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転生者と勇者
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しおりを挟む「ゴーレム?」
スリザスの横から覗き込むと、人形はパタパタと手足を動かし動きを確認している。
大きさは膝くらいの高さで、二頭身の丸みがあるフォルム。バランスが悪いのかフラフラしている。
「あれ、大地の精霊の印がある」
エリオがゴーレムを抱き上げ、額を指差すと確かに六角形の中心に花のマークがついていた。
「もしかして、さっきの声は大地の精霊だったのかな。ごちゃごちゃしてて、よく聞き取れなかったけど、力をあげるとか、どう護ろうとか……。
あと、勇者嫌いとか」
「え、ロズ精霊の声きけたの?」
エリオがびっくりして手を離すと、ゴーレムは着地に失敗して転がってしまった。
ドジなゆるキャラを見ているようで、ハラハラとしてしまう。
「多分、そのゴーレムが精霊の力で生まれたなら、カストラちゃんを護る為にくれたんだと思う」
「私を?」
カストラが思わず声を出すと、ゴーレムはカストラの足元に向かい、ひとつお辞儀をした。
やはりカストラを護る為に生まれたようだと、ロズを含めて全員が理解した。
カストラの役に立つかは別として。
「ロズお姉ちゃん、ありがとう。結界もこの子も、ここでまた蜂蜜が取れるなんて、嬉しい……」
ゴーレムを抱きしめて、大粒の涙が溢れる。
後から聞いた話だったが、カストラの両親は他界しており、一人思い出の場所で養蜂を営むカストラの為にアストルムが結界を施したそうだった。
そのままロズはカストラから蜂蜜をもらい、王城へと向かう。
馬車に揺られ、疲れた身体を横にする。
重くなる目蓋の隙間で勇者の事を考えていた。
「嫌い、か……」
精霊の言葉を思い出し、忘れようとした過去が蘇る。
嫌いと突き放せなかった自分の弱さと、弱さの為に自己犠牲を自分に強いていた過去を。
「自由に生きる。勇者も魔王も関係ない。邪魔するなら……」
その為の力を得た。
ロズは自分を庇うように抱き締めて眠りに落ちた。
*
夢の中でふわふわと白いレースが揺れ、その先に男が立っていた。
駆け寄ろうと体を動かすが、足下を鎖が邪魔して前に進まない。
振り返ると鎖の辿った先には暗闇があり、薄っすらと過去に住んでいた部屋が見える。
「嫌っ!!あそこには戻りたくない!!」
レースの先に立つ男に手を伸ばすが届かない。
ズルズルと体ごと暗闇に引き込まれる。
「助けて、私に気付いてよ……。お願い、その為だったら私は」
「ーー捕まえた」
*
目が醒めると、全身汗だくだった。
ベッドで寝ていたロズは慌てて起き上がる。
いつの間にか宿に到着していたようで、ロズは一人で部屋を使っていたようだった。
汗を拭いて、窓の外を見ると赤い屋根に白い壁の家が立ち並んでいた。
街は活気で溢れていて、道を歩く人達はどことなく都会的な雰囲気があった。
風が吹く方向を見ると、大きな大樹が目に飛び込んでくる。
スリザスのエンブレムにもあった国のシンボルだ。
「あれが王城……」
大樹の根元に建つ城はまさしくファンタジーのそれであったが、ロズの胸は騒つくばかりで落ち着かない。
扉がノックされ、スリザスとエリオが迎えに来た。
その手には招待状と、白いドレスが持たされていた。
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