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42.エド団長の個室
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悪魔の吸引が完了して、レリック様に目を向けました。
「エド、牢に入る前に、レミーナ嬢に会いたければ、逆らわない方が良い。」
レリック様がエド団長の腕を掴んでいます。
「……逆らうか。首輪を着けられたら、どうしようもない。まさか陣を描き変えられるとは。油断した。」
エド団長は大人しく従っています。
「セシル、先にエドの邸に転移してくれ。後でエドと行く。」
「はい。」
レリック様に言われて、先にエド団長の邸へ転移しました。
直ぐに腕輪で連絡します。
「レリック団長、セシルです。転移しました。どうぞ。」
「了解。直ぐ行く。以上。」
陣から離れて、待機していたシアーノに報告します。
「転移先はエド団長の個室でした。悪魔の吸引と、エド団長の拘束に成功して、直にレリック団長とエド団長が転移してきます。」
「了解です。さて、久々に上司の顔が拝めますね。」
シアーノが、楽しそうに笑って陣に目を向けると、後ろからレリック様に腕を掴まれたエド団長が転移してきました。
「お疲れ様です、レリック団長。お久しぶりです、エド自己中犯罪団長。」
シアーノが満面の笑みで口を開きました。
今、確かに自己中犯罪団長って聞こえました。
もしかしてシアーノ、怒っている?
「相変わらず口が悪いな、シアーノ。まあ、今回は俺が悪かった。」
エド団長はシアーノの発言に慣れているようです。
「シアーノ、エドの部屋に転移して陣を消してくれ。足の踏み場も無いから、どこに飛ばされるか分からない。陣を消し終わったら、部屋の前に応援を呼んでくれ。」
「了解しました。」
シアーノはエド団長の部屋へ転移しました。
「ではエド、レミーナ嬢に暫し別れの挨拶をしておけ。」
レリック様はエド団長を掴んでいる手を放して、魔の吸引については何も言わず、横になっているレミーナ嬢の方へと、エド団長の背中を押しました。
レミーナ嬢の側に跪いたエド団長が、目を見開いています。
「え?レミーナ……魔が……。」
レミーナ嬢の魔が祓われていると気付いたようです。
「偶然にも、セシルの開けた魔を吸引する箱が、レミーナ嬢の魔を吸い取った。これで、もう大丈夫だ。」
「そうか、そうだったのか。どれ程この日を待ち望んでいたか……。」
レミーナ嬢を抱き締めたエド団長の目から、とめどなく涙が溢れていました。
「……エドワード?」
レミーナ嬢が目を覚ましました。
レミーナ嬢のお腹に貼っていた睡眠の陣を描いている紙が、落ちたようです。
エド団長は抱き締める手を緩めて、涙目のまま、レミーナ嬢と目を合わせました。
「え?エドワード、泣いているの?どうしたの?」
レミーナ嬢は自身に起きた事は覚えていないようで、戸惑っています。
「レミーナ、ああ、レミーナ。本当に、レミーナっ!」
エド団長はレミーナ嬢の顔を両手で包むと、涙を流しながら、おでこや目尻、頬と順番に口づけてます。
「エドワード、ちょっ!んんっ!」
唇にもそれはそれは濃厚な口づけを……。
ああ、エド団長は、あまりにも嬉し過ぎて、私達の存在を忘れてしまったようです。
レミーナ嬢を愛おしく思う気持ちが伝わって来ます。
それは、レミーナ嬢も同じなのでしょう。
目のやり場に困りますが、愛し合う二人を見て、本当に良かったと嬉しくなります。
思わず横にいるレリック様の袖を引っ張って、小声で微笑みかけました。
「エド団長、嬉しそうで良かったですね。」
レリック様は、フッと微笑んで私を見ながら、頷いて下さいました。
しかし、次の瞬間、エド団長に目を向けたレリック様が、スンとした表情になりました。
どうしたのでしょう?
