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6、分からない
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城崎side
細谷は戻ったか。
さて、どうしようか、あれから夕紀は俯いたまま、
顔を覗き込むと目を泳がせ異常な汗をかいている。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
息も荒れてるな、
このままいても仕方がないので、夕紀に目線を合わせ腰に手を添えた。
「夕紀、大丈夫か?」
声を掛けた途端目を大きく見開き、逃げようとした。
急いで腕を掴み捕まえる。
「夕紀、大丈夫、大丈夫だから落ち着け、」
声を掛けるが聞こえていない。
力ずくで抱きしめ夕紀が落ち着くのを待った。
呼吸は落ち着き逃げようともしなくなったが、次は体が震え出した。
寒いのかと思ったが、俯いてまた目を泳がせている。
何かに怯えてる?
落ち着いている今のうちに移動しようと思い、夕紀を抱え保健室に向かった。
今日、養護教諭は出張でいないため勝手に入り異常な程の汗をかいているため体を拭き、貸し出し用の服に着替えさせた。
服を脱がした時夕紀の左手首に傷を見つけた。
リストカットか…
夕紀はさっきからずっとブツブツ独り言を言っている。
「やだ、やだ、ごめんなさい、言わないで、やだ、やだ…」
何が嫌で何に謝って、何を言って欲しくないのかが分からない。
相変わらず体の震えは治まらないままだ。
また逃げられたら困るので、向き合い抱きしめ背中をさすりながら声を掛けることにした。
「夕紀、」
夕紀と目が合ったことを確認してから話し掛けた。
「夕紀、大丈夫。何も怖くねぇよ、大丈夫。大丈夫…」
最初は俺から逃げようともしていたが徐々に力が抜けていった。
夕紀の頭を俺の肩に置くよう促した。
「夕紀、大丈夫?」
「大丈夫です。すみませんでした。もうしません。ごめんなさい。」
だんだん泣きそうな声になりながら訴えるように言ってきた。
「何に謝ってるんだ?」
夕紀の体がドキッと跳ねたのを感じた。
「……ごめんなさい。えっと、えっと、僕が…」
「俺は怒ってないぞ。んで、何に謝った?」
夕紀は俺が怒っていると思っていたのだろう。
驚いたようなまん丸とした目で見上げてきた。
「僕が、ちゃんと走らなかったこと。
細谷を止めたこと。
先生から逃げようとしたこと。」
夕紀は詰まりながらも最後まで話してくれた。
「まず1つ目な、夕紀はわざと走らなかった訳じゃないだろ?」
「うん、」
「俺は手を抜くやつは嫌いだ。けど頑張ってそれでも無理だったやつは嫌いじゃない。頑張ろうって思えたことがすごいことだと俺は思う。分かるか?」
「うん、」
「2つ目な細谷を止めたって言ってっるけど、細谷は自分の意思で止まったんだと思う。だからそこには責任を感じる必要は無い。」
「けど…成績が…」
「細谷は普段から頑張れるやつだと知ってる。
だから、今回のことで減点する気は無い。
んで、3つ目な俺から逃げようとした。何故逃げようとしたんだ?」
「それは…えっと、えっと、」
また俯いてしまった。
「何故逃げようとしたか教えてくれないならちょっと怒るかも」
「え…えっと、えっと…」
ちょっと意地悪し過ぎたかもな…
「えっと、怒られると思った。あと…親に言われると思った。だから、逃げた。」
怒られると思ったから逃げたのは大体分かっていたが、
親に言われると思ったから逃げた?
どういうことだ。
「親に何言われると思ったんだ?」
「授業ちゃんと受けなかったこと。
あと…迎えに来させる。」
なるほど、親に怒られたくなかったのか。
ん?親に迎えに来させる…?
「親に迎えに来て欲しくないのか?」
「うん、」
「どうして?」
「言いたくない。」
「どうして?」
「先生、親に言うから」
「言わない。他の先生にも言わない。
それなら教えてくれる?」
夕紀は数秒俺の目を見つめ本当かどうか確かめている。
「ごめんなさい。言いたくない。」
「そっか、分かった。じゃあそれはもう聞かない。
でも1つだけ先生のお願い聞いてくれる?」
これ以上聞いても余計警戒されると思い聞くことをやめた。
「なに?」
「夕紀の左手首の傷、俺に手当てさせてほしい。」
夕紀は左手首を後ろに隠しオロオロしながら俺の方を見ている。
「はい、手出して」
消毒液と包帯を準備し横に座る。
「いや、違う。えっと、これは、その…転んでそれで剃って、それで、」
「うん、分かった。でも、手当てはちゃんとしような、はい」
夕紀は渋々俺の手の上に手を置いた。
浅いリストカットでは死にはしないがきちんと手当てをしないと雑菌が入って大変なことになる。
「ちょっと痛いが我慢しろよ」
「もういい!!もういい!!」
痛かったのだろう。まぁそうだろうな、きちんと消毒ができていなかったのだろう傷口が膿んでいた。
「もうすぐ終わる。我慢しろ、」
手当てが終わった頃には夕紀の目からは涙が溢れていた。
手で涙を拭い、優しく抱きしめた。
「頑張ったな。偉かった。
言いたくないなら無理強いはしないが、辛いなら辛いって言え。さっきみたいに叫べ。な?」
「違くて、僕は大丈夫で大丈夫だから大丈夫だから…」
「そっか、そっか…よく頑張ったな、」
夕紀は泣きながらも大丈夫だと言うのをやめなかった。
大丈夫だと思いたいんだろうな…
夕紀が壊れる前にどうにかしないとな、
細谷は戻ったか。
さて、どうしようか、あれから夕紀は俯いたまま、
顔を覗き込むと目を泳がせ異常な汗をかいている。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
息も荒れてるな、
このままいても仕方がないので、夕紀に目線を合わせ腰に手を添えた。
「夕紀、大丈夫か?」
声を掛けた途端目を大きく見開き、逃げようとした。
急いで腕を掴み捕まえる。
「夕紀、大丈夫、大丈夫だから落ち着け、」
声を掛けるが聞こえていない。
力ずくで抱きしめ夕紀が落ち着くのを待った。
呼吸は落ち着き逃げようともしなくなったが、次は体が震え出した。
寒いのかと思ったが、俯いてまた目を泳がせている。
何かに怯えてる?
