忘却令嬢はペットになりました

まりあんぬ

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3日経過したがなぜか私は貴賓室を追い出されていない

食事はやや簡素になったが一日一回、早朝に執事長が運んでくれる
三食分、ということでプレートにたくさん用意したものを渡してくれるのだが、夜にはパンは硬く、スープは冷たくなってしまう

そして気になることがもう一つ、、
なぜかカイン様は私に会いに来ない

一度、執事長に
「いらしているのは伯爵夫人のみですか?」
と尋ねると
「いえ、タウンハウスにはご子息様もいらしてます」
と答えてくれた為
「ご子息様は、、何人かいらっしゃるのですか?」
と探ったところ
「いえいえ、お一人だけですよ」

と答えてくれた
執事長は疲れているせいか少しだけため息混じりにぽそりと愚痴る

「伯爵様ご夫婦はあまり仲がよろしくなかった為、、早々に別居状態になってしまっておりましたので」

その言葉からは喪中に王都へ来た夫人に対する落胆のようなものを感じた

「そうなのですね」

私の返答にハッとしたのか少し狼狽えた後執事長は部屋を去っていった

この会話で私がカイン様に買われたことは確定したわけなのだが、、
どうして来ないのだろうか
いやまぁ、、どんな方かわからないしこのまま一生会わなくても良いならそれに越したことはないのだけれど

盗聴した内容を本当は書き記したいけれど、もし見つかったらまずい為頭に焼き付けるしかない情報をなんとか整理する

この家ではざっくり二手に勢力が分かれており、
故人の伯爵様派と伯爵夫人派がいるようだ
そして執事長は伯爵様派
侍女長は伯爵夫人派のようだ

そして私のことを今までも面倒を見てくれていた方々は基本伯爵様派なようだ
ただ、タウンハウスは伯爵夫人がよく使っているようで
伯爵様派はやや劣勢のようだ

そして今日の盗聴で得た新情報は、カイン様は遊び人タイプなようで
あまりタウンハウスに滞在していないようだ
ほぼほぼ寝に帰っているだけで

私を買ったことは忘れているのかもしれない

それと気になる点として、辺境伯領地についてだ、、
伯爵夫人も、その息子もこちらに来ているとしたら今どういう状態なのだろう
執事長は伯爵様の補佐として長いこと辺境にいたようで、、辺境の地をとても心配しているようだ
辺境の冬は本当に厳しいというのに、、
とよくブツブツ呟いている声が聞こえる

そんなことを考えているうちに出来上がった刺繍を確認する

「筋力強化、、うん、よし」

実は、最近脱走のためのロープを作っている
ハギレやハンカチ用の布をたくさん縫い合わせた簡素なものだが無いよりは絶対にいいはずだ
降りる時の腕力を心配しながら作ったせいか筋力強化が付与されまくっている

こないだ血を取られた時に何に使われるのか怖くなり、今部屋にある本の中からいくつかそれらしいものを調べていたのだが
生贄だの悪魔召喚だの怖いものしか出なかった

それでふと思ったのだ
今の生活に不満はなかったが死にたくは無いなぁと
逃げた先でどうなるか分からないが、それより目前に迫る死の方がやはり怖い
ということで、先日執事長に逃げないと言っておいてなんだが、、
一応準備だけしている
もちろん今すぐ使うつもりはない

万が一の時の予備のようなものだ


ーー
ーーー
ーーーー


その日の夜
寝支度をしているとガチャガチャと鍵が開く音がした
こんな時間に、、どうしたのだろう?

私を訪ねてくるのは執事長くらいだ
そう思い扉に近づきハッとする
少し手間取っている、、
それに、執事長はいつもノックをして声をかけてから解錠する
違和感を感じて後ずさる
何かを踏んだ感覚に足元を見ると私が日中紡いでいるロープが見えた

