異世界転生しましたが、魔王も復活してヤンデレ勇者も転生してきました

KOUAN

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転生者と魔王

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人並み以上に何事もこなせた俺は、勇者になる事を望まれ、惰性的な感情を抱えたまま魔王を倒す。

仲間と一緒に旅をしても、それ以上の感情は湧かなかったし、富豪の娘との結婚を勧められても心は動かされなかった。


「ルカ、さっき姫さんの誘い断っていたじゃないか。この国に嫡男はいない、王になる事もできるぞ」


旅の仲間であるアルゲンテウスがふらふらと隣の椅子に腰掛ける。グラスに並々と注がれた酒をあおると肩を組み、頬を緩ませ笑いだす。


「やけに機嫌が良いな。それと、竜は酒に酔いやすいのになぜ飲むんだ」


「ルカぁ、おまえが心配なんだよ。俺には最愛の妻がいるけど、ルカは親もいなければ恋人もいない。
最上の麗し姫の誘いだって断る。
魔王がいなくなった世界で何のために生きるんだ?」


「……ただ、生きて、死ぬだけだ」


淡々と答えると、アルゲンテウスは背中を丸ませてちびちびと酒を飲む。


「寂しいなぁ、それは……」


仕方がない。心動かされる存在がこの世界には無い。諦めた俺は与えられた事を、ただ続けた。


しかし、転機は突然に訪れる。
俺の力を恐れた王が俺を殺した。


冷たくなる体に、暗くなった世界。
全身が深い水に沈むような感覚に安堵する。


一つ心残りなのは、アルゲンテウスのような自分の世界を変える存在に出会えなかった事だ。


誰かに愛されたかった。愛したかった。


そんな事を考えているうちに、俺は生まれ変わっていた。魔法や魔力はないが、便利で快適な世界だった。


それでも、彼女と出逢うまでは感動も生きている実感も薄かった。


彼女と会って、言葉を交わすだけで胸は弾んだ。
彼女が笑えば心が満たされたし、彼女が悲しめば苦しくなった。


必死に振り向いてもらう為、努力をした。
彼女が傷つかないように、俺以外の誰も好きにならないように、彼女を囲った。


「それなのに、何故?」


一度だけではなく、も俺から離れた。


「……葵?」


葵の為に温かい飲み物を用意し、寝室に向かうと姿はなかった。


「裏切り者、裏切り者、裏切り者」


愛しているのに、何故逃げる?
理解できない葵の行動に混乱する。


『貴方を愛さない人なんていないわ。勇者だもの。ただ一つ不完全なのはだけよ。
大丈夫よ。私がいるのだから。一緒に体を集めて、彼女を迎えましょう』


光の精霊が、葵の服を抱きしめる俺の周りを飛び回る。
勇者にしか加護を与えない、光の精霊は唯一無二で、俺の為だけに力を貸す。
体が無くても存在できるのは、光の精霊の存在があるからだ。


「そうか、体。それがなければ俺たちは愛し合えない……」


この城に用は無くなり、出発の準備をする。
エバーティムの王から従者を付けられ、葵の世話をしたスリザスとエリオの二人が同行した。


「葵、今度こそ二人で生きるんだ」


以前のような焦燥感は無く、この世界に葵の存在があると思うだけで胸は熱くなった。


「アルゲンテウス。俺にも分かったよ……」


再び旅するこの世界は輝いて見えた。

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