ホントの気持ち

かんこ

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74、2人きりの夜

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名取side

2人が帰って部屋には空と2人きり、

風呂を沸かそうと動き出したと同時に空が裾を引っ張った。

「どうした?」

「どこ行くの?」

どこでそんな顔覚えてきたんだ。
目を潤わせ上目遣いをする空を見つめ優しくハグをする。

「大丈夫、風呂沸かしに行くだけだ。一緒に行くか?」

空は風呂にトラウマをもってる。
もちろん無理強いするつもりは無い。


「…行く、」

空は戸惑いながらも行くと言った。
本当は行くの怖いのに無理しているのは一目瞭然だ。
だが、リビングに1人でいるのも怖いんだろうな。

「おいで、」

空を抱き上げ、風呂に向かった。
爪が真っ白にになるくらい強く俺の服を握りしめる。

湯船は洗っていたため栓をしてボタンを押すだけだからすぐ終わった。
次からはわざわざ風呂に来なくていいよう栓もしておこう。


リビングにつき空を下ろそうとしたがそうはいかなった。
「空、終わったよ。下りられるか?」

浅い呼吸で目を泳がせている。
「怖かったな。もう大丈夫、大丈夫、」

背中を擦りながら声をかけると静かに涙を流した。
やっぱり空にとってこの家は怖いもので溢れているんだろうな。

何が正しいんだろう。


俺はこうやってそばにいることしかできないのか…
虐待されていたことにも気づかず、
空が目の前で泣いていてもただ見ることしか…
何もできない自分に腹が立って気持ちの行き場を失った。


「陽ちゃん?」

「どうした?」

「陽ちゃんどこか痛いの?しんどい?」

「え?」

空の手が俺の頬に触れる。
濡れた空の手…

え、うそ、気がつけば涙が零れていた。
情けない姿を見せてしまった。
急いで涙を拭い誤魔化すために空の頭を撫でた。

「大丈夫だよ。ごめんなみっともないとこ見せちまって、」

「陽ちゃん、我慢ダメ…しんどい?寝る?ベッドでちゃんと寝る。」

「ありがとう。でも大丈夫、しんどくないよ。」

「ダメ、陽ちゃんはベッドで寝るの!!」

必死に俺の腕を引っ張り寝室に連れて行かれた。
抵抗したらまた泣かせてしまいそうだ。
今日は従うか、

「おいで、」

「え?」
キョトンとする空の腰に手を回しベッドに促した。

「今日から一緒に寝てくれるんだろ?」

「うん、」

「空、眠れるか?」

「うん、」

「じゃあ、おやすみ。何かあったら起こしてくれて良いからな、」

「ありがとう、おやすみなさい。」

空は俺の胸に顔をうずめて目を閉じた。
数時間前まで寝ていたからもしかしたら眠れないかもと思っていたが、すぐに寝息に変わった。
新しい環境で疲れたんだな、
いい夢みれたらいいな。
空のおでこを撫でて俺も目を閉じた。
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