1 / 123
🍸1話.新宿歌舞伎町🍾
しおりを挟む夜の歓楽街の中でも、そこは極めて華々しい。
ギラギラと輝くネオン、色とりどりの看板。
賑やかな音楽は進む度曲を変え、誘惑の呼び込みが慌ただしく、雑多な飲食店が軒を連ねている。
影が深く濃い程いっそおどろおどろしく輝く世界───新宿歌舞伎町。
そこは、あらゆる欲望渦巻く、東洋一のエンターテインメントの街である。
どこかで年の怪しい若者が金の取引をする。
ある少年らは、賑やかな舞台から、少し外れた道へ消えてゆく。
高収入を謳う風俗求人募集のトラックが練り走れば、彼らの姿を人混みへ攫っていった。
眠らない街で、一際派手な城がある。
外壁が寒紫色に輝くのは金と欲望の象徴。
カサ・ディアブロ(Casa Diablo)は、この街最大規模の売上を叩き出す高級ホストクラブだ。
揃えられているのは全て高額酒。
客はセレブ層ばかり。店が客を選別し、キャストが相手をするのにふさわしい身なりかを見定める。
そんな、ほかのホストクラブとは一線を画した舞台の中で───1人だけ、場違いな人物がいた。
「ぁ、·····」
色めく店内の一番端に、終始挙動不審で、時折ボーイに話しかけようとしては言葉を飲み込む客。
初めて見かける者ならば、彼を少女と勘違いするだろう。
女よりも華奢で、年齢は18を超えているかすら怪しい童顔だ。服装は控えめなレースのあしらわれたワンピースで、柔らかく癖のある茶髪が目元を隠している。
好きでもないカクテルをちびちびと舐めながら、なにかに怯えるような視線は、しかし頻りに誰かを探しさまよっているようだった。
「お?お水ちゃん、今月スパン短いねー!?」
通りがかりざまの男の声に、"お水ちゃん"と呼ばれた客は飛び上がるほど驚いて、そして素早く俯く。
そしてギュッとグラスを握りしめたきり外部を拒絶するが、うるさいほど派手な声掛けをしたタトゥーの美男は、特に気にするふうもなくとおりすぎていった。
「お客様ですよね?」
隣を歩いていたのは新人ホストだろう。
先輩ホストが気にかけていった相手をチラと見て耳打ちしたのは、"お水ちゃん"───ミチルが、この店にはあまりにも不釣り合いに見えたからだ。
「女装男子とか男の娘?ていうの?わかんないけど、うちの名物·····じゃなくて(笑)大切な常連のオヒメサマ」
「──が担当だから」と、続いたはずだ。
何処にでも、無慈悲な階級が存在する。
とくにこの世界では、決してヒエラルキーを無視することなどできない。
高級ホストクラブの絶対的エースの名を前に、夜の界隈に精通するものならば、誰もが頷いたきりそれ以上を追求することは許されなくなる。
(また、まだ、こない)
握りしめていたグラスを膝の上に乗せて、人差し指をもじもじ交差する。
ミチルはそっと細い息を吐き出した。
頭の中はグルグルする。
お酒がダメな体質ってわかっているけれど、飲まなきゃいけない。
待ってるねと微笑まれて、約束した時間はとっくにすぎてる。もう来ると思って冷や汗を滲ませるのを、何度目か分からないくらい繰り返している。
(今、何してるの?)
メッセージを打ちたくてスマートフォンを取り出した時、通路の向こうから黄色い笑い声が響いた。
先端技術を施した顔にメイクをして、豊満な胸をはだけさせた、セレブで大人な女性達のものだ。
途端に全身が震え出す。
(嫌)
会えると思ってたから一睡もできていないし、お風呂も3回入った。
今日会えないと、寂しくて耐えられない。
だって、もうこの夢は、長くは続かない。
(誰かに、呼んでもらって、こっち来てもらわないと)
そうじゃないと、駄目なのだ。
早く傍に来てくれないとおかしくなってしまう。
こんな気持ちは嫌だ。胸の奥が切るように痛くて、切なくて、消えてしまいそうだ。
立ち上がりかけた時───果たして壁の向こうから、背の高いシルエットが姿を現した。
「ぁ」
瞬間、音楽が遠のく。
ストライプのスーツからハーフアップのワインレッドまで、全身がダイヤモンドの粉をふりかけたみたいに輝いて見える。
ネックレスと揃いのピアスが少しグロテスクで、神経質に美しい横顔は、男らしい色気と冷たさを閉じ込めていた。
82
あなたにおすすめの小説
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる