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04 カーボエルテ王国 王都1
053 上級ダンジョン2(王都)
しおりを挟む上級ダンジョン地下10階。盾を前に構えたタピオはモンスターを撥ねながら全力疾走。後ろからイロナに剣でつつかれるので、速度を落とすこともできない。
モンスターを撥ね飛ばし、罠を蹴散らし、冒険者に変な目で見られ、ダンジョン内を爆走したら早くも地下20階のセーフティエリア。ようやくイロナから停止の指示が出て、休憩がもらえるようだ。
「急いで食って、勇者を追うぞ!」
いや、その時間ももったいないらしく、弁当を早く寄越せとイロナの鼻息が荒い。
「ちょっとは休ませてくれ。俺はイロナほど走るのが速くないんだ。頼む!!」
地下19階は敵もそこそこ強くなっていたので、スピードが落ちることが多かったから、タピオは何度も剣でつつかれてHPが減っている。
疲れよりも、このダメージを自然回復したいタピオ。必死にお願いして、なんとか一時間の休憩の許しが出た。
それからウサミミ亭のエイニから持たされた料理を広げて舌鼓を打つ二人。料理の美味しさで、イロナにも冷静さが戻って来たようだ。
「すまなかったな」
「ん?」
「少し熱くなっていたようだ。背中の傷は大丈夫か?」
「まぁなんとかな。それにしてもその剣、本当によく斬れるな。さっきもデカいモンスターを真っ二つにしていただろ」
「うむ。いい剣をくれた。感謝しているぞ」
珍しくイロナが気遣ってくれるので、タピオはむず痒くなって話を剣の話に変えた。だが、また感謝されて痒くなったのか、頭をポリポリ掻いていた。
「しかし、今日はここで夜営する予定だったけど、半日でここまで来るとはな。急げば、40階のセーフティエリアも今日中に辿り着けるかも?」
「主殿の予想では、勇者はいま、どの辺りにいると思う?」
「まぁそれなりに強いと思うから、俺たちと同じペースで進むんじゃないかな? 二日目の夜営予定地は、40階だ」
「ということは、もう背中が見えているということか」
「だな。宝箱を無視して進めば、ペースを落としても40階で追い付けるはずだ」
「ふむ……わかった。主殿のペースに合わせてやろう」
一時間の休憩が終われば、タピオは盾と剣を装備。イロナが早く勇者と会いたそうにしているので、多少目立っても本気を出すようだ。つつかれたくないから……
そうして地下21階に下りると、タピオを先頭にガンガン進む。イロナは新しい剣でモンスターを一撃で屠り、タピオは盾と剣だけでなく、壁も使って倒す。
タピオの攻撃力では一撃とはいかないが、吹っ飛ばして壁を使えば、一撃と似たような攻撃で倒せるようだ。
これにはイロナが感心していたので試そうとしていたが、切れ味のいい剣では不可能。タピオのように切れ味の悪い剣や、盾の打撃じゃないと無理のようだ。
なので、この攻撃は深い階層で強い敵で試すとのこと。イロナはタピオの攻撃を学ぶためにガン見しているので、タピオは自分が斬られるのではないかとひやひやしていた。
急ぎながらもドロップアイテムは拾い、他の冒険者がいたならば、タピオは剣を盾に隠してむちゃくちゃ振り回す。
そのせいで、武道家が拳を捨てて変なことをしていると受け取られていた。
地下30階を越えて順調に進んで行くが、35階で空腹が来たので、少しの休憩。どちらか片方が見張りをしつつ、腹に物を入れる。
タピオが食べている時にオーガジェネラルが寄って来たが、イロナに真っ二つにされて、若干タピオの食欲が減退していた。
日付が変わった頃に地下36階をクリアし、地下37階も中程まで進んだら先客が戦闘中で道を塞いでいたので、少し様子を見る二人。
「なんだあいつら。多すぎないか?」
先客は10人もの大所帯。普通のパーティは5人が限界なので、こちらに来て初めて見る人数だったから、イロナは不思議に思っている。
「ふたつのパーティが合同で進んでいるのかもな」
「この程度の敵に必要なかろう」
「トゥオネタル族はだろ? オーガジェネラルの群れなら人族の冒険者だと、上位パーティじゃないと楽に倒せないって」
「数で進んでいるくせに……遅い!」
タピオが先客の弁護をするが、イロナが苛立つだけ。なので、タピオは違う情報をイロナの頭に入れる。
「あいつらは冒険者じゃなくて、騎士かもしれない」
「騎士? 門とかにいる奴らのことか?」
「それそれ。鎧が立派だろ? 騎士は人との戦闘は得意だけど、モンスターは苦手なんだ。だから手間取ってるんだろう」
タピオの説明に納得するイロナだが、それでも疑問があるようだ。
「その騎士が、何故こんな所にいるのだ?」
「冒険者に依頼して訓練をしているとかかな? 冒険者っぽい装備の三人はいるし……」
タピオが指を差すとイロナは、若い女剣士、女修道士、魔法使いのようなネズミ耳老人を見ながら続きを聞く。
「でも、その場合は中級で依頼を出していたのは見たことがあるか」
「主殿でもわからないことがあるのだな」
「まぁな。でも、珍しい光景ってのはわかるぞ」
「ふむ……とか言ってるうちに……」
「とか言ってるうちに、じゃない! イロナ。行くぞ!!」
「おう!」
とか喋っているうちに、先客は絶体絶命。騎士の全員は倒れ、残りは冒険者っぽい出で立ちの女性二人と老人が一人だけ。
人との関わりを絶っているタピオであったが、目の前で死なれるのは気分がいいものではないので、慌てて走り出したのであった。
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