264 / 552
大統領の依頼
第264話 伸びてくるツタ
しおりを挟む
春日井君は次々にMP回復ポーションを飲ませてくる。小瓶に入ったポーションは青い液体だ。私は両手が塞がっているので、哺乳瓶のように咥えることになる。
「まるで赤ちゃんにミルクをやっているみたいだ」
「湊と代わってよ……」
飲みながら喋ったので、青い液体が口からこぼれた。
「南波は忙しいんだよ。リゾルブ処理とやらも、魔法と一緒で集中力がいるんだろう」
「わたし、だって、ぼほっぇ、集中力が、べほぉっ、いるんだよっ」
「飲みながら喋るな」
私が飛ばした雫が春日井君の頬にかかる。それでも嫌な顔もせず、次のポーションを実体化させていた。
「俺のは残り30本。念の為、買っておいてよかったよ」
「これって、低級ポーションでしょ? 回復量が少ないからがぶ飲みしないといけない」
「文句言うなって」
「私のポーションを使ってよ。そうすれば、もっと飲む回数が減る」
「両手が塞がってるじゃねえかよ」
「春日井君にちょっとだけ我慢してもらえば……」
「やだよ。俺のポーションがなくなるまではこれを飲めよ」
「別に死ぬわけじゃないんだし」
「いや、死ぬし」
「さっきの苦しかった?」
「今だって苦しいままだ。首が絞まった状態なんだから。見えない手で首を絞められているのを想像してみろ。そんな感じだ」
「見えない手、ねえ……」
私は湊ちゃんのスマホを覗き込む。リゾルブは残り1分を切っていた。これでボスを倒す糸口や呪いを解除するきっかけが掴めるといいのだが。
「とりあえず、私のMPは少し余裕ができた。しばらくは保つよ。あとは湊の……」
その時だった。
中央の大木から何かが飛んできた。
私はとっさに魔法を発動させる。
「――金属身体!」
金属身体は体の一部を金属化することができる。自分の両手を鋼鉄に変え、強い磁力を帯びさせる。
湊ちゃんの新王の鎧、春日井君のミスリルの鎧にも磁力を発生させ、そのまま3人で後方へと飛んだ。
「攻撃か!?」
春日井君が叫びながら、周囲を見回す。
私の両手は2人の胸にぴたりと張り付いている。ちょっとやそっとでは外れないはずだ。
「とりあえず、湊はリゾルブ作業を続けて。私と春日井君で……」
私の言葉を待たず、春日井君は私と湊ちゃんをいっしょに抱きかかえて走り出した。
「筑紫は何もできねえだろうが。そのまま酸素供給を続けてくれ。とにかくこの場を離れるんだ」
腰に強い力が加わる。
「変なとこ触らないでね!」
私の訴えに、春日井君は一言だけ返してくる。
「知るか!」
その直後、湊ちゃんが黄色い声を上げた。
「今、お尻触った!?」
「触ってねえ!!」
耳がつんざくほどの大きな声で春日井君は否定した。
飛んできたのはツタだった。ツタがムチのように何本も飛んできて襲ってきたのだ。そのツタが湊ちゃんのお尻を直撃していた。
「湊のお尻を叩いたのはイビル・プラントだよ!」
「エッチ!」
おそらくイビル・プラントは湊ちゃんのリゾルブを邪魔しようとしているのだろう。
次々と私たちを襲うためにツタが飛んでくる。春日井君は一生懸命に走っているが、2人を抱えていた。どうしても遅くなる。
ツタが湊ちゃんの左足首に巻き付いた。
「あ! 足に!」
「ブーツを捨てて!」
湊ちゃんはブーツを脱ぐのをためらったが、私は蹴り上げて脱がせた。
新王のブーツはツタが巻き取って持っていってしまった。
「春菜のお兄さんから借りているのに……!」
「あとで、取り返せばいいって! 今はリゾルブの完了が優先!」
「ごめん、残り90秒。今ので30秒ロスした!」
「仕方ないよ。とにかく、今は逃げよう!」
視界が一瞬真っ暗になり、直後、判断ミスだと悟った。
違う……。そうじゃない…………。
「春日井君、止まって!!」
私の叫びに、春日井君は即座に従った。
「どうした!?」
私は顔から血の気が引く思いで声を絞り出した。
「2人の首が落ちるビジョンが見えた……。ダンジョンシミュレータは記憶が残らないのに……」
2人は呪いで首を絞められた状態だが、つい、手で首を絞めている姿を想像していた。
そうではなかった。
それは金属の首輪のようなものかもしれない。
湊ちゃんが神王装備の空間収縮を使ったら大惨事になっていただろう。
首輪をした状態で強い力が加わったらどうなるのか? ギロチンのように首が切断される。
逃げてはだめなのだ。
ボスに立ち向かわなくては……。
立ち向かわなくてはならない……。
「ごめん、本当に。2人を巻き込んだことを深く後悔してる」
「もう、それはいい。倒すしか道はないんだ」
「そうだよ、春菜。気持ちだけは落とさないでいこう」
ボスはわざと私たちが逃げるように仕組んだ。
一手を間違えるだけで窮地に陥るとタブさんは言った。窮地どころではない。2人を永遠に失ってしまうところだった。
今なお、私は両手が塞がったままだ。
