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第二章 メモリー&レイルート

神林慎一郎、身バレする…!?

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 目が覚めて、最初に目にしたものが自分が好意を抱いている女の子の笑顔だったら、それはそれは目覚めが良いことだろう。

 だがそんな経験が出来るのは、彼女持ちか、既婚者か、ラブコメのように毎朝家に来てくれる幼なじみがいる人間だけだ。

 だから今、俺は笑顔で起こしてくれたカナの顔を脳裏に焼き付けようとこれでもかと凝視していた。こんな貴重な経験中々無いからな。

「チ、チロ?私の顔に何かついてる?」

「いや、可愛いなぁと思って。」

「っ……!!」

 ボッ、と火がついたように赤面するカナ。あまりに恥ずかしかったのか、顔を覆って俯いてしまった。やっぱり可愛い。

「そ、そうゆうの恥ずかしいから、…あんまり言わないで。」

「はーい。」

 赤面アンドジト目のコンボで呟くカナ。本当に可愛い。

「もうそろそろ行くよ。久しぶりに私達のお城に着いたんだから。」

「おー、そうだね。」

 茶番はこの辺にと、カナが話を切り上げる。

 中央の国。俺らのホームグラウンドであり、俺らが暮らす城もある。だが実は俺がこの中央の国に来るのは始めてである。

 始めてこの世界で訪れたのが、東の国。そこではドッジボールをしたり、カナと初めて一緒に風呂に入ったりした。

 次に訪れたのが西の国だ。ナオとニシに出会って、野球拳をしたり、ナオにセクハラを注意されたり等があった。

 そして北の国。野球対決だったりレイとまあ色々したりした。

 自分達の家とも言えるこの場所に、様々な国を巡った後に訪れる。何とも変な感じだ。

 そんな感想を抱きながら、俺は初めて中央の国の大地に足を踏み入れる。……その時だ。

「よう、会いたかったよ、……神林慎一郎。」

 その名で呼ばれて、心臓が飛び出しそうなほど驚く。そしてその名を呼んだのは…。

「友人のナオから話は聞いているだろ?…私が南の国代表のミミだ。よろしく頼むぞ。」

 そこにいたのはスレンダーで背も低く、だが負けん気が強そうな目をした、燈色の目と髪の少女。南の国代表ミミだった。

「な、何でお前がここに…?」

 南の国代表のミミ。彼女には絶対に会ってはいけないと、ナオにそう言われていたが、…まさかここで会ってしまうとは。

 それに彼女は俺を“神林慎一郎”と呼んだ。何処で知ったかは知らないが、つまり俺の正体も全部知っているということだ。

 そうつまり、ナオがミミには会ってはいけないと言っていた理由は、ナオ同様に俺の正体を知っている彼女にセクハラ等がばれたら何をされるか分からないからだ。と俺はそう解釈する。

 だが俺はナオに言われてから、何もやましいことはしていない。……何も、してない…はずだ。

 いや、あの後も何度かカナとお風呂に入った。だがこれは一緒に生活している以上仕方の無い事なのでノーカン。

 その後もカナ以外に、レイとユキと四人で温泉に行ったが、これも親睦を深めるためなのでノーカン。

 またその後にレイともう一度一緒に風呂に入って、抱き合って、一緒に寝て……。これは、アウトか…?

 やってしまったと、そう恐怖で震える俺に、ミミは言葉を投げかける。

「まあ、そんなにビビるな。別にお前を殺そうとかそういうわけではない。ナオから色々聞いただろうが、あれは全部勘違いだった訳だ。お前を監視したりしてたが特に変な事はしてなかったしな。」

「え、あれはセクハラには含まれないと?」

「セクハラ?…何でそんな話になったかは知らんが、まあ私も年頃の男子の気持ちは分かる。そこまでヤバイ事じゃ無いなら別に咎めはしない。」

 レイの言葉に心底安堵する。だがヤバイ事のラインが俺には分からないので、やはりまだ変な行動は慎んで行動しなければいけないな。

 等と考えていると、この場の会話についていけないもう一人の人物が口を開く。

「ねぇ、今何の話してるの?全くついていけないんだけど…。」

 会話に入れなかったカナは暇そうに欠伸をしながらそんなことを問う。それを聞いたミミはカナの方に向き直って答える。

「ああ、カナさん。じゃあ質問だが、アンタはチロさんに風呂を覗かれても別に構わないと思っているか?」

「?、そりゃあチロも女の子だし。」

「あれ?もしかして知らないの?」

 ぼーっと話を聞いてた俺だったが、会話の流れに不穏さを感じた俺は速攻でミミの方に振り返った。

「チロさんは本当は男……」

「止めろっ!!これ以上喋るな!!さもないと犯す!!」

 そう叫んでミミの発言を俺は妨害する。場の空気は凍ったが、それでいい。俺の正体がばれなければそれで…。

「…女の子だったらそんな発言、絶対にしないと思うけどな。」

「え?チロって男の子だったの!?」

 駄目だった。ばれた。身バレした。

 ……これからどうなってしまうのだろうか?

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