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04 カーボエルテ王国 王都1

061 スタンピード3

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 ドーン! ドカーン! ドンドン! ドッカーーーン!!

 タピオの肩から飛び出したロケット弾は、飛行モンスターに全弾命中。次々と墜落する。しかし飛行モンスターの数は多いので、煙幕を抜けて進んで来る。

「ファイアー」
『ファイアー』
「ファイアー」
『ファイアー』

 接近する飛行モンスターには、タピオの合図で機械音が復唱し、ロケット弾が飛び交う。

 パラパラパラパラ……

 それだけでなく、地上に落ちた生き残りの飛行モンスターには、タピオの指から機関銃掃射。右から左に薙ぎ払い、何往復とする。

 これこそ、職業『重戦車』の真骨頂。力や頑丈さだけが取り柄ではない。まさしく戦車のように……いや、戦車より強力な遠距離攻撃手段も搭載され、敵を薙ぎ払うのだ。
 場合によってはキャタピラで走りながらの移動式砲台にもなり、モンスターも撥ね飛ばすことができる、まさに重戦車。被弾を無視して走り回れるのだ。
 ただ、初めて使った際は装備していた鎧が弾け飛び、悲しい思いをしたタピオ。この変形のために、タピオの鎧は所々穴が開いているのだ。

 ドンドン! パラパラ! ドンドン!! パラパラ!!

 タピオが変形してから20分弱。全ての飛行モンスターは地面に落ちて、ダンジョンに吸収されるのであった。


「ゼェーゼェーゼェーゼェー」

 変形が解けた瞬間、タピオは息を切らして背中から倒れた。この変形はMPが減るだけでなく、スタミナも消費するようだ。

「主殿!」

 そこに、イロナが覆い被さるように顔を覗き込む。

「凄かったな!」
「はぁはぁ……変だっただろ?」
「いや、面白い!!」

 何故か興奮するイロナ。タピオの変形はイロナの目には面白い戦い方だと映ったようだ。
 それから息の整ったタピオは急いでドロップアイテムを拾うのだが、イロナがつきまとって質問するので答えるのが大変そう。
 そもそもタピオの職業はオンリーワンなので、詳しい使用がわからない。変形して機械音が出るぐらいしかわからないし、使ったのも十回もないので説明ができないのだ。

「ほう……爆発魔法が肩から出るのか」
「まぁその認識で間違いないと思う」
「他には何かないのか??」
「石つぶてみたいのが指から出るな。あとは……手から炎が出る」
「炎魔法か……他にもあるだろ?」
「……走るのがちょっと速くなる」
「まだありそうだな。全て教えろ!」
「俺もわからないんだって~」

 タピオはいまのところわかっていることを説明するが、イロナの質問は止まらない。ただ、言いたくないこともあるらしく、全てを話すことはなかった。


 ドロップアイテムを回収すると、階段に戻ってしばし休憩。タピオは珍しくMPポーションを飲んでいたので、イロナはまた質問する。

「そういえば、MPが早く減るとか言っていたな。主殿はどれぐらいMPがあるのだ?」
「HPと同じだけある。一万超えたぐらいだ」
「お~。我よりHPは高いぞ。それなら……」
「それならなんだ? 頼むからやめてくれよ??」

 タピオの失言。まさか自分のHPが、レベルが倍も離れているイロナより上だったとは気付かずいらぬ情報を与えてしまって寒気が走る。

「ま、いまはやめておいてやろう」
「いまだけでなく、ずっとやめてくれよ? な??」

 タピオは何をされるか多少はわかったらしくお願いするが、イロナからの返事はない。たぶん、地上に戻ったらボコられるのだろう……

「あの~……さっきのはなんだったの?」

 二人が話を弾ませていると、後ろから誰かに声を掛けられた。

「ゆ、勇者!? さっきの見てたのか!!」

 声を掛けた者は勇者クリスタ。自分の情報を知られたくないタピオは、振り向いた瞬間に怒鳴った。

「う、うん。二人だけで戦わせるのは悪くって……」
「はぁ~……ま、何もなかったけどな」
「それ、もう無理だと思うけど」

 全てを見ていたクリスタに対して、いまさら何もなかったととぼけるタピオ。もちろんクリスタには通じない。

「頼む! 頼むから忘れてくれ! ラスボスの魔石もタダでいいから!!」

 なので、情報を広められたくないタピオは土下座するしかない。

「い、言わないわよ! 私が弱いと知られるのも困るし……でも、さっきのは気になっているから教えてほしいんだけど」
「弱味を握り合うということか……」
「だから気になってるだけなんだって~」

 疑り深いタピオに、クリスタはたじたじ。どれだけ信用してくれと言っても通じないので、弱味の交換という形で教えてもらうのであった。


「変わった職業、か……」

 さっきクリスタに見られたことは説明したが、職業の重戦車は隠すタピオ。

「たぶんレア職業なんだと思うけど、俺もなり方はわからない。もうこれでいいだろ。上に戻れ」
「できれば、イロナさんのことも知りたいんだけど……」
「脅しというわけだ……」
「違うよ! 違うわよ? ……わかった。諦めるよ」

 どこまでも疑り深いタピオにクリスタは根負け。しかし、それでタピオも疑問に思うことができた。

「お前は、本当に勇者なのか??」
「どういうこと?」
「勇者ってのは理不尽なことを言うからな。それに、王女ってのも人を人として見ないじゃないか? そのふたつが揃っているのに、お前はまともに見える」
「えっと……つまり私は、そのふたつが合体した最悪の人間だと言いたいのかな?」
「うん」
「なっ……そこは思っていてもオブラートに包むとこでしょ!!」

 勇者と聖女を毛嫌いしているタピオでは、配慮するという言葉を知らない。そのせいでクリスタを怒らせてしまうのであったとさ。
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