この状況であっても、私たちはボスを倒さなければならなかった。
「まるで赤ちゃんにミルクをやっているみたいだ」
「湊と代わってよ……」
飲みながら喋ったので、青い液体が口からこぼれた。
「南波は忙しいんだよ。リゾルブ処理とやらも、魔法と一緒で集中力がいるんだろう」
「わたし、だって、ぼほっぇ、集中力が、べほぉっ、いるんだよっ」
「飲みながら喋るな」
私が飛ばした雫が春日井君の頬にかかる。それでも嫌な顔もせず、次のポーションを実体化させていた。
「俺のは残り30本。念の為、買っておいてよかったよ」
「これって、低級ポーションでしょ? 回復量が少ないからがぶ飲みしないといけない」
「文句言うなって」
「私のポーションを使ってよ。そうすれば、もっと飲む回数が減る」
「両手が塞がってるじゃねえかよ」
「春日井君にちょっとだけ我慢してもらえば……」
「やだよ。俺のポーションがなくなるまではこれを飲めよ」
「別に死ぬわけじゃないんだし」
「いや、死ぬし」
「さっきの苦しかった?」
「今だって苦しいままだ。首が絞まった状態なんだから。見えない手で首を絞められているのを想像してみろ。そんな感じだ」
「見えない手、ねえ……」
私は湊ちゃんのスマホを覗き込む。リゾルブは残り1分を切っていた。これでボスを倒す糸口や呪いを解除するきっかけが掴めるといいのだが。
「とりあえず、私のMPは少し余裕ができた。しばらくは保つよ。あとは湊の……」
その時だった。
中央の大木から何かが飛んできた。
私はとっさに魔法を発動させる。
「――金属身体!」
金属身体は体の一部を金属化することができる。自分の両手を鋼鉄に変え、強い磁力を帯びさせる。
湊ちゃんの新王の鎧、春日井君のミスリルの鎧にも磁力を発生させ、そのまま3人で後方へと飛んだ。
「攻撃か!?」
春日井君が叫びながら、周囲を見回す。
私の両手は2人の胸にぴたりと張り付いている。ちょっとやそっとでは外れないはずだ。
「とりあえず、湊はリゾルブ作業を続けて。私と春日井君で……」
私の言葉を待たず、春日井君は私と湊ちゃんをいっしょに抱きかかえて走り出した。
「筑紫は何もできねえだろうが。そのまま酸素供給を続けてくれ。とにかくこの場を離れるんだ」
腰に強い力が加わる。
「変なとこ触らないでね!」
私の訴えに、春日井君は一言だけ返してくる。
「知るか!」
その直後、湊ちゃんが黄色い声を上げた。
「今、お尻触った!?」
「触ってねえ!!」
耳がつんざくほどの大きな声で春日井君は否定した。
飛んできたのはツタだった。ツタがムチのように何本も飛んできて襲ってきたのだ。そのツタが湊ちゃんのお尻を直撃していた。
「湊のお尻を叩いたのはイビル・プラントだよ!」
「エッチ!」
おそらくイビル・プラントは湊ちゃんのリゾルブを邪魔しようとしているのだろう。
次々と私たちを襲うためにツタが飛んでくる。春日井君は一生懸命に走っているが、2人を抱えていた。どうしても遅くなる。
ツタが湊ちゃんの左足首に巻き付いた。
「あ! 足に!」
「ブーツを捨てて!」
湊ちゃんはブーツを脱ぐのをためらったが、私は蹴り上げて脱がせた。
新王のブーツはツタが巻き取って持っていってしまった。
「春菜のお兄さんから借りているのに……!」
「あとで、取り返せばいいって! 今はリゾルブの完了が優先!」
「ごめん、残り90秒。今ので30秒ロスした!」
「仕方ないよ。とにかく、今は逃げよう!」
視界が一瞬真っ暗になり、直後、判断ミスだと悟った。
違う……。そうじゃない…………。
「春日井君、止まって!!」
私の叫びに、春日井君は即座に従った。
「どうした!?」
私は顔から血の気が引く思いで声を絞り出した。
「2人の首が落ちるビジョンが見えた……。ダンジョンシミュレータは記憶が残らないのに……」
2人は呪いで首を絞められた状態だが、つい、手で首を絞めている姿を想像していた。
そうではなかった。
それは金属の首輪のようなものかもしれない。
湊ちゃんが神王装備の空間収縮を使ったら大惨事になっていただろう。
首輪をした状態で強い力が加わったらどうなるのか? ギロチンのように首が切断される。
逃げてはだめなのだ。
ボスに立ち向かわなくては……。
立ち向かわなくてはならない……。
「ごめん、本当に。2人を巻き込んだことを深く後悔してる」
「もう、それはいい。倒すしか道はないんだ」
「そうだよ、春菜。気持ちだけは落とさないでいこう」
ボスはわざと私たちが逃げるように仕組んだ。
一手を間違えるだけで窮地に陥るとタブさんは言った。窮地どころではない。2人を永遠に失ってしまうところだった。
今なお、私は両手が塞がったままだ。
この状況であっても、私たちはボスを倒さなければならなかった。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる