15 / 40
転生者と勇者
6
しおりを挟む「ゴーレム?」
スリザスの横から覗き込むと、人形はパタパタと手足を動かし動きを確認している。
大きさは膝くらいの高さで、二頭身の丸みがあるフォルム。バランスが悪いのかフラフラしている。
「あれ、大地の精霊の印がある」
エリオがゴーレムを抱き上げ、額を指差すと確かに六角形の中心に花のマークがついていた。
「もしかして、さっきの声は大地の精霊だったのかな。ごちゃごちゃしてて、よく聞き取れなかったけど、力をあげるとか、どう護ろうとか……。
あと、勇者嫌いとか」
「え、ロズ精霊の声きけたの?」
エリオがびっくりして手を離すと、ゴーレムは着地に失敗して転がってしまった。
ドジなゆるキャラを見ているようで、ハラハラとしてしまう。
「多分、そのゴーレムが精霊の力で生まれたなら、カストラちゃんを護る為にくれたんだと思う」
「私を?」
カストラが思わず声を出すと、ゴーレムはカストラの足元に向かい、ひとつお辞儀をした。
やはりカストラを護る為に生まれたようだと、ロズを含めて全員が理解した。
カストラの役に立つかは別として。
「ロズお姉ちゃん、ありがとう。結界もこの子も、ここでまた蜂蜜が取れるなんて、嬉しい……」
ゴーレムを抱きしめて、大粒の涙が溢れる。
後から聞いた話だったが、カストラの両親は他界しており、一人思い出の場所で養蜂を営むカストラの為にアストルムが結界を施したそうだった。
そのままロズはカストラから蜂蜜をもらい、王城へと向かう。
馬車に揺られ、疲れた身体を横にする。
重くなる目蓋の隙間で勇者の事を考えていた。
「嫌い、か……」
精霊の言葉を思い出し、忘れようとした過去が蘇る。
嫌いと突き放せなかった自分の弱さと、弱さの為に自己犠牲を自分に強いていた過去を。
「自由に生きる。勇者も魔王も関係ない。邪魔するなら……」
その為の力を得た。
ロズは自分を庇うように抱き締めて眠りに落ちた。
*
夢の中でふわふわと白いレースが揺れ、その先に男が立っていた。
駆け寄ろうと体を動かすが、足下を鎖が邪魔して前に進まない。
振り返ると鎖の辿った先には暗闇があり、薄っすらと過去に住んでいた部屋が見える。
「嫌っ!!あそこには戻りたくない!!」
レースの先に立つ男に手を伸ばすが届かない。
ズルズルと体ごと暗闇に引き込まれる。
「助けて、私に気付いてよ……。お願い、その為だったら私は」
「ーー捕まえた」
*
目が醒めると、全身汗だくだった。
ベッドで寝ていたロズは慌てて起き上がる。
いつの間にか宿に到着していたようで、ロズは一人で部屋を使っていたようだった。
汗を拭いて、窓の外を見ると赤い屋根に白い壁の家が立ち並んでいた。
街は活気で溢れていて、道を歩く人達はどことなく都会的な雰囲気があった。
風が吹く方向を見ると、大きな大樹が目に飛び込んでくる。
スリザスのエンブレムにもあった国のシンボルだ。
「あれが王城……」
大樹の根元に建つ城はまさしくファンタジーのそれであったが、ロズの胸は騒つくばかりで落ち着かない。
扉がノックされ、スリザスとエリオが迎えに来た。
その手には招待状と、白いドレスが持たされていた。
0
あなたにおすすめの小説
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!
カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から20年前の物語となります。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる