかなかったとさ。


「そういえば、デートとやらにも興味があったのだ。エスコートは任せる」
「デート??」

 話を変えたイロナの単語に、タピオは首を傾げる。なのでイロナは、タピオに握られている手を見せた。

「男と女が手を繋いで買い物なんかをすることを、デートというのではないのか?」
「あ! 悪い」

 ここでようやくタピオは、冒険者ギルドからずっとイロナの手を握っていたと気付いて「パッ」と手を離してしまった。

「何を謝る必要がある?」
「あ……そうか。そうだよな。俺が買ったんだった。でも、俺もデートなんてしたことがないから、どうしていいかわからない」
「ふむ。ならば、我が習ったデート術を伝授してやろう」
「お、お願いします」

 こうしてタピオとイロナは腕を組んで、楽しそうにデートを行うのであった。


 タピオはミッラが簡単に書いた地図を見ながら町を歩いていたが、脂汗が酷い。何やら変な声やギシギシと骨のきしむ音もタピオから出ている。

「ぐっ……ぎぎ……腕が千切れそうなんだが……」
「ん? 女は男の腕に胸を押し付けるものと習ったのだが……主殿も喜んでいたじゃないか」

 どうやらイロナのデート術は間違いではないが、タピオの防御力では防げないほどの締め付けでかなり痛く、二の腕から下が紫色になっている。
 しかし女の胸が当たっているので、タピオの股間はモッコリ。最初は嬉しくて我慢したこともあり、イロナに誤解されているのだ。

「もう少し、力を弱めて欲しいのだが……」
「我に手を抜けと……」

 性に対して何事にも全力投球なイロナの機嫌を損ねたと思ったタピオであったが、イロナの力がフッと抜けた。

「まぁこれは勝負ではないのだから、力を緩めてやろうじゃないか」

 イロナの基準はいまいちよくわからないが、血の巡りがよくなったタピオは、腕を切り落とす事態を免れたのであった。


 ようやくデートらしくなってイロナの胸の柔らかさを堪能したいタピオであったが、腕が痺れて感じ取れず。痺れが取れるか取れないかのところでイロナの知らない娯楽、プロレス小屋があったので少し観戦することとなった。
 そこでイロナは質問するのだが、ルールを聞いてもいまいち面白くないらしい。そりゃイロナからしたら、本気の戦闘ではないので興覚めなのであろう。もっと血で血を洗う戦闘を見たいと、早々にプロレス小屋から立ち去るのであった。

 短時間の寄り道でも腕の痺れが取れたヤルモ。イロナの胸の感触を楽しみながら歩き、目的地の服屋に辿り着くと入口ではタピオの筋肉が邪魔をして二人並んで入れなかったので、泣く泣くイロナを離れさせるタピオ。
 それから商品に目を通すのだが、二人とも何を買っていいのかわからないので、タピオは店主の女性に声を掛けてみる。

「このイロナに何か見繕って欲しいのだが、頼めるか?」
「あ、はい。予算はどれぐらいになりますか?」
「そうだな……特に決めていない。似合うヤツを頼む」
「おまかせあれ~~~!!」

 店主はいくらでも吹っ掛けられるバカが来たと、テンションアゲアゲ。しかし、イロナがまた銀貨を折り曲げて女店主を脅したのでサゲサゲ。
 仕方がないので、イロナの意見を聞きながら試着室にて着替えさせる。

「どうだ主殿?」

 試着には少し時間が掛かったので、タピオはその辺の服を見ていたら、イロナが試着室から出て来た。

「ぶほっ!!」

 イロナの服装は、紐状の水着。大事な所がギリギリ隠れているのみなので、免疫のないタピオは吹き出した。

「なんだその反応は……似合ってないのか?」
「いえ……その……似合ってます!」

 もちろん絶世の美女がそんな格好をしたならば、タピオは親指をビシッと立てて褒めるしかない。股間もビシッと立てて、購入も決めたのであったとさ。
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