ぐっとそれを握るとテラスに走る
初めて開いた窓に入り込む外気
流れ込んできた冷たい空気に初めて冬というものを体感する


そして私のいる部屋がこんなに高かったのかと月の近さで感じる

やはり見下ろすと思ったよりずっと高い
ベランダの柵に必死にロープを結び外に垂らす
ハッハッとはやる鼓動の中グッと身を乗り出す

「つーかまえた」

耳元で囁かれた声にざわりと背筋が凍る
強いお酒の匂いが鼻腔を満たし
振り返ると視界いっぱいに真っ赤な髪が広がる
暗いはずなのに月明かりできらりと光るエメラルドの瞳が妙に印象的で目が離せなくなる

「へぇ、、もしかして君、逃げようとしてた?」

グッと腰に回された腕が締め付けるように私に強く絡む

外に目を向けながら私は高さの半分にも満たないロープに

なんだ、どっちにしろ逃げられないんじゃない

なんてことを思いながら部屋の中に引き摺り込まれる
あんなに勢いよく開け放った窓も閉められ、月明かりによって明るく照らされていた部屋がまた暗くなる

なんとなくじんわりと汗をかく
暗くても彼の目は爛々と光って見える
まるで猛獣の檻に入ったような気分だ

彼は口角を上げてニヤリと笑い私を舐め回すように見る

「喜びなよ、ようやくご主人様が来たんだ」

ヘラヘラと笑いながら両手を広げる
右手にはお酒が握られている

「、、、どうして今まで放っておかれたのでしょうか?」

私は震える手を握りしめて落ち着いたトーンで返す

やはり、彼が私を買った主人なようだ

「ごめんねーぇ寂しい思いさせてー」

ヘラヘラと笑う彼にこちらはより一層緊張感を高める

私を買った意図を汲み取らなくては
女性としての何かを求めているのならば、こちらに来てから会いにくるまでの数日間の説明がつかない
つまり、私に求めているのはきっと、、
魔力ではないだろうか

レストは私に対して魔法を使えないはずがないと言っていた
つまり見る人が見れば私に魔力があることが分かるのかもしれない
私は目を瞑り、手に魔力を集中させる

「うん、とりあえず脱げよ」

かけられた声に驚いて目を開ける

「聞こえなかった?
奴隷なんてやることそれくらいでしょ??」

確かに、、そういう場合は多いのだろうけれど
環境といい、待遇といい、、なんとなく違う気がしていた

「何をモタモタしてんの?
ご主人様を待たせんなよ、はい、早く脱いで
犬みたいに這いつくばってくんね?」

机の上に腰掛け足を組みながら酒の瓶に口をつける
ゴクリと飲むと私の事を上から下までまたじっとりと舐め回すように見る

窓も閉め暑くなったのかジャケットを脱ぎネクタイを緩めた

その時、ジャケットの胸ポケットから何かが飛び出し、私の足元にまで転がってきた

カツンと当たったそれを思わず拾い上げ、ドキリとした
刺繍にまでしたのだ、はっきり覚えている

それは確かに、レストから受け取ったブローチと同じ家紋だった

「、、これ、、、」

思わず呟くと彼はあぁと声を上げる

「ずっとどこいったのかと思ってたんだよ
そっか、葬式の時つけてぇー
飲みに行くとき外したんだった」

そう音としては入ってくるが、私はそれどころではない

どういう事?
なんでレストとこの人は同じ家紋を?
レストは、この家の関係者という事?

本の賢者の、子孫的な家系なのかな?
あぁ、だったらあの絵本の存在の説明もつくかも??
いや、だとしたらあの絵本は家宝にすべき凄いものなのでは?

なんてグルグル考えているとグイッと顔を掴まれる
いつのまにか目の前まだ来ていて驚く

「なぁ、おい聞いてんのか?
脱げって言ってんの
なに、それとも脱がされたいわけ?」

口ごと顔を掴まれている為返事が出来ない

「てめぇは、奴隷な訳、、分かる?
俺の愛玩動物だろ?さっさと言うこと聞けよ
一々煩わせんじゃねぇよ」

突き飛ばされるように離され床に倒れ込む

上から威圧的に見下ろされると本当に伯爵夫人とよく似ている

震える手でナイトウェアに手をかける

「いいねぇ、やっとその気になった?」

やっぱり、、私はそういう目的で買われただけだったのか

奴隷として、この男に消耗されながら生きていく、、
今までの努力を全否定されたような絶望感に一筋涙が頬を伝った

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