宇宙の紳士と宇宙人

えいちふみひさ

文字の大きさ
16 / 18
淡い記憶と白い騎士

プロローグ

しおりを挟む
霧が深かった。ミハエルはアサルトライフルを構えて引き金を引いた。



弾にはレンキを籠めていた。



当たれば内側から爆発を起こし致命傷を与えるモノだった。



――当たればの話である。銃口から飛び出した六ミリ弾は狙った相手に当たることなく地に落ちた。



全ての弾が真っ二つに切られていた。



「お前はその程度なのか?違うだろう?貴様の武勇は聞いているぞこの程度で終わるはずがないだろう?さあ早く立ち上がれ俺にその全てをみせ――」



ミハエルはレンキを纏わせたナイフを抜き打ったが刃に止められた。



レンキ同士がぶつかり合うチリチリと鳴っていた。



ミハエルは絶望した。白い鎧が顔を近づけていった。



「残念だ……所詮この程度か……」



 刃が走った。ミハエルは袈裟斬りにされ、倒れた。



「安心しろ……殺しはしない。我が力になってもらう」



 白い騎士はそう言うとミハエルを担ぎ、歩き始めた。



「次は誰だ……」



白き騎士のその独白を聞いた者は居なかった。







「へぇっくしゅん!」



中央ギルド領域四十九番港街の一角にそびえたつ酒場『マックスボビー』のカウンター席で紳士服を纏ったキジヌ=サルモモールは、口を押えて大きなくしゃみをした。



「大丈夫かい」



キジヌの友人であるデイビット=モルデカイが気を使いながら、ポケットからティッシュを取り出し聞いた。



大丈夫だと答えてキジヌは自分のティッシュを取り出して、鼻をかんだ。



「随分準備が良いね。君らしくも無い」



「スリーがこういうのにうるさくてねちゃんと持ち歩く様にしているんだ」



「うるさくて悪かったな」



 キジヌの動きがピタリと止まった。縫い傷まみれの少女、スリーが後ろに立っていた。



「これは誤解だスリー」



「やぁスリー元気だったかい?」



「おかげさまで。デイビットさんも元気かい」



「最近は妙に忙しくてね。疲れが中々取れないんだ」



「もしかして最近流行りのレンキ使い狩りかい?」



「ああそうなんだ。どうにも犯人は白い騎士だという事は分かっているんだがね」



 デイビットは中央ギルド領域内の全域刑事である。



全域刑事とは名の通り中央ギルド領域内全域の猟奇的な犯罪を担当する刑事である。



最近巷を賑わせているレンキ使いを標的とした誘拐事件に携わっていた。



「しかしレンキ使いを狙うなんて妙だな。」



「あぁ力を誇示するならばレンキ使いである必要が無いからね。かといってなんらかに固執しているにしては被害者の能力があまりにも一貫性がないんだよね」



 レンキ使いは宇宙に存在する能力者の八割にも当たる数がいる。



そんなレンキ使いを狙うのは理由としては余りにも薄かった。



なおかつ被害者の能力に共通点が薄かったのである。



「まぁ、キジヌも気を付けてくれよっとまた通信だ」



「またかい?」



「恐らく、とにかく気を付けてくれ。星越者級もやられているからね」



「今日は私が奢ろう」



 キジヌのやさしさに済まないと返しながらデイビットは走って行ってしまった。





「……スリーも何か飲むかい?」



「……オレンジジュース」



デイビットが座っていた椅子に座りスリーは答えた。



「しかしもう二ヶ月も続いてるんだろ。冗談抜きでボスも狙われるんじゃねえか?」



「そうじゃなければよいがね」



 そう言うとキジヌはウィスキーを飲みほした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...