血の繋がっていないお兄ちゃんと恋人になる恋愛大作戦!! 〜動き始めないと恋も愛も始まらない〜

夜炎伯空

文字の大きさ
1 / 2

【前編】血の繋がっていないお兄ちゃんの恋人になりたいから戦略を考えました!!

しおりを挟む
「ふふふ、今日の『智哉ともやお兄ちゃんと恋人になる恋愛大作戦』はこれだ!!」

 壁に貼られた計画表を眺めながら、私はニヤリとした。

 あたしの名前は紗季さき

 血の繋がっていないお兄ちゃんに恋をしている高校生。

 お兄ちゃんに初めて出逢ったのはあたしが中学一年生の時、お兄ちゃんは中学三年生だった。

 その時の関係は、ただの従兄妹同士だったけど――

『私は行方不明になるから、お金持ちの親戚の子になるのよ』

 母子家庭で貧乏だったお母さんとあたし。

 お母さんは貧乏生活からのがれる最後の手段として、お金持ちの親戚の家にあたしを預ける計画をくわだてた。

『あなたが無事にそこの一人息子と結婚ができたら、そこで私達の貧乏生活を終えることができるわ』

 二年経った今も、あたしはお母さんとの約束を忠実に守り、今日も『智哉お兄ちゃんと恋人になる恋愛大作戦』を実行する予定だ。

 ただ、唯一誤算だったのは、最初は戦略的にアプローチをしていたはずだったのに、気がつくとあたしは本当にお兄ちゃんのことを好きになってしまっていた……

 だから――

 今日考えた戦略は、本気でお兄ちゃんの恋人になるための計画。

『出逢い:お兄ちゃんの部屋のドアが開いたら、あたしも部屋から出て、偶然に出逢ったフリをしながら「気が合うね」と伝える』

『朝食:お母さんと一緒に朝食の準備をして、料理ができるアピールをする』

『通学:家を出る時間を合わせて、「あ、今から出るの? じゃあ、一緒に行こっか」と言って、一緒に通学する』

『放課後:お兄ちゃんよりも早く駅に行って、「偶然だね。せっかくだから、一緒に帰ろ」と言って、一緒に帰る』

『帰宅後:家に着いたらお兄ちゃんは勉強を始めるから、飲み物と作っておいたおやつを部屋に持って行って、胃袋からお兄ちゃんの心を掴む』

『夜:天気予報で雨が降る予定になってたから、「雨が降ってるから、なんか寂しくなっちゃって……」と言って、お兄ちゃんに添い寝してもらう』

「よし! これで、お兄ちゃんとあたしは恋人同士になれるはず――」

 まあ、何度も失敗してるんだけどね……

 今日こそはと、あたしは計画表を見返しながら、頭の中にその内容を叩き込んだ。

 ガチャッ!

「え? あっ……」

 計画表を見つめながらうっとりしていたら、お兄ちゃんが部屋のドアを開ける音がした。

「まずい!! このままだと、いきなり計画が狂ってしまう」

 あたしが慌てて、部屋のドアを開けると――

 ドン!

 部屋から出た途端、あたしはお兄ちゃんにぶつかってしまった。

「あ、紗季、おはよう。……ぶつけたところ、痛くなかったか?」

「うん、大丈夫――。お、おはよう、お兄ちゃん……」

 ぶつけた鼻を抑えながら、あたしはお兄ちゃんに挨拶をした。


「お母さん、朝食の準備手伝うね」

 朝の出逢いは失敗してしまったから、朝食の計画は成功させて、名誉挽回しないと――

「え、別にいいのに」

 お母さんはそう言ってくれたが、あたしは失敗を取り戻さないといけなかった。

「ううん、あたしが手伝いたいの」

「じゃあ、遠慮なく手伝ってもらおうかしら。朝食は出来てるから、テーブルに運んでもらえる?」

「はい」

 あたしはお母さんの指示通り、準備された朝食をテーブルに運んだ。

 ――って、全然、料理できるアピールになってないんだけど!!

「紗季はいつも家の手伝いをして偉いよな」

「大丈夫? 無理してない? 自分の家だと思って、そんなに気を遣わなくていいのよ」

 あれ?

 失敗したと思ったけど、印象は意外に悪くなさそうだった……


「それじゃあ、行ってきまーす」

「ま、待って、お兄ちゃーーん!! あたしも一緒に行くーー!!」

 お兄ちゃんに先に家を出られてしまった……


「学校出るの遅くなっちゃった!! 急いで、駅に向かわないと……」

「あ、紗季。今から帰りか?」

 お兄ちゃんの方が先に駅に着いて待っていてくれた――


「あれ、今日は勉強しないの?」

「ああ、紗季の好きなデザートを作ってから勉強しようかと思って――」

「ありがとう、お兄ちゃん」

 おい、あたしの胃袋を掴まれてどうするのよ!!


「あーあ、今日も惨敗だった」

 雨の予報だった天気は、少し時間がずれて、深夜から降り始めることになったらしい――

「どうして、あたしって何をやっても上手くいかないんだろう……」

 なかなか「頑張ってるね」って言ってもらえないけど、本当はこれでも頑張ってるよって言いたい。

 『紗季だから仕方がないよね』って言われるんじゃなくて、『さすが紗季だね』って言われたい。

 あたしがもっとしっかりしていれば、お母さんと離れ離れにならずに済んだのかもしれない――

 あたしがもっと親のことを大切にしてたら、お父さんとお母さんは離婚しなかったかもしれない……
 
 様々な過去の記憶が思い起こされて、あたしの目からはいつの間にか涙が溢れ出していた。

 
 コンコンコン!

 突然、部屋のドアがノックされた――

「お兄ちゃん?」

 ノックの仕方で、お兄ちゃんだとわかった。

「よくわかったな」

「うん。――こんな時間にどうしたの?」

 もう寝ていてもおかしくない時間だ。

「夕食の時に暗い顔してたから、体調でも悪いのかなと思って……」

 ほんと、お兄ちゃんには敵わないなぁ……

 あたしが辛い時に、いつも助けてくれるお兄ちゃん。

 カチャ!

 あたしはドアを開けて、お兄ちゃんに泣きついた。


「あたしね――」

 失敗ばかりして自信が持てないこと。

 実の親がいなくなって寂しいこと。

 それら全てを感情に任せて話したのに……

 お兄ちゃんは最後まで話を聞いてくれた。


「――ごめんね、こんな妹と一緒に暮らすことになって……」

「ううん、大丈夫。僕は妹ができて本当に嬉しいと思ってるから――」

「お兄ちゃん、ありがとう……」

 この家のお金とお兄ちゃんのステータスが欲しいと最初は思っていた。

 ――でも、本当に欲しかったのは、きっと、自分のことを大切にしてくれる人だったんだね。

 そのことに気づいたあたしは、心が満たされていくのを感じていた。

「お兄ちゃん、大好きだよ。ずっと、あたしの傍にいてね」

 気がつくとあたしはお兄ちゃんに、自然とそう告白していた――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...