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転生者と魔王
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しおりを挟む「……この娘が」
レフィと呼ばれた竜の男は、ロズを品定めするかの様に頭から爪の先まで見て眉根を寄せた。
見た目を裏切らず、彼は冷静で慎重な考えを持って、ロズに対する言葉を選んでいるようだった。
「アルゲンテウス様にご紹介頂きました。魔王様側近のレフィナードと申します。貴女にお願いがあり、参りました」
凛とした背筋にスッとした鼻梁は、男性であるが美しいと思ってしまう。ロズは改まった様子のレフィナードに目を奪われた。
しかし、レフィナードの発言により息を呑む。
「魔王様の為に、その命捧げて下さい」
「ちょっとー。レフィ?それじゃあロズ困っちゃうよ?ロズは僕らの家族同然だ。竜の花嫁さんになるかもだしね」
アルゲンテウスは掴み所のない雰囲気でレフィナードを嗜めたが、最後の花嫁の件は威圧的に感じた。
アルゲンテウスもアストルムも親しみ深いが、ロズに隠している事もある。
「……レフィナード、詳しく話を聞かせて」
転生者ではあるが、今のロズは齢14歳くらいの少女である。自分の命に頂点である魔王に捧げるだけの価値があるのか、ロズには疑問だった。
「今、貴女のスクロールを解析しました。転生者である事は知っていましたが、通常状態で過去の魔王に匹敵する力です。
体力、魔力、身体能力、は私が視れる上限を超えていますし、大地の精霊の加護も与えられている。
それに、不明なスキルも多数所持している様子。
少女の姿をした魔王族かと思いました」
レフィナードは額にかかった髪を、撫でるように耳にかける。洗練された姿は冷静に見えたが、力強く握られた拳には熱があった。
「だからお願いしているのですっ!!
どうかその命、未成熟な魔王様の為に捧げて下さい!!」
「……未成熟な魔王?」
「レフィ、お願いする方が威圧的じゃあ、交渉は失敗するって僕教えなかったかなあ」
マイペースなアルゲンテウスも、レフィナードの態度に困った様子だった。
「魔王様の為です。それに今代はまだ誕生するはずではなかった。……勇者の転移に、それに繋がる者の転生。無関係とは言えない。
勇者が体を集め終わる前に、魔王様には完全となってもらわなければ」
レフィナードの鋭い視線はロズに向いていた。
魔王の未成熟な誕生はロズに原因があるのでは、と言いたげだった。
「レフィ!ロズの責任じゃないだろう!?分からない原因をロズに押し付けるな」
「魔族を裏切り、人間の為に盾となる竜の言う事など聞けるか?
アストルム様も元は人間、我々側の事情より人の国を優先するだろう?」
アルゲンテウスの雰囲気が変わり、ピリピリとした魔力が充満する。
少年の姿から、口許が裂けて鋭い牙が光る。
「……僕の事はいい、最後は魔王よりルカを選んだんだからね。でもアストルムは違うよ?」
「人間との契約でこの地に縛られ、朽ちる竜が何を言う。もう話し合う事もないだろう」
レフィナードは呆然としていたロズを荷物のように抱えると、尾で床を払って周りに結界のような空間を作った。
「この娘にだけ用があるので、ここで失礼致します」
「えっ!ちょっと、待って待って!!」
ロズが危険を感じて暴れる前に、空間は暗闇に包まれ、アルゲンテウスとアストルムの声が徐々に消えていった。
「申し訳ありません……」
悔しそうに呟いたレフィナードの言葉を最後に、ロズは眠るように意識を手放した。
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