「エド、いい加減にしろ。そのままレミーナ嬢を押し倒す気か。」
ああ、レリック様ったら、折角の感動的な再開が台無しです。
レリック様は、モテるのに、こういう空気は読めない方のようです。
可愛そうに、レミーナ嬢の顔が真っ赤になって、恥ずかしさから涙目になっています。
「あ。いたのか、忘れてた。」
エド団長は集中すると、周りが見えなくなるタイプのようです。
「レミーナ嬢、申し訳ないが、エドは犯罪者だ。然るべき場所へ連行しなければならない。」
「エドワードが犯罪者!?どうして?」
レリック様の言葉に、レミーナ嬢が驚くのも無理はありません。
彼女はずっと眠っていたのですから。
レリック様は悪魔や魔については話さず、レミーナ嬢の病を治す為、エド団長がオカルトにはまり、多くの命を奪ったと説明しました。
「私の為に、ごめんなさい。エドワードが罪を償い終わるまで、今度は私が、いつまでも待っているわ。」
「……済まない、ありがとう。」
エド団長とレミーナ嬢が再び抱き合っています。
互いを思い合えるって、なんて素敵なのでしょう。
私もいつかレリック様とそんな風に………え?今、私、普通にレリック様との未来を考えた?
「そろそろ時間切れか。」
エド団長が、突然眠りに落ちたレミーナ嬢を抱き上げました。
抱き合っている時、睡眠の陣が描かれている紙を拾って、再びレミーナ嬢に貼ったようです。
陣で転移するのを知られない為でしょう。
レミーナ嬢が眠ったのを見計らったように、シアーノが転移してきました。
「部屋のヤバい陣は全て消しました。応援が待機していますので、いつでも転移可能です。」
「シアーノ、報告ご苦労。エドは私と転移するから、シアーノはレミーナ嬢を頼む。」
「了解です。」
「セシルは最後に来てくれ。」
「はい。」
レリック様の言葉に頷いて、私は全員が転移するのを見送ります。
「シアーノ、レミーナを頼む。」
エド団長が渋々レミーナ嬢をシアーノに預けました。
「安心して下さい。今夜は遅いので、レミーナ嬢は客室に寝かせて、明日の朝、エド団長の邸に送り届ける手続きをしておきます。」
エド団長は名残惜しそうに、眠っているレミーナ嬢の前髪をかきあげて、おでこに口づけすると、私の方を見ました。
「セシル嬢、レミーナを助けてくれて有り難う。巻き込んで済まなかった。」
「お役に立てたのなら嬉しいです。」
微笑むと、エド団長も微笑み返して下さいました。
「エド、さっさと来い。いい加減、待ち疲れた。」
「レリックはせっかちだな。」
レリック様はエド団長の腕を掴むと、陣の中心へ連れて行き、二人で騎士棟の個室へと転移しました。
レリック様から転移完了の連絡を受けると、シアーノは眠っているレミーナ嬢を抱えたまま転移して、最後に私もエド団長の個室に転移しました。
部屋中に描かれていた沢山の陣が消されたせいで、一瞬、別の部屋かと思いました。
既に、エド団長や、レミーナ嬢を抱えたシアーノは、部屋を後にしたようです。
室内にはレリック様が一人、私を待っていました。
「取り敢えず今日の任務は終わりだ。私室へ戻ろう。」
「はい。」
レリック様に手を差し出されて、いつものように手を繋ぎました。
悪魔を封印して、エド団長も捕えました。
私のすべき任務は終わったようです。
婚約の理由は、もうありません。
以前の私ならば、婚約破棄されない方が良いけれど、生涯の伴侶と、一生困らない穏やかな生活を保証して頂けるのならば、それはそれで良いと思っていました。
でも、今はそんな風に思えません。
いつの間にか、レリック様との未来を考える程に、私の中で、レリック様の存在が大きくなってしまいました。
婚約破棄したくない。
私の望みを聞いたら、レリック様はどう思うでしょうか?
