忘却令嬢はペットになりました

まりあんぬ

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14 間話 婦人の企み

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バリィン

投げつけられたカップが割れ、中に残っていた紅茶が床にシミを作る
カップを投げつけられたローブの男はやれやれと言った具合に首を振る

「私に当たられても困る
ご自身の身から出た錆では?
ご子息の教育に失敗したとしか「黙りなさい!」

言葉を遮るように怒鳴りつけると伯爵夫人はワナワナと怒りで震える拳を握る

「貴方に、一体いくら支払ったと思っているの!!」

フーフーと肩で息をし、ギロリと睨みつける伯爵夫人に付き合いきれないというように黒いローブの男はため息をついた

こんな予定ではなかった
そもそもあの老ぼれ伯爵が、息子に爵位を継がせないと言い出した所から全てが狂ったのだ
魔石の眠るあの山が私のものになると思っていたのに

「私はこの件から手を引かせてもらう」

その言葉に伯爵夫人はハッと笑い声を上げる

「そんな事をしていいと思っているの?
貴方、魔塔主になりたいのではなくて?」

禁術に手を出したのだ、この男だってもう後に引けないはずだ
人を魔石に変える古代魔道具
しかもその魔石を飲み込めば自身の魔力量を大幅に増強することができる
それも一生に渡って
あの女の魔力量は想像を絶する数値だった
この男と分けて息子に与えても十分にあの下賎な男レストを上回る魔力量を保持できる

このローブの男も、そうやって己を増強して魔塔主にでも上り詰めようとしていたのだろう

「奴隷1匹どうこうしようとしたとて、大した罪になるまい
そもそも、私と貴女の繋がりなど、、誰に知られようか」

パチンと指を鳴らされるとぐちゃりと男の顔が変わる
もう何年もの付き合いになるその男の変貌に思わず目を見開く
慌てて魔法契約を交わしている書類に手を伸ばす
魔術で縛られた契約は嘘をつけないはずだ
しかもこれは血で結んでいる

「ふっ、、、ふふふっ貴女も可愛らしいお人だ、こうなってもまだそんなものにしがみつこうとは」

パチンと指を鳴らすと紙がジリジリと燃え始める

「それに、私の血が使われているとでも?」

50代くらいだったはずの男の見た目は今は20代くらいの若い男のものになっている
きっとこれもまやかしの姿なのだろう

「、、あの魔術が何なのかは知りたいところだが、今はまだ足がついては困るのでね」

そう一言残し男は闇に消える

悔しさのあまりギリリと食いしばった口内にジワリと血の味が滲む

息子はあの日、膨大な魔力が一気に体に流れ込んだせいで昏睡状態

あの奴隷は意味の分からない魔術に身を包んでおり手も足も出ない状態だ
あの糸は切ることも燃やすこともできない
玄関ホールに張り巡らされた糸を外すことも出来ない為出入りは厨房裏にある勝手口か窓しかない
使用人はそれでもいいだろうが
この私がそんなところから出入りするだなんてありえないことだ
つまりこの屋敷から出ることが出来なくなった

事が済んで仕舞えば、息子は当主になり奴隷の1人どうこうしたとて簡単に揉み消せただろうが
今はまだダメだ
現状ではレストが当主になる可能性の方が高い

つまり、当主の私有財産に手をつけたことになる
となれば多少の制裁は間逃れないだろう

「私は、、失敗作なんかじゃないわ」

絞り出された声が妙に寂しく部屋に響いた


ーー
ーーー
ーーーー

リリーは握りしめた手紙を鎧を纏った男に渡す

別に、主に世話をしていたとはいえ彼女に特別な感情を抱いているとかでは無い
ただ、伯爵夫人とその息子が今後自分を大切にしてくれる可能性が極めて低いことを知っているだけ

平民な自分は自分の仕事はきっちり済ませるし人一倍働く
しかし花嫁修行に来ているどこぞのご令嬢達の方がはるかに良い待遇を得ている

今後のパイプ役
きっとお貴族様にはお貴族様の世界があるのだろう

しかし、今を生きる私からしたら平民出身の方が当主様になった方が色々と期待出来る
会ったことはないが、執事長があれだけ肩入れしているということはしっかりした人なのだろう
執事長は元々辺境で故伯爵様のサポートをしていた人だ
亡くなったと同時に息子に引き継ぎをしタウンハウスに自ら移動してきたらしいが
頻繁に連絡を取っていることは知っている

伯爵夫人が、辺境と連絡を取れないようにと自分の息のかかっていない使用人や執事長を軟禁してしまったのだが

たまたま私は逃れた
というのも、部屋の掃除に入ると奴隷様が私に刺繍ハンカチをくれた
といっても机の上にいつもありがとうという手紙と共に置かれていたのだが
私の家は目玉が飛び出るほど貧乏なので、申し訳ないが休暇の日にそれを売りに街に出たついでに久々に家に帰った

そして翌日、タウンハウスに戻ると玄関ホールがとんでもないことになっており中に入れない
なんか、、変わった趣向のパーティでも開くのだろうか?
飾り付けが斬新だなぁ
とか呑気に思いながら裏に回るとちょうど平民出身の使用人達のほとんどが集められ、部屋に閉じ込められているところだった

私は最近雇われたばかりということもあり
特に気がつかれることもなく

全員閉じ込めた、という事になったようだ

私は少し思案した後、辺境宛に手紙を書き
速達という形で傭兵ギルドに手紙を届ける事を依頼した

刺繍入りのあのハンカチ、魔術付与されているとかで高く売れてよかった
そのお金を元手に手紙を出したのだ
内容が内容だし、、きっとすべてが解決したのち、お手当が貰えるはず

「どうしようかな、、」

ボロボロの実家と軟禁を天秤にかけ、、

「うん、軟禁の方が、、食事とか寝床とかしっかりしてる可能性高いな」

私は何食わぬ顔でタウンハウスに戻る事にした

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