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24.お母様と交流
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ダンスタイムが終わると、次は交流タイムです。
交流タイムは特に誰と話すかは決まっていません。
当日、交流希望者を募り、主役が了解した方のみと交流をします。
「セシル様との交流希望者はこちらです。」
護衛に就いていた白騎士団の騎士からリストを渡されました。
お母様の名前があります。後は……殿下のファンらしき令嬢方……マリー様!?
ギュッと心臓が締め付けられる思いがしました。
気が付きませんでしたが、おそらくワグナーと一緒に来ているのでしょう。
取り敢えず置いておいて、先ずはお母様と交流しましょう。
「セシル、元気そうで良かったわ。」
「お母様も元気そうで何よりです。お父様や、お兄様も。」
「そうね。相変わらずよ。」
何事も無い。それが一番です。
「王宮の生活はどう?殿下とはうまくやれているの?」
お母様が心配そうに聞いて来ました。
初日から殿下の私室で生活して、既に同じ部屋で寝ているなんて、とても言えません。
「……はい、殿下はとても親切で、色々と教えて下さいますので、助かっています。」
そう、殿下は絶対に知られてはならないような秘匿事項まで、望んでもいないのに何でも教えて下さいます。
意味が分からなくて質問すれば、丁寧に説明もしてくださいます。
うっかり質問しなければ良かったと後悔するのですが。
「それに、王家の方々も私を受け入れて下さって、今日は緊張していたのですが、皆さんが励まして下さいました。」
会場入りする前、王家の皆さんが順番に背中を撫でてくれた事を思い出して、ほっこりしました。
「あら、思ったより幸せそうで良かったわ。王妃様のお陰ね。」
お母様は王妃殿下に視線を向けて、嬉しそうに微笑んでいます。
「お母様は王妃殿下とお友達だったのですね。ロイ先生から聞きました。」
「結婚して身分は変わってしまったけれど、今でも大切な友人だと思っているわ。」
お母様は元々公爵家の生まれですが、伯爵家の嫡男だったお父様と結婚したので、今は伯爵婦人です。
「私は友達とは何か、分からなくなってしまいました。」
「マリー嬢の事ね。」
お母様に言われて、頷きました。
「実は私と王妃様は国王陛下の妃候補で、お互いライバルだったの。でも、マンセン様は本当に国王陛下を愛していらしたから、私は身を引いて、後で本当に愛する今の夫に出会ったのよ。」
「お母様、それは惚気話ですか?」
お母様はクスリと笑いました。
「ねぇ、セシル、貴族は政略結婚が常識だけど、愛も必要よ。あの二人がした事は最低だし、セシルは何も悪くない。ただ、マリー嬢は寝取るほどワグナーと一緒になりたかった。それをセシルは長い間、一緒にいた筈なのに気付かなかった。何故かしらね。」
首を傾げて私の顔を見詰めるお母様に、居心地の悪さを感じて視線を逸らしました。
「それが分かるなら、こんな結果にはなっていません。」
ふわりとお母様が優しく手を握ってくれました。
幼い頃、私が辛い思いをした時、お母様の柔らかくて温かい手は、いつも元気づけてくれました。
私が成長して、お母様と同じ位の手になっても、やっぱり私はお母様の温もりに元気づけられるのです。
「マリー嬢は交流の申し込みをしていたわ。今日を逃せば、気楽に話せる機会は、もう来ないわよ。」
お母様の言うように、婚約を機に私は王宮暮らしとなり、家族でさえも王宮外の方達とは簡単に会えません。
そんな中、婚約披露パーティは唯一、希望者と交流が許される機会なのです。
「セシルにとって、良い事か、悪い事かは分からないけれど、マリー嬢は伝えたい事があるのでしょう。喧嘩になっても傷ついても、勇気を出して貴女の本当の気持ちを伝えなさい。」
「本当の気持ちと言われても、私は嘘をついていたつもりはありません。伝える事なんて、特に浮かばないのです。」
俯く私に、お母様がポンポンと優しく手を撫でてくれます。
「どうして、何も言ってくれなかったの?とかで良いのよ。そう思わなかった?」
「……思いました。凄く。」
「ワグナーの事、いつから好きだったの?って聞いた?」
「いえ、聞いていません。」
「分からない事や、気になる事は直接聞けば良いのよ。それは喧嘩ではないわ。相手の気持ちを知れて、自分の気持ちを確認する作業でもあるのよ。その相手と友人として付き合いたいかは、その後考えれば良いの。」
自分の気持ちと言われると、ピンと来ませんが、気になる事なら幾らでも浮かんできます。
建国祭の時、私はマリー様やワグナーに、もっと色々聞くべきだったのかもしれません。とは言え、あの時は冷静さを保つのが精一杯だったので、そんな余裕はありませんでした。
今ならば冷静に話が出来そうです。
お母様に勇気を貰って別れた後、護衛騎士に伝えました。
「次の交流は、子爵家のマリー様に致します。」
交流タイムは特に誰と話すかは決まっていません。
当日、交流希望者を募り、主役が了解した方のみと交流をします。
「セシル様との交流希望者はこちらです。」
護衛に就いていた白騎士団の騎士からリストを渡されました。
お母様の名前があります。後は……殿下のファンらしき令嬢方……マリー様!?