落ち着いている今のうちに移動しようと思い、夕紀を抱え保健室に向かった。
今日、養護教諭は出張でいないため勝手に入り異常な程の汗をかいているため体を拭き、貸し出し用の服に着替えさせた。
服を脱がした時夕紀の左手首に傷を見つけた。
リストカットか…
夕紀はさっきからずっとブツブツ独り言を言っている。
「やだ、やだ、ごめんなさい、言わないで、やだ、やだ…」
何が嫌で何に謝って、何を言って欲しくないのかが分からない。
相変わらず体の震えは治まらないままだ。
また逃げられたら困るので、向き合い抱きしめ背中をさすりながら声を掛けることにした。
「夕紀、」
夕紀と目が合ったことを確認してから話し掛けた。
「夕紀、大丈夫。何も怖くねぇよ、大丈夫。大丈夫…」
最初は俺から逃げようともしていたが徐々に力が抜けていった。
夕紀の頭を俺の肩に置くよう促した。
「夕紀、大丈夫?」
「大丈夫です。すみませんでした。もうしません。ごめんなさい。」
だんだん泣きそうな声になりながら訴えるように言ってきた。
「何に謝ってるんだ?」
夕紀の体がドキッと跳ねたのを感じた。
「……ごめんなさい。えっと、えっと、僕が…」
「俺は怒ってないぞ。んで、何に謝った?」
夕紀は俺が怒っていると思っていたのだろう。
驚いたようなまん丸とした目で見上げてきた。
「僕が、ちゃんと走らなかったこと。
細谷を止めたこと。
先生から逃げようとしたこと。」
夕紀は詰まりながらも最後まで話してくれた。
「まず1つ目な、夕紀はわざと走らなかった訳じゃないだろ?」
「うん、」
「俺は手を抜くやつは嫌いだ。けど頑張ってそれでも無理だったやつは嫌いじゃない。頑張ろうって思えたことがすごいことだと俺は思う。分かるか?」
「うん、」
「2つ目な細谷を止めたって言ってっるけど、細谷は自分の意思で止まったんだと思う。だからそこには責任を感じる必要は無い。」
「けど…成績が…」
「細谷は普段から頑張れるやつだと知ってる。
だから、今回のことで減点する気は無い。
んで、3つ目な俺から逃げようとした。何故逃げようとしたんだ?」
「それは…えっと、えっと、」
また俯いてしまった。
「何故逃げようとしたか教えてくれないならちょっと怒るかも」
「え…えっと、えっと…」
ちょっと意地悪し過ぎたかもな…
「えっと、怒られると思った。あと…親に言われると思った。だから、逃げた。」
怒られると思ったから逃げたのは大体分かっていたが、
親に言われると思ったから逃げた?
どういうことだ。
「親に何言われると思ったんだ?」
「授業ちゃんと受けなかったこと。
あと…迎えに来させる。」
なるほど、親に怒られたくなかったのか。
ん?親に迎えに来させる…?
「親に迎えに来て欲しくないのか?」
「うん、」
「どうして?」
「言いたくない。」
「どうして?」
「先生、親に言うから」
「言わない。他の先生にも言わない。
それなら教えてくれる?」
夕紀は数秒俺の目を見つめ本当かどうか確かめている。
「ごめんなさい。言いたくない。」
「そっか、分かった。じゃあそれはもう聞かない。
でも1つだけ先生のお願い聞いてくれる?」
これ以上聞いても余計警戒されると思い聞くことをやめた。
「なに?」
「夕紀の左手首の傷、俺に手当てさせてほしい。」
夕紀は左手首を後ろに隠しオロオロしながら俺の方を見ている。
「はい、手出して」
消毒液と包帯を準備し横に座る。
「いや、違う。えっと、これは、その…転んでそれで剃って、それで、」
「うん、分かった。でも、手当てはちゃんとしような、はい」
夕紀は渋々俺の手の上に手を置いた。
浅いリストカットでは死にはしないがきちんと手当てをしないと雑菌が入って大変なことになる。
「ちょっと痛いが我慢しろよ」
「もういい!!もういい!!」
痛かったのだろう。まぁそうだろうな、きちんと消毒ができていなかったのだろう傷口が膿んでいた。
「もうすぐ終わる。我慢しろ、」
手当てが終わった頃には夕紀の目からは涙が溢れていた。
手で涙を拭い、優しく抱きしめた。
「頑張ったな。偉かった。
言いたくないなら無理強いはしないが、辛いなら辛いって言え。さっきみたいに叫べ。な?」
「違くて、僕は大丈夫で大丈夫だから大丈夫だから…」
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