繋いでいる手に、力が入ってしまいました。
「エド、牢に入る前に、レミーナ嬢に会いたければ、逆らわない方が良い。」
レリック様がエド団長の腕を掴んでいます。
「……逆らうか。首輪を着けられたら、どうしようもない。まさか陣を描き変えられるとは。油断した。」
エド団長は大人しく従っています。
「セシル、先にエドの邸に転移してくれ。後でエドと行く。」
「はい。」
レリック様に言われて、先にエド団長の邸へ転移しました。
直ぐに腕輪で連絡します。
「レリック団長、セシルです。転移しました。どうぞ。」
「了解。直ぐ行く。以上。」
陣から離れて、待機していたシアーノに報告します。
「転移先はエド団長の個室でした。悪魔の吸引と、エド団長の拘束に成功して、直にレリック団長とエド団長が転移してきます。」
「了解です。さて、久々に上司の顔が拝めますね。」
シアーノが、楽しそうに笑って陣に目を向けると、後ろからレリック様に腕を掴まれたエド団長が転移してきました。
「お疲れ様です、レリック団長。お久しぶりです、エド自己中犯罪団長。」
シアーノが満面の笑みで口を開きました。
今、確かに自己中犯罪団長って聞こえました。
もしかしてシアーノ、怒っている?
「相変わらず口が悪いな、シアーノ。まあ、今回は俺が悪かった。」
エド団長はシアーノの発言に慣れているようです。
「シアーノ、エドの部屋に転移して陣を消してくれ。足の踏み場も無いから、どこに飛ばされるか分からない。陣を消し終わったら、部屋の前に応援を呼んでくれ。」
「了解しました。」
シアーノはエド団長の部屋へ転移しました。
「ではエド、レミーナ嬢に暫し別れの挨拶をしておけ。」
レリック様はエド団長を掴んでいる手を放して、魔の吸引については何も言わず、横になっているレミーナ嬢の方へと、エド団長の背中を押しました。
レミーナ嬢の側に跪いたエド団長が、目を見開いています。
「え?レミーナ……魔が……。」
レミーナ嬢の魔が祓われていると気付いたようです。
「偶然にも、セシルの開けた魔を吸引する箱が、レミーナ嬢の魔を吸い取った。これで、もう大丈夫だ。」
「そうか、そうだったのか。どれ程この日を待ち望んでいたか……。」
レミーナ嬢を抱き締めたエド団長の目から、とめどなく涙が溢れていました。
「……エドワード?」
レミーナ嬢が目を覚ましました。
レミーナ嬢のお腹に貼っていた睡眠の陣を描いている紙が、落ちたようです。
エド団長は抱き締める手を緩めて、涙目のまま、レミーナ嬢と目を合わせました。
「え?エドワード、泣いているの?どうしたの?」
レミーナ嬢は自身に起きた事は覚えていないようで、戸惑っています。
「レミーナ、ああ、レミーナ。本当に、レミーナっ!」
エド団長はレミーナ嬢の顔を両手で包むと、涙を流しながら、おでこや目尻、頬と順番に口づけてます。
「エドワード、ちょっ!んんっ!」
唇にもそれはそれは濃厚な口づけを……。
ああ、エド団長は、あまりにも嬉し過ぎて、私達の存在を忘れてしまったようです。
レミーナ嬢を愛おしく思う気持ちが伝わって来ます。
それは、レミーナ嬢も同じなのでしょう。
目のやり場に困りますが、愛し合う二人を見て、本当に良かったと嬉しくなります。
思わず横にいるレリック様の袖を引っ張って、小声で微笑みかけました。
「エド団長、嬉しそうで良かったですね。」
レリック様は、フッと微笑んで私を見ながら、頷いて下さいました。
しかし、次の瞬間、エド団長に目を向けたレリック様が、スンとした表情になりました。
どうしたのでしょう?
