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■お手紙■冬の終わり

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【アツアツがまだまだおいしい、冬の終わりのお料理お手紙】


Dear アキヒトさん


 お正月にこっちに帰ってきたときに振る舞った、栗とイチジクの砂糖漬けがとてもおいしかったのね。
 電話で、「またサクラの作った栗とイチジクの砂糖漬けが食べたい」といってもらってばかりで、もちろん、とてもうれしい。
 春になって大阪からもどってきたら、アキヒトさんのために、毎日でも作ってあげるわ――と、いいたいところだけれど、食材には“よい季節”というものがあるからね。
 ふふ。
 すっかり、偉そうなことをいうわたしになりました。

 話を急に変えるわね。
 ニンジンは切れるようになっていたけれど、ダイコンは上手に切れる自信がなかった。でも、冬の料理に、おいしさをプラスしてくれる柚子を加えて食べてみたくて、ダイコンに包丁を入れてみたの。
 冷蔵庫に常備しているピクルス瓶にもダイコンを入れたかったし、梅やショウガをのせて食べても、ダイコンはおいしいから。

 ダイコンは、お鍋料理に入れてもおいしいけれど、冷蔵庫に保存しておくレギュラーとして、なにか簡単なレシピはないかなと思って“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”を開いてみました。
 いっぱい、あった。
 その中で、わたしがよいなと思ったのは、ダイコンを甘い酢に漬けるもの。
 ピクルスとは少し違った味つけが、食卓にあってもいいかなと考えていたので、さっそく酢に甘い味を足してみた。

 まずは数日おく必要があったし、天日干しなんて生まれて初めてやってみたけれど、完成したダイコンの甘酢お漬けものは、とってもおいしい!
 昆布もちゃんと使いました。
 冬の寒さの真っただ中、アツアツの緑茶とダイコンの甘酢お漬けものが元気をくれました。
 寒さに負けないパワーをくれるお鍋料理やおでんは、外食でもダイコンの味を楽しませてくれるけれど、自分で作ったダイコンの甘酢お漬けものは、家でしか楽しめないので、それを口にするときは、なんだか“特別な時間だな”と感じている。

 柚子とダイコンの組み合わせを楽しみたかったという話はしたけれど、柚子だけを使って、柚子ジャムを作ってみました。
 同じ本を持っているから、気づいたかもしれないけれど、“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”にのっていた作りかたを見ながら柚子ジャムを作りました。
 まえは、イチゴのジャムを作るのが怖いといっていたくらいだったのに、今ではすっかりジャム作りにハマっています。
 ジャムは、砂糖を入れて、お鍋で煮るだけでカンタン、カンタン!

『料理は身構えたらダメだ。それじゃ嫌いになる。楽することだけを考えたほうがいい。あとは、おいしいって感じるだけでいい』

 本当に、アキヒトさんのいう通りだわ。
 普段あまりスーパーの売り場でも注目していなかったけれど、キンカンを買ってきたの。キンカンを砂糖に漬けたものがおいしそうだから。
 気づいた?
 これも、“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”に作りかたが掲載されていたからです。

 大豆を茹でて、お味噌を作る方法も本にのっているわね。
 今年は、まだちょっと、わたしでは自家製お味噌を作るのはむずかしいかもしれないけれど、来年の冬は、手作りのお味噌と野菜と豚肉で、おいしい豚汁をアキヒトさんに振る舞いたいわ。
 冬の寒さが“おいしい”を運んできてくれそうなメニューでしょ?

 今年の春夏秋冬は、お互い別々で“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”を楽しんでいたけれど、もうすぐまた春がくる。
 アキヒトさんが帰ってきて、今度は二人で“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”を楽しみたいな。

 お料理作って振る舞うのが楽しいし、二人の新居に、たくさんのお客さまがきてくれて、みんなも“四季がうれしくなってくれる”といいな、と思います。

 まずは待ってるね。
 このお手紙を持って、二人の新居に帰ってきてくれるのを。
 ちょっとはやいけれど、いわせて。
 おかえりなさい、アキヒトさん。


From サクラ



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