異世界転生しましたが、魔王も復活してヤンデレ勇者も転生してきました

KOUAN

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転生しました。

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「お二人とも無事で良かったです」


これは本音だ。まだコントロール出来ていない魔法の類を試してしまったのだから。
もしかすると空気の刃はスライムではなく、この人達を切り裂いてしまう恐れもある。

人命を第一に考えていたが、配慮に欠けていた事に反省した。


「私はスリザス、医師をしてます。
そして弟のエリオ。町に帰る途中でした。
いつも通る森なのですが、今日は魔物が多くて魔物避けの鈴が効かなく……凶暴化したスライムに襲われていたのです」


スリザスはエリオよりも暗いブラウンブロンドの髪。少し癖のある毛先はエリオと同じだ。
二人とも人懐っこい笑顔が似合う、お互いに気遣う様子を見ると仲の良さそうな兄弟だ。


「私は……、ロズ」


私の名前。この世界での名前。
とっさに口から出てきた。
転生前の名前は違うが、この世界での名前と考えたら自然と浮かんできた。
『ロズ』という名前を使い、後から名乗り変えるのもいいだろうと考えてみる。


「ロズ、助かったよ。君がいなければ、私もエリオもここにはいなかった。
お礼といってはささやかだが、今日は私達の町で食事をご馳走させてほしい」


「とても嬉しい申し出だけど、私を町に入れて大丈夫?」


両手を広げて無害である事をアピールするが、麻のワンピース以外は靴も履いてない。
命を救われたが、怪しい格好の少女を招くには些か無用心ではないのか。そうロズは思ってしまう。



「……ロズには聞きたい事も多いけど、まずはその服だね。野盗にでもあったのかい?
魔物を退けるロズなら、野盗程度は相手にならなそうだけど」


クスッと冗談を含めてスリザスは言うが、ロズは野盗なんていたのかとゾッとした。
魔物相手なら魔法も遠慮なく発動できるが、人間なら話は別だ。
あの炎の渦に人を巻き込めば、一瞬で骨も残らずに消せるだろう。


「野盗には会ってないけど……」


自分が転生者だと伝えるべきか躊躇ためらう。
ロズが考え込むとスリザスは困ったように眉を下げて、荷台から大きめのタオルの様な物を出す。


「町に帰るまで被ってて下さい。その格好は少し、目立ってしまいますので」


「荷台に座れる場所も作ったので、どうぞ!」


エリオが人懐こい笑顔で馬車の荷台に案内する。
藁に布を被せた簡易的なソファに腰を掛けると、出発した馬車の揺れに眠気が誘われた。


「ロズ、私の名前……。どこかで聞いたような」


眠気に抗えず、考える事を放棄する。
この世界には『彼』はいない。
自由になった。ロズは自分に言い聞かせるようにして、目を閉じる。

馬車は壊れた後輪のせいか時々大きく揺れて体を揺すったが、ロズは心地よい眠りに落ちてしまった。



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