「エド、いい加減にしろ。そのままレミーナ嬢を押し倒す気か。」
ああ、レリック様ったら、折角の感動的な再開が台無しです。
レリック様は、モテるのに、こういう空気は読めない方のようです。
可愛そうに、レミーナ嬢の顔が真っ赤になって、恥ずかしさから涙目になっています。
「あ。いたのか、忘れてた。」
エド団長は集中すると、周りが見えなくなるタイプのようです。
「レミーナ嬢、申し訳ないが、エドは犯罪者だ。然るべき場所へ連行しなければならない。」
「エドワードが犯罪者!?どうして?」
レリック様の言葉に、レミーナ嬢が驚くのも無理はありません。
彼女はずっと眠っていたのですから。
レリック様は悪魔や魔については話さず、レミーナ嬢の病を治す為、エド団長がオカルトにはまり、多くの命を奪ったと説明しました。
「私の為に、ごめんなさい。エドワードが罪を償い終わるまで、今度は私が、いつまでも待っているわ。」
「……済まない、ありがとう。」
エド団長とレミーナ嬢が再び抱き合っています。
互いを思い合えるって、なんて素敵なのでしょう。
私もいつかレリック様とそんな風に………え?今、私、普通にレリック様との未来を考えた?
「そろそろ時間切れか。」
エド団長が、突然眠りに落ちたレミーナ嬢を抱き上げました。
抱き合っている時、睡眠の陣が描かれている紙を拾って、再びレミーナ嬢に貼ったようです。
陣で転移するのを知られない為でしょう。
レミーナ嬢が眠ったのを見計らったように、シアーノが転移してきました。
「部屋のヤバい陣は全て消しました。応援が待機していますので、いつでも転移可能です。」
「シアーノ、報告ご苦労。エドは私と転移するから、シアーノはレミーナ嬢を頼む。」
「了解です。」
「セシルは最後に来てくれ。」
「はい。」
レリック様の言葉に頷いて、私は全員が転移するのを見送ります。
「シアーノ、レミーナを頼む。」
エド団長が渋々レミーナ嬢をシアーノに預けました。
「安心して下さい。今夜は遅いので、レミーナ嬢は客室に寝かせて、明日の朝、エド団長の邸に送り届ける手続きをしておきます。」
エド団長は名残惜しそうに、眠っているレミーナ嬢の前髪をかきあげて、おでこに口づけすると、私の方を見ました。
「セシル嬢、レミーナを助けてくれて有り難う。巻き込んで済まなかった。」
「お役に立てたのなら嬉しいです。」
微笑むと、エド団長も微笑み返して下さいました。
「エド、さっさと来い。いい加減、待ち疲れた。」
「レリックはせっかちだな。」
レリック様はエド団長の腕を掴むと、陣の中心へ連れて行き、二人で騎士棟の個室へと転移しました。
レリック様から転移完了の連絡を受けると、シアーノは眠っているレミーナ嬢を抱えたまま転移して、最後に私もエド団長の個室に転移しました。
部屋中に描かれていた沢山の陣が消されたせいで、一瞬、別の部屋かと思いました。
既に、エド団長や、レミーナ嬢を抱えたシアーノは、部屋を後にしたようです。
室内にはレリック様が一人、私を待っていました。
「取り敢えず今日の任務は終わりだ。私室へ戻ろう。」
「はい。」
レリック様に手を差し出されて、いつものように手を繋ぎました。
悪魔を封印して、エド団長も捕えました。
私のすべき任務は終わったようです。
婚約の理由は、もうありません。
以前の私ならば、婚約破棄されない方が良いけれど、生涯の伴侶と、一生困らない穏やかな生活を保証して頂けるのならば、それはそれで良いと思っていました。
でも、今はそんな風に思えません。
いつの間にか、レリック様との未来を考える程に、私の中で、レリック様の存在が大きくなってしまいました。
婚約破棄したくない。
私の望みを聞いたら、レリック様はどう思うでしょうか?
繋いでいる手に、力が入ってしまいました。
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