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第五章 キングダムインベードミッション
キャー///エドさんカッコいー!
しおりを挟む「……して、レイさんは拐われてしまったと」
「……すいません、自分が不甲斐ないばかりに……」
時は夜明け前、クアがレイと共に姿を消した後、俺達はトンネルを進みレイを探したが、最奥は何もない行き止まりであり、レイの姿も見つからなかった。
俺達と別れ、別ルートを進んだ2チームも目ぼしい成果は上げられなかったようで、今回の王城侵入作戦は失敗に終わったのであった。
「いや、慎一郎、お前は悪くない。……まさかよりによってクアと出くわしてしまうとはな……」
「クアと決戦前夜に対面するのは初めてのケースですね」
「ああ、……前向きに考えれば未来は良い方に変わっている」
ナオとエドは神妙な面持ちをしながらもお互い視線を合わせ目を細める。
「しかしレイさんを失ってしまったのは、相当な痛手です。……もう一度、時を戻してやり直しますか?」
「ああ、だがそれは今じゃない。明日の世界大戦はこの時間軸で迎える」
エドのその意見に、ニシが挙手して割って入る。
「なあ、そうはいってもや。レイさんがおらんくなってしもうて、世界大戦はそのまま行われるんやろか?自分が東の国の側近になる前もアズが、……なんやったか、リム、やったっけ?あの阿呆。ソイツを側近として連れてきたから何とか開催出来たわけで、北の国に側近がおらんってなったら開催できひんとちゃうんか?」
「それは、どうでしょう。しかし王国としては何としても大会を開催したいはずです。……レイさんを誘拐したのは何か考えがあっての事なのか、それともクアの苦し紛れの最後っ屁だったのか。どちらにしても簡単に開催を止めることはしないと思われます」
「……そか」
「…………ねぇ、明日のこともそうですけども、今回の潜入捜査で、何か他に収穫のようなものはなかったんでしょうか?」
七海が声を上げ意見を述べる。
「ああ、そうだな。私、チームエドは道中で近衛兵、孤高のリアと交戦した。……苦戦したが何とか撃破した。しかし今回も王国の秘密兵器を見つける事が出来なかった。以上だ」
「……なーんにも無いように言いますけど、“孤高”の能力って、「この世で一番強い力を身につける」じゃなかったですっけ?何で当たり前の様に打ち負かしてるんですか」
「……奴が最強だったのは、前の時間軸での話だ」
「キャー///エドさんカッコいー!!」
「……茶化すな」
エドは低い声で七海の事を制すると、俺に目配せをした。俺の方を見て、七海は申し訳なさそうに俯く。……ああ、レイを失ったショックで、俺はまだ暗い顔をしてたみたいだ。
「……いえ、お気になさらず。レイを守れなかった俺に悲しむ資格はありませんから。……今はレイを救うために、未来の話をしましょう」
そうだ、くよくよしてる暇はない。今俺に出来ることは、レイを救うためにどうするかだ。
「よう言ったな!慎一郎!そや、惚れた女の為ならばたとえ火の中水の中、その意気やで!」
「あ、あざす……」
なんとなく、ニシさんに下の名前で呼ばれるのが気恥ずかしくて、コミュ症が発症してしまいました。
「ところで今のアンタ、ああ、エドの方な。エドの話を聞いて、思ったことがあるんやけど……」
そう前置くとニシはアゴに手を当て目を細め、
「……おそらくやけど、王国側はエドの動きを監視して、秘密兵器とやらに近付けないようにしとるんやないか?」
ニシは核心をついたように人差し指を立ててドヤッとした顔をする。
「……それは、何故……?」
「なんとなくアンタらの口ぶりからや。今までのループは、全何回やっけ?まあええわ。その今までのループで、リアなんちゃらとエドは何回戦ってるか、覚えとるか、ナオ」
「はい、そうですね。今までのループ11回中、3回です。今回を含めると4回、そして3連続です」
「ほらな?おそらく近衛兵で一番強いであろうリアを途中からやけど意図的にエドとぶつけてる。尚且つその秘密兵器がエドの手に渡らんように場所をかえてるんやろ」
「……もし本当に気付いているのだとしたら、これは由々しき事態だ。今まではただ交代で門番をしているだけかと思っていたが……」
「まあ、今言ったのも可能性の話や。ただ、何かをしようとするなら、いつだって最悪の可能性をしとくべきってことや。楽観視だと足元までは見えへんからな」
「……申し訳ないが、自分の性分からして、どうしても物事を悪いようには考えられない。ニシさんが考える、最悪の可能性を、どうか教えてほしい」
とても珍しいエドさんの頭を押さえ悩む姿。その姿を横目にニシはフッと鼻を鳴らして言った。
「……せやな。王国からしても、エドは目の上のたんこぶみたいやし、……エド殺害計画でも考えてるかもなぁ……」
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