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🍸29.おっチャコチャイ🍾
しおりを挟む「社会不適合者って感じで、自尊心低くて、夢見がち。臆病なくせに物分り悪ぃの。繰り返し叱られてやっと立場理解する馬鹿で愚図で·····」
口元を拭うものがない。
バクバクうるさい心臓は、滑らかな車行の音より大きいかもしれない。
彼は、だから今日は興奮したのだと唄った。
「おまんこ叩かれて、愛液とおしっこ下品に漏らしちゃうお水ちゃん。後ろから見たらマジで可哀想でさぁ·····ほんまぶち込んでやろうかと思った」
歓楽街を抜け、広い車道に入った。
人はまばらだ。
乱雑な建物が盾になって、歌舞伎町の喧騒を食い止めている。
「着いた」
高架下は西洋風の煉瓦作りになっている。
地下への入口には、控えめだが洒落たパラペットとネオン。そこをくぐって、ツバサはわざとらしく背筋を伸ばす。
「どうぞ、オヒメサマ」
「·····ランジ、·····?」
暗くて文字がよく読めない。
エスコートされるまま冷たい階段をおりてゆく。
「·····あっ!」
「おっとっとー」
足を滑らせたミチルの肩を、陽気な声ががしりと抱いた。
「自分トロいなぁ。このおっチャコチャイさんめ」
「へっ」
前半は罵倒されて、後半で可愛がるようにいじられた。
おっチャコチャイって、なんだろう。分からないので黙っておく。
「大事な身体傷つけんといて?」
「·····?」
「これからいっぱい飾り付けするんやから」
ニコリとして彼は先を降り始めた。
ステンドグラスと黒格子の扉を開けたら、なかは木造建ての小さな部屋。
妙にキラキラしてるのは、綺麗に並べられた服たちだった。
「·····下着?」
薄くて短い丈のノースリーブ。ひらひらのフリルが着いてるのや、ビーズやラメ、ブラジャーとパンツが透けてるのもある。
ランジェリーショップだ。
「なん、で·····」
「これなんかどう?」
「!」
身体にあてがわれてハッとする。
ぼうっとしていた。
深夜のランジェリーショップ。電気を付けたらキラキラ光って、ネットで見てたようなのがたくさん並んでる。
「ん~、セクシーなのもかわいーけど、フリフリのも良いね」
適当に腕にひっかけてゆくのだ。
服を選ぶ姿すら、舞台俳優みたいに様になってる。今全然関係ない感想を浮かべながら、ミチルは首を振った。
「これ、女性ようの、下着·····」
「せやね?」
語尾の「?」には、それがどうしたのと言いたげなニュアンスがある。
「ラブドールが着るのに、フツーの服じゃつまんないでしょ?」
返答は至って外道だった。
が、不思議とそこまで気にならない。なぜだろうか?
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