58 / 552
ダンジョンからの脱出
第58話 ミリアのダンジョン配信
しおりを挟む
ミリアはダンジョンデバイスを物欲しそうに眺めていた。
――それがあると人気になれるんだ。
――完全魅了なんて使わなくても、みんなに好きになってもらえる。
――ミリアもダンジョンデバイス、ほしいな……
こんな発言をミリアはしていたが、私ももりもりさんも特に気には留めていなかった。それよりも、218階層の戦いは連日にわたり、とても疲れていた。
相変わらず元気なのはミリアだけで、寝る時間になると私は完全に熟睡していた。ミリアも寝るようだが、私たちよりも睡眠時間は短い。昨日はずっと起きていたようで、ダンジョンデバイスを通して視聴者たちとずっとおしゃべりをしていた。
私はそのおしゃべりを聞きながら寝落ちしていた。ダンジョンは洞窟なので時間がわからない。
デバイスのタイマーを目覚まし時計にセットしていたのだが。
「春菜さん、春菜さん。起きてください」
起こされたのはもりもりさんに揺さぶられたからだ。
私は少し寝ぼけながら「ふわー」っと大きく欠伸をした。
いつものタイマーとは違って、もりもりさんに起こされる。
「ミリアがいなくなりました」
「え!? は?」
「これを見てください」
見せてきたのはもりもりさんのデバイスだ。そこにはダンジョン配信の映像が映っている。
「春菜さんのチャンネルでミリアがダンジョン配信を行っているようです」
「へー、なんか盛り上がってるし。人気だね」
「でも、視聴者に対して完全魅了のスキルを使われてしまうと大変なことになります」
「大丈夫だと思うけれど」
私は呑気に応える。
「ミリアは私たちからはだいぶ離れてしまっているんです」
「本当ですね。かなりダンジョンの奥の方へ行っちゃってますね。でも、周囲にモンスターはいないですし、視聴者のリクエストで歌を歌ったりしていますし。なんだか、ミリア。アイドルになれそうですね」
「いいんですかね? これで」
「念の為、もりもりさんのデバイスから遠隔ロックができるようにしておきましょうか」
「そうですね、念の為……」
ダンジョンデバイスは遠隔ロックやデータの消去もできる。これはデバイスを失くしたり奪われたときのためだ。そのためにはネットに接続できる環境が必要だ。
リビングデッドに奪われた時はなにもできなかったが、今はもりもりさんのデバイスがある。
おそらくミリアは徹夜で配信をして、そのまま視聴者にそそのかされて出かけてしまったのだろう。
ミリアの居場所はもりもりさんのマッピングアプリで把握できている。青いドットの表示がミリアの場所だ。
今いる場所からは少し離れてしまっているが、ミリアはそこからは動いていない。それに配信の様子はもりもりさんのデバイスで動画を見ることができているから問題はなさそうだった。
ミリアはモンスターと戦うわけでもなく、視聴者たちとおしゃべりをしたり、質問に答えたり、流行の歌を教えてもらってそれをミリアが歌うなどしているようだ。
ミリアの舌足らずな声で歌う歌は上手くはないのにどこか惹かれてしまう可愛らしい声で、視聴者からも人気だった。
「ミリアは才能があるかも。私よりも人気者になれそう。でも、デバイスをあげるわけにはいかないしなあ」
「もうすぐこの階層の攻略も終わりますし、そうしたらお別れですね」
「ミリアに会えなくなるのはちょっと寂しいかな」
私ともりもりさんは食事をし、それからゆっくりとミリアのところへ行くつもりだった。ミリアのダンジョン配信はそのまま流しっぱなしになっていたが、見ている配信に違和感を抱いたのが出発しようと準備を始めた頃だった。
「春菜さん、私たちが見ているこれ。ライブ映像ではありません」
「本当ですね。これはアーカイブです」
アーカイブとはサーバーに保存された過去の映像のことだ。最初にミリアがいなくなったことに気がついた時に開いたのはライブ映像だった。
そこから、ダンジョンデバイスを持ち出したところを確認するために、巻き戻してそのまま見続けてしまったために、ライブ映像とのずれがあった。
つまり今見ているこの映像は少し前のものだ。
楽しそうにおしゃべりをしたり歌を歌うミリア。