ギュッと心臓が締め付けられる思いがしました。
気が付きませんでしたが、おそらくワグナーと一緒に来ているのでしょう。
取り敢えず置いておいて、先ずはお母様と交流しましょう。
「セシル、元気そうで良かったわ。」
「お母様も元気そうで何よりです。お父様や、お兄様も。」
「そうね。相変わらずよ。」
何事も無い。それが一番です。
「王宮の生活はどう?殿下とはうまくやれているの?」
お母様が心配そうに聞いて来ました。
初日から殿下の私室で生活して、既に同じ部屋で寝ているなんて、とても言えません。
「……はい、殿下はとても親切で、色々と教えて下さいますので、助かっています。」
そう、殿下は絶対に知られてはならないような秘匿事項まで、望んでもいないのに何でも教えて下さいます。
意味が分からなくて質問すれば、丁寧に説明もしてくださいます。
うっかり質問しなければ良かったと後悔するのですが。
「それに、王家の方々も私を受け入れて下さって、今日は緊張していたのですが、皆さんが励まして下さいました。」
会場入りする前、王家の皆さんが順番に背中を撫でてくれた事を思い出して、ほっこりしました。
「あら、思ったより幸せそうで良かったわ。王妃様のお陰ね。」
お母様は王妃殿下に視線を向けて、嬉しそうに微笑んでいます。
「お母様は王妃殿下とお友達だったのですね。ロイ先生から聞きました。」
「結婚して身分は変わってしまったけれど、今でも大切な友人だと思っているわ。」
お母様は元々公爵家の生まれですが、伯爵家の嫡男だったお父様と結婚したので、今は伯爵婦人です。
「私は友達とは何か、分からなくなってしまいました。」
「マリー嬢の事ね。」
お母様に言われて、頷きました。
「実は私と王妃様は国王陛下の妃候補で、お互いライバルだったの。でも、マンセン様は本当に国王陛下を愛していらしたから、私は身を引いて、後で本当に愛する今の夫に出会ったのよ。」
「お母様、それは惚気話ですか?」
お母様はクスリと笑いました。
「ねぇ、セシル、貴族は政略結婚が常識だけど、愛も必要よ。あの二人がした事は最低だし、セシルは何も悪くない。ただ、マリー嬢は寝取るほどワグナーと一緒になりたかった。それをセシルは長い間、一緒にいた筈なのに気付かなかった。何故かしらね。」
首を傾げて私の顔を見詰めるお母様に、居心地の悪さを感じて視線を逸らしました。
「それが分かるなら、こんな結果にはなっていません。」
ふわりとお母様が優しく手を握ってくれました。
幼い頃、私が辛い思いをした時、お母様の柔らかくて温かい手は、いつも元気づけてくれました。
私が成長して、お母様と同じ位の手になっても、やっぱり私はお母様の温もりに元気づけられるのです。
「マリー嬢は交流の申し込みをしていたわ。今日を逃せば、気楽に話せる機会は、もう来ないわよ。」
お母様の言うように、婚約を機に私は王宮暮らしとなり、家族でさえも王宮外の方達とは簡単に会えません。
そんな中、婚約披露パーティは唯一、希望者と交流が許される機会なのです。
「セシルにとって、良い事か、悪い事かは分からないけれど、マリー嬢は伝えたい事があるのでしょう。喧嘩になっても傷ついても、勇気を出して貴女の本当の気持ちを伝えなさい。」
「本当の気持ちと言われても、私は嘘をついていたつもりはありません。伝える事なんて、特に浮かばないのです。」
俯く私に、お母様がポンポンと優しく手を撫でてくれます。
「どうして、何も言ってくれなかったの?とかで良いのよ。そう思わなかった?」
「……思いました。凄く。」
「ワグナーの事、いつから好きだったの?って聞いた?」
「いえ、聞いていません。」
「分からない事や、気になる事は直接聞けば良いのよ。それは喧嘩ではないわ。相手の気持ちを知れて、自分の気持ちを確認する作業でもあるのよ。その相手と友人として付き合いたいかは、その後考えれば良いの。」
自分の気持ちと言われると、ピンと来ませんが、気になる事なら幾らでも浮かんできます。
建国祭の時、私はマリー様やワグナーに、もっと色々聞くべきだったのかもしれません。とは言え、あの時は冷静さを保つのが精一杯だったので、そんな余裕はありませんでした。
今ならば冷静に話が出来そうです。
お母様に勇気を貰って別れた後、護衛騎士に伝えました。
「次の交流は、子爵家のマリー様に致します。」
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