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🍸16話.ダンの提案🍾
しおりを挟む絶対に誰にも明かしてはいけないと繰り返した。
ハルキは気味悪がるどころか、初めて本当にこちらへ興味を持ったようだった。
この身体でよかったと思えた。
「生活に支障をきたすほどの精神疾患とこの身体では、どこで働くにも困難でしょう」
ダンが不意に言った。
先程、あからさまにこちらを嫌悪したのとは違う声色だ。
「うちで働いてみないか?」
「·····え·····?」
予想もしない提案だ。
一体どういう風の吹き回しか。首を傾げるこちらをテーブルへ促して、彼は白紙に何やらスラスラ書き始める。
「ここで働くというなら、借用書の年15パーセントの利息は破算しよう。衣食住も十分に用意する」
紡がれるのは、突発的にしてはあまりにも都合の良い条件だ。
次いで取り急ぎの契約書だと渡されたのは、日額と様々な保証だった。
疑うのはミチルの番だった。
「·····なにをしたら·····」
「ああ」
説明しなきゃ分からないに決まってるのに、彼は今更のようにため息を漏らす。
「店内の雑用と、ホストたちのヒアリングを」
「雑用と、ヒアリング·····」
オウム返しに呟きながら、視線は再び契約金額へ。
一番左側の数字は、イチと間違えていないだろうか?
どころか、利息も無くして衣食住をくれるというのなら、ゼロをひとつ多く書き間違えている可能性もある。
「メディアでも活躍するホストらに、女性問題は許されない」
トンと書類を叩き、彼が説明を始める。
「性的娯楽で人を手配するにも面倒が付きまとう。アナタにはそれらのヒアリングを任せたい」
「そ、れって·····」
じっとりした視線がこちらを眺めて、返事を待っている。
多忙且つ女を選ぶのにも苦労する彼らの、性処理係になれということだ。
思い浮かんだのは、顔見知りのホストたち。
熱心な湖の眼差し。そしてタトゥーの首筋が迫ってきた記憶を思い出し、ブンブン首を振る。
「そんな事·····」
「ハルキに」
出来ないと続こうとした台詞は、大切な人の名前に遮られた。
「彼に顔向けできるように、お金を稼ぐんでしょう?」
「ぁ·····」
ハルキへの罪滅ぼしの手段。
この仕事を受ければ、一生会うことの出来ないはずだった彼の側へ身を置くことも出来る。
決めては条件よりも、1つの想慕だ。
契約書へサインして、指紋印鑑まで紙に残したら、ダンは後ろで待機していたスーツの男を呼んだ。
黒服の中でも良く覚えている。
カリスマホスト顔負けの顔立ちとスタイルを無愛想で台無しにしたような男だ。
そして、失禁した時、後処理を任されていた従業員である。
名前をシンヤと言う。
紹介されたら、彼は軽く目を伏せた。
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