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1. 森崎 結衣と悟

春の声がする

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「極めて難解だ。どうしてくれよう。」
会社の同僚である圭太は頭を抱え悩んでいた。


「何をそんなに悩むの?」
まるで幼い子供のように悟は、ストンと言葉を投げかけた。

所謂、恋愛の悩みってやつだ。
28にもなって、恋愛で頭を抱える圭太の様子を少し面白がって見ている悟。
励ましを込めて缶コーヒーを手渡した。


「あーーー、もうだめだ。俺の彼女さ、男グセが悪すぎるんだよ。ひどいと思わないか?俺がいるのにさ
他の男と出かけたりしてんだぜ。」




「うーーん、よくわかんないけど別れたらいいんじゃないか?だって辛いんだろ?」




"残念不正解"

この場でこの回答はもはやテンプレの間違いであることに
悟は気づいてなかった。


ここでの正解はきっとこうだ
「おい、大丈夫か?話聞くぜ。今晩飲みでも行くか?」
とまぁ、こんな感じだろう。


さて、不正解を投げかけられた圭太はどうなることだろう。


「あーーもうーーそんな簡単なことじゃないんだ!!悟にはわかるわけないよな。」







そうだ、この物語の主人公・林田 悟は
28歳・A型・山羊座・180センチ・容姿は◎
しかしちょっと訳ありな男性だ。


その訳ありな部分とは。


”恋愛にあまり興味がない”


そう大事なのは、”あまり興味がない”ということだ。
多少の性欲と寂しさは感じつつも、付き合うということへの憧れがないのである。




そんなこんなで、同僚の恋愛話になんか上手に合わせることもできない
悟は、いつも変わらぬ日々を過ごしている。



「おーい、悟!圭太!」

遠くから聞こえてきたのは、もう一人の同僚である英二だった。


「なあ、英二聞いてくれよ。悟がさ、他人事だと思って俺の話ちゃんと聞いてくれねえんだよ。」

「いや、聞いてるよ!俺は思ったこと言ったまでだよ!」


そんな言い合いを始めたと思うや否や、英二がその場を収めた。

「まあまあ、落ち着けよ。てかさ、悟。お前さ彼女いなかったよな。」

「うん。いないよ。なんか大変そうだし。圭太見てる限りね。」

「なんだ、英二まさか。悟に女でも紹介するのか?」

さっきまでとは、打って変わって圭太は
面白がって話を続けさせた。


英二の急な話ではあったが
悟は断る理由もなく、紹介してもらうことにした。




怒涛の勢いで決まった、女性を紹介してもらうという状況に、まだ
現実味を帯びていない悟は、帰り道なんだか気が抜けたように夕日に誘われて
歩いていた。



遠くで聞こえてくる声をおぼろげに聞きながら
春の夕暮れを眺めながら歩く。


「私ね、次付き合う人とは絶対遊園地行ってカチューシャとかつけていっぱい写真撮りたいの!」

「あんた、めっちゃ恋に恋してんじゃん。」

「そんなことないよー!ちゃんと相手のこと好きになるよ!」

「そりゃ、どーだか。」



遊園地にカチューシャ、写真撮ったらSNSか。と
悟は脳内で想像し、静かに首を横に振った。


「いろんな恋愛があるんやな。」
そう静かに言葉を吐いた悟は、帰路を急いだ。


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