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魔族生活の薦め
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しおりを挟む「え~と、人間ちゃん?はここで何してるの?」
ウィルはロズに刺した羽根の位置を調整しながら話す。羽根を目立たせたい様子だったが、髪留めとのバランスがとれず最終的には羽根を添える形になった。
「呼ばれたんだけど、何するか分からなくて。私の事はロズって呼んで」
「ロズね~。ロズは人間なのにワタシや他の魔族にも驚かないのね」
「慣れかな~」
ウィルと同じ調子でロズが返す。ウィルのおっとりした雰囲気に流されそうになりつつも、ロズは楽しんでいた。
「でも感動はしてるの。ウィルの羽根は綺麗だし、竜は大きくて優雅だった」
「ひゃ~ロズは竜に会って生きてるの?レフィナード様は竜の姿に滅多にならないから、他の竜よね。
ワタシの一族は竜が怖くて夜は飛ばないのよ~。パクッと一口で食べられるわぁ」
「でも、街に行った時に竜に乗ったよ?」
クラルスに行く為の交通手段として竜の背に乗った事を思い出す。
ウィルは少し驚いた様子で目を瞬いた。
「ロズ……それはワイバーンよ。前脚がなかったでしょう?それに竜と比べたら小さすぎるわよ」
アストルムの背よりも狭かった事を思い出し、竜と比べたら些かトカゲのような印象だった。
「ふふっロズってお嬢様だったの?竜とワイバーンを間違えるなんて。それとも最近の人間は竜も怖くなくなって、ワイバーンとの区別もつかなくなったのかしら~」
笑いを堪えるウィルの翼はフルフルと揺れている。
世間知らずと言いたいのだろうが、ロズがこの世界に来てからの日は浅いので当然の事だった。
「お嬢様ではないけど、世間知らずかも?やっぱりいろんな場所に行って経験したいな」
「あらあら、ロズの冒険心を刺激しちゃったかしら。責任持ってお手伝いしないとねぇ」
笑い上戸になったウィルの片手を見れば、ノワに避けられていたアルコールがある。そして、テーブルには空のグラスが並んでいる。
蜂蜜色の気泡が浮かぶ酒はシャンパンに似て、その芳香はみずみずしく飲みやすそうだった。
「ロズに~あげた羽根を~、天に振れば~近くにいるワタシの仲間が助けてくれるのよ~。もちろんワタシもロズの味方よ~」
ふふふっと笑い続けるウィルの様子は完全に酔ってしまっていて、足元も覚束ない。
椅子に座らせて水を飲ませたいが、場所を移動すればノワとはぐれてしまう。
「ロズ様、お待たせしました」
「ノワっ!!」
ノワの姿にホッとして、酔っ払いの介抱を相談しようと振り返った一瞬でウィルの姿は消えてしまっていた。
「……あれ、ウィル?」
近くを見渡してもウィルの姿は無く、あの美しい翼の端も見つからない。
「ロズ様、どうしました?」
「……髪飾りに貰った羽根のお礼を伝えてなかったの。綺麗な羽根でしょ」
ウィルの心配はあるが、一瞬で姿を消す程動ければ心配ないだろうとロズは自己完結する。
ノワは不思議そうに羽根を眺めると、思い出したように手を叩く。
「魔王様がお呼びです。バルコニーに移動しましょう」
冷えないようにとロズの肩にストールを掛ける。
ぶつからないように移動するが、魔族の数はロズが広間に来た時より多くなっていた。
バルコニーの前にはレフィナードが立ち、ロズを見ると鼻で笑う。孫にも衣装と言いたげな表情だった。
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