これは過去のミリアだ。
――それがあると人気になれるんだ。
――完全魅了なんて使わなくても、みんなに好きになってもらえる。
――ミリアもダンジョンデバイス、ほしいな……
こんな発言をミリアはしていたが、私ももりもりさんも特に気には留めていなかった。それよりも、218階層の戦いは連日にわたり、とても疲れていた。
相変わらず元気なのはミリアだけで、寝る時間になると私は完全に熟睡していた。ミリアも寝るようだが、私たちよりも睡眠時間は短い。昨日はずっと起きていたようで、ダンジョンデバイスを通して視聴者たちとずっとおしゃべりをしていた。
私はそのおしゃべりを聞きながら寝落ちしていた。ダンジョンは洞窟なので時間がわからない。
デバイスのタイマーを目覚まし時計にセットしていたのだが。
「春菜さん、春菜さん。起きてください」
起こされたのはもりもりさんに揺さぶられたからだ。
私は少し寝ぼけながら「ふわー」っと大きく欠伸をした。
いつものタイマーとは違って、もりもりさんに起こされる。
「ミリアがいなくなりました」
「え!? は?」
「これを見てください」
見せてきたのはもりもりさんのデバイスだ。そこにはダンジョン配信の映像が映っている。
「春菜さんのチャンネルでミリアがダンジョン配信を行っているようです」
「へー、なんか盛り上がってるし。人気だね」
「でも、視聴者に対して完全魅了のスキルを使われてしまうと大変なことになります」
「大丈夫だと思うけれど」
私は呑気に応える。
「ミリアは私たちからはだいぶ離れてしまっているんです」
「本当ですね。かなりダンジョンの奥の方へ行っちゃってますね。でも、周囲にモンスターはいないですし、視聴者のリクエストで歌を歌ったりしていますし。なんだか、ミリア。アイドルになれそうですね」
「いいんですかね? これで」
「念の為、もりもりさんのデバイスから遠隔ロックができるようにしておきましょうか」
「そうですね、念の為……」
ダンジョンデバイスは遠隔ロックやデータの消去もできる。これはデバイスを失くしたり奪われたときのためだ。そのためにはネットに接続できる環境が必要だ。
リビングデッドに奪われた時はなにもできなかったが、今はもりもりさんのデバイスがある。
おそらくミリアは徹夜で配信をして、そのまま視聴者にそそのかされて出かけてしまったのだろう。
ミリアの居場所はもりもりさんのマッピングアプリで把握できている。青いドットの表示がミリアの場所だ。
今いる場所からは少し離れてしまっているが、ミリアはそこからは動いていない。それに配信の様子はもりもりさんのデバイスで動画を見ることができているから問題はなさそうだった。
ミリアはモンスターと戦うわけでもなく、視聴者たちとおしゃべりをしたり、質問に答えたり、流行の歌を教えてもらってそれをミリアが歌うなどしているようだ。
ミリアの舌足らずな声で歌う歌は上手くはないのにどこか惹かれてしまう可愛らしい声で、視聴者からも人気だった。
「ミリアは才能があるかも。私よりも人気者になれそう。でも、デバイスをあげるわけにはいかないしなあ」
「もうすぐこの階層の攻略も終わりますし、そうしたらお別れですね」
「ミリアに会えなくなるのはちょっと寂しいかな」
私ともりもりさんは食事をし、それからゆっくりとミリアのところへ行くつもりだった。ミリアのダンジョン配信はそのまま流しっぱなしになっていたが、見ている配信に違和感を抱いたのが出発しようと準備を始めた頃だった。
「春菜さん、私たちが見ているこれ。ライブ映像ではありません」
「本当ですね。これはアーカイブです」
アーカイブとはサーバーに保存された過去の映像のことだ。最初にミリアがいなくなったことに気がついた時に開いたのはライブ映像だった。
そこから、ダンジョンデバイスを持ち出したところを確認するために、巻き戻してそのまま見続けてしまったために、ライブ映像とのずれがあった。
つまり今見ているこの映像は少し前のものだ。
楽しそうにおしゃべりをしたり歌を歌うミリア。
これは過去のミリアだ。
55
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる