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5話 風の精霊シルフとエルフの姫
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「先導しているのは、ブラグラの近衛騎士のようだ……」
「そんなことって……」
グランデルが胸を掴みながら天井を見上げている。
命を狙っているのが弟のブラグラ王子だったなんて、私にはグランデルにかける言葉が見つからなかった。
「最近、ブラグラの様子がおかしいとは感じていたが――、さすがに、こんな事態にまでなるとは想定していなかった。……巻き込んでしまい、すまない」
グランデルは申し訳なさそうに謝った。
「私達のことは気にしないでください。それよりも、これからどうしますか?」
「オレ達が本気を出せば、兵士達を殲滅させることは十分に可能だろう……。しかし、これはオレの我がままになるが、できれば同胞を傷つけるようなことはしたくない――」
おそらく、それもグランデルの性格を熟知しているブラグラの戦略の一つなのだろうが、そのことは敢えて口にしなかった。
「ラティリス……」
「はい、ここは私の出番のようですね」
ルランドが声をかけてきた意図を、私は瞬時に理解した。
「グランデル、戦うことなくこの場を切り抜けられる方法が、一つだけあります――」
「そ、そんな方法があるのか?」
グランデルが半信半疑な様子で聞いてきた。
「時間があまりないので、説明よりも先に呼び出しますね」
「……呼び出す?」
「エアル、出て来て――」
私が名前を呼ぶと、つむじ風が目の前に集まり、中から小さな男の子の姿をした風の精霊シルフが姿を現した。
「ラティリス、最近は、ボクを呼んでくれなかったから寂しかったよ」
「ゴメンね、エアル。人目のつくところでは、なかなか呼べなかったから……」
「まさか、お前――。風の精霊シルフを召喚できるのか?」
グランデルが唖然としている。
まあ、人間が精霊と仲良くしているなんて、滅多に聞かない話だ。
「詳しい話をしている時間はありませんが、エアルの精霊魔法を使えば、この場を切り抜けられるはずです」
「確かに、風の精霊の力があれば、これくらいの状況は難なく切り抜けられるだろうな……」
「エアル、私達に力を貸してくれる?」
「ふふ、ボクがラティの頼みを断ったことがあるかい?」
エアルは笑顔でそう言った。
「ありがとう、エアル。それで、今の状況はね――」
「うん、わかってる。ダークエルフの兵士に囲まれているから、見つからないようにこの小屋から抜け出したいんだよね」
「そうなの。できる?」
「そうだね……、風魔法でみんなを飛べるようにするのが良さそうな気はするんだけど――。ただ、問題はどこから抜け出すかだね」
「それなら、屋根裏に小窓があるから、そこから外に出たらどうじゃ?」
ワグリナが話に加わり、そう提案してきた。
「この小屋のこと、よく知っているんですね」
「ワシが作った小屋じゃからな」
通りで詳しいはずだ。
「時間がないんじゃろう。さっそく屋根裏に行くぞい」
「はい、お願いします」
ワグリナに案内されながら、私達は屋根裏へと上がった。
そして、エアルの風魔法で空中に浮遊し、小窓からこっそりと抜け出したことで――
私達は兵士達に見つかることなく、無事に小屋からの脱出に成功した。
◇
「このまま、ドワーフ王国に向かいますか?」
私達はダークエルフの兵士達がいた場所から遠く離れた場所に降り立ち、今後について話し合っていた――
「ドワーフ王国へと続く道は兵士達が待ち構えているだろうな……。少し遠回りになるが、北方にエルフの里に友人がいるので、頼らせてもらうのが一番よさそうだが――」
「……エルフはダークエルフやドワーフとあまり仲がよくないと聞いたことがあるのですが、それは大丈夫なのですか?」
グランデルの提案に対して、私は一般的な観点から疑問を投げかけた。
「エルフ族としてはそういう傾向もあるかもしれないが、その友人は大丈夫だ」
「そうですか。――でしたら、馬車の中にほとんど荷物も置いてきてしまいましたし、そのエルフの友人のところで、仕切り直しの時間が持てるといいですね」
馬車も荷物もない中で闇雲に動くよりも、しばらく留まって準備し直した方がよいと私は判断した。
それに、ブラグラも、まさかダークエルフと仲のよくないエルフの里に、私達が隠れているとは思わないだろう――
◇
「急に頼ることになってしまい、すまない……」
「いえいえ、あたしがグランデル様の頼みごとを断るはずありませんわ。――それよりも、こんな小屋でしか迎えられず、こちらこそ申し訳ありません」
グランデルの友人でありエルフの里の姫でもあるエスカーネが、エルフの里の外れにある小屋へと案内してくれた。
「いや、ダークエルフの私がエルフの里まで行くと騒がれそうだからな……。逆に、ここの方がありがたい」
「そう言っていただけると、こちらもほっとします。ありがとうございます」
エルフの姫がダークエルフのグランデルをどうして助けてくれるのか。
その理由がわからなかったけど――
二人の話している雰囲気を見て、なんとなくその理由がわかった。
どうやら、エスカーネはグランデルに好意を寄せているようだ。
まあ、グランデルがそれに気づいている様子はないのだが……
「あたしを訪ねて来てくださったことは嬉しいのですが、どうして急に来られたのですか?」
「ああ、実は……」
グランデルが今までの経緯を話し始めた。
「そ、そんな、まさか、ブラグラ様が……」
グランデルの話を聞き終えると――
エスカーネは凄く辛そうな表情をした。
男性の気を引くために悲しいふりをする女性も知っているが、エスカーネは悲しい兄弟の有り様に心から胸を痛めていた。
グランデルも、ダークエルフ特有の気が強そうな顔には見えてしまうが、根は心優しい人物。
純粋な性格のエスカーネが、グランデルに惹かれた理由は何となく察することができた。
エスカーネのような純粋な性格ではないが、私にも本気で愛してる人がいるから……
「ん、どうした? 俺の顔をジロジロと見て?」
鈍感なのは二人とも同じみたいだけど――
私はそんなことを思いながら苦笑した。
◇
「……このエルフの里の近くにいると言われている女神ファレス様に会いに行くのはどうかな?」
「え、女神ファレス様に逢えるの?」
エアルの提案に驚いて、私は思わず聞き返した。
諸説あるが、ファレス様はこの世界を創った女神と言われている。
私はそこまで関心はなかったが、確か両親も女神ファレス様を信仰していたはず――
「普通は会うことができないんだけどね。女神の塔の試験を通過すると、特別にファレス様に会うことができるんだ」
「そんな塔があるのね……」
私の故郷では女神ファレス様を信仰している者が多く、研究までなされていたが、そんな話は聞いたことがなかった。
「うん。グランデルの話を聞く限り、ブラグラが急変してしまった原因は、おそらく魔族の魔術によるものだから、ファレス様から知恵をもらえれば、解決策も見つかると思うんだよね――」
「やはり、ブラグラが豹変してしまったのは、魔族の魔術が原因だった可能性が高いんだな……。確かに、ファレス様の知恵があれば、弟を救えるかもしれない」
絶望して暗くなっていたグランデルの目に、少し希望の光が宿った。
「それなら、失った荷物の補充が終わり次第、女神の塔に行きましょうか」
「そうだな」
「なっ、お前達まで行く気か? ――これは俺と弟の問題だ。お前達まで危険を冒す必要はない」
ルランドと私が行く気満々になっていると、グランデルが慌てて私達を制止した。
「え、どうしてですか? 私達は仲間ですよね……」
「言われるまで、行くことに何の疑いもなかったんだがな――」
「お、お前ら……」
予想外の返答だったのか、グランデルが面食らっている。
「乗りかかった船じゃ。もちろん、ワシも行くぞ!!」
「この辺りの土地は私が一番詳しいです。私にも行かせてください」
「ワグリナとエスカーネまで――。この恩は一生忘れない、ありがとう……」
グランデルはそう言って頭を下げた。
「グ、グランデル様!? ど、どうか頭を下げないでください。私はグランデル様のお力になりたいだけですから――」
「エスカーネ?」
「あ、えーと、間違えました。困っている時はお互い様ですよ、グランデル様」
エスカーネは感情を隠すのが苦手なようだ……
気持ちが抑えきれずに表に出てしまっている。
エスカーネの純粋な想いを感じ取り、私は思わず微笑んだ。
ダークエルフとエルフという相容れない立場での恋模様なんて、まるで本の中のような物語。
グランデルはエスカーネの気持ちに気づいていないみたいだけど――
いつか、その想いが実を結ぶといいね……
「この借りは必ず返させてもらう。だから、今回はみんなの力を貸してほしい――」
「もちろんです」
「おう」
「困っている時はお互い様じゃな」
「グランデル様のためなら、どんなことでも……」
私と同じように、みんなも声に出して賛同した――
「そんなことって……」
グランデルが胸を掴みながら天井を見上げている。
命を狙っているのが弟のブラグラ王子だったなんて、私にはグランデルにかける言葉が見つからなかった。
「最近、ブラグラの様子がおかしいとは感じていたが――、さすがに、こんな事態にまでなるとは想定していなかった。……巻き込んでしまい、すまない」
グランデルは申し訳なさそうに謝った。
「私達のことは気にしないでください。それよりも、これからどうしますか?」
「オレ達が本気を出せば、兵士達を殲滅させることは十分に可能だろう……。しかし、これはオレの我がままになるが、できれば同胞を傷つけるようなことはしたくない――」
おそらく、それもグランデルの性格を熟知しているブラグラの戦略の一つなのだろうが、そのことは敢えて口にしなかった。
「ラティリス……」
「はい、ここは私の出番のようですね」
ルランドが声をかけてきた意図を、私は瞬時に理解した。
「グランデル、戦うことなくこの場を切り抜けられる方法が、一つだけあります――」
「そ、そんな方法があるのか?」
グランデルが半信半疑な様子で聞いてきた。
「時間があまりないので、説明よりも先に呼び出しますね」
「……呼び出す?」
「エアル、出て来て――」
私が名前を呼ぶと、つむじ風が目の前に集まり、中から小さな男の子の姿をした風の精霊シルフが姿を現した。
「ラティリス、最近は、ボクを呼んでくれなかったから寂しかったよ」
「ゴメンね、エアル。人目のつくところでは、なかなか呼べなかったから……」
「まさか、お前――。風の精霊シルフを召喚できるのか?」
グランデルが唖然としている。
まあ、人間が精霊と仲良くしているなんて、滅多に聞かない話だ。
「詳しい話をしている時間はありませんが、エアルの精霊魔法を使えば、この場を切り抜けられるはずです」
「確かに、風の精霊の力があれば、これくらいの状況は難なく切り抜けられるだろうな……」
「エアル、私達に力を貸してくれる?」
「ふふ、ボクがラティの頼みを断ったことがあるかい?」
エアルは笑顔でそう言った。
「ありがとう、エアル。それで、今の状況はね――」
「うん、わかってる。ダークエルフの兵士に囲まれているから、見つからないようにこの小屋から抜け出したいんだよね」
「そうなの。できる?」
「そうだね……、風魔法でみんなを飛べるようにするのが良さそうな気はするんだけど――。ただ、問題はどこから抜け出すかだね」
「それなら、屋根裏に小窓があるから、そこから外に出たらどうじゃ?」
ワグリナが話に加わり、そう提案してきた。
「この小屋のこと、よく知っているんですね」
「ワシが作った小屋じゃからな」
通りで詳しいはずだ。
「時間がないんじゃろう。さっそく屋根裏に行くぞい」
「はい、お願いします」
ワグリナに案内されながら、私達は屋根裏へと上がった。
そして、エアルの風魔法で空中に浮遊し、小窓からこっそりと抜け出したことで――
私達は兵士達に見つかることなく、無事に小屋からの脱出に成功した。
◇
「このまま、ドワーフ王国に向かいますか?」
私達はダークエルフの兵士達がいた場所から遠く離れた場所に降り立ち、今後について話し合っていた――
「ドワーフ王国へと続く道は兵士達が待ち構えているだろうな……。少し遠回りになるが、北方にエルフの里に友人がいるので、頼らせてもらうのが一番よさそうだが――」
「……エルフはダークエルフやドワーフとあまり仲がよくないと聞いたことがあるのですが、それは大丈夫なのですか?」
グランデルの提案に対して、私は一般的な観点から疑問を投げかけた。
「エルフ族としてはそういう傾向もあるかもしれないが、その友人は大丈夫だ」
「そうですか。――でしたら、馬車の中にほとんど荷物も置いてきてしまいましたし、そのエルフの友人のところで、仕切り直しの時間が持てるといいですね」
馬車も荷物もない中で闇雲に動くよりも、しばらく留まって準備し直した方がよいと私は判断した。
それに、ブラグラも、まさかダークエルフと仲のよくないエルフの里に、私達が隠れているとは思わないだろう――
◇
「急に頼ることになってしまい、すまない……」
「いえいえ、あたしがグランデル様の頼みごとを断るはずありませんわ。――それよりも、こんな小屋でしか迎えられず、こちらこそ申し訳ありません」
グランデルの友人でありエルフの里の姫でもあるエスカーネが、エルフの里の外れにある小屋へと案内してくれた。
「いや、ダークエルフの私がエルフの里まで行くと騒がれそうだからな……。逆に、ここの方がありがたい」
「そう言っていただけると、こちらもほっとします。ありがとうございます」
エルフの姫がダークエルフのグランデルをどうして助けてくれるのか。
その理由がわからなかったけど――
二人の話している雰囲気を見て、なんとなくその理由がわかった。
どうやら、エスカーネはグランデルに好意を寄せているようだ。
まあ、グランデルがそれに気づいている様子はないのだが……
「あたしを訪ねて来てくださったことは嬉しいのですが、どうして急に来られたのですか?」
「ああ、実は……」
グランデルが今までの経緯を話し始めた。
「そ、そんな、まさか、ブラグラ様が……」
グランデルの話を聞き終えると――
エスカーネは凄く辛そうな表情をした。
男性の気を引くために悲しいふりをする女性も知っているが、エスカーネは悲しい兄弟の有り様に心から胸を痛めていた。
グランデルも、ダークエルフ特有の気が強そうな顔には見えてしまうが、根は心優しい人物。
純粋な性格のエスカーネが、グランデルに惹かれた理由は何となく察することができた。
エスカーネのような純粋な性格ではないが、私にも本気で愛してる人がいるから……
「ん、どうした? 俺の顔をジロジロと見て?」
鈍感なのは二人とも同じみたいだけど――
私はそんなことを思いながら苦笑した。
◇
「……このエルフの里の近くにいると言われている女神ファレス様に会いに行くのはどうかな?」
「え、女神ファレス様に逢えるの?」
エアルの提案に驚いて、私は思わず聞き返した。
諸説あるが、ファレス様はこの世界を創った女神と言われている。
私はそこまで関心はなかったが、確か両親も女神ファレス様を信仰していたはず――
「普通は会うことができないんだけどね。女神の塔の試験を通過すると、特別にファレス様に会うことができるんだ」
「そんな塔があるのね……」
私の故郷では女神ファレス様を信仰している者が多く、研究までなされていたが、そんな話は聞いたことがなかった。
「うん。グランデルの話を聞く限り、ブラグラが急変してしまった原因は、おそらく魔族の魔術によるものだから、ファレス様から知恵をもらえれば、解決策も見つかると思うんだよね――」
「やはり、ブラグラが豹変してしまったのは、魔族の魔術が原因だった可能性が高いんだな……。確かに、ファレス様の知恵があれば、弟を救えるかもしれない」
絶望して暗くなっていたグランデルの目に、少し希望の光が宿った。
「それなら、失った荷物の補充が終わり次第、女神の塔に行きましょうか」
「そうだな」
「なっ、お前達まで行く気か? ――これは俺と弟の問題だ。お前達まで危険を冒す必要はない」
ルランドと私が行く気満々になっていると、グランデルが慌てて私達を制止した。
「え、どうしてですか? 私達は仲間ですよね……」
「言われるまで、行くことに何の疑いもなかったんだがな――」
「お、お前ら……」
予想外の返答だったのか、グランデルが面食らっている。
「乗りかかった船じゃ。もちろん、ワシも行くぞ!!」
「この辺りの土地は私が一番詳しいです。私にも行かせてください」
「ワグリナとエスカーネまで――。この恩は一生忘れない、ありがとう……」
グランデルはそう言って頭を下げた。
「グ、グランデル様!? ど、どうか頭を下げないでください。私はグランデル様のお力になりたいだけですから――」
「エスカーネ?」
「あ、えーと、間違えました。困っている時はお互い様ですよ、グランデル様」
エスカーネは感情を隠すのが苦手なようだ……
気持ちが抑えきれずに表に出てしまっている。
エスカーネの純粋な想いを感じ取り、私は思わず微笑んだ。
ダークエルフとエルフという相容れない立場での恋模様なんて、まるで本の中のような物語。
グランデルはエスカーネの気持ちに気づいていないみたいだけど――
いつか、その想いが実を結ぶといいね……
「この借りは必ず返させてもらう。だから、今回はみんなの力を貸してほしい――」
「もちろんです」
「おう」
「困っている時はお互い様じゃな」
「グランデル様のためなら、どんなことでも……」
私と同じように、みんなも声に出して賛同した――
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