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🍸36.あの日の記憶。雨の日🍾
しおりを挟むツバサは吸い残しの煙草を吸殻へ捨てる。
チップは吸殻の下へ。行為中のコトを思い返すと、また下半身が重たくなる。
「しばらく楽しめそうやわぁ」
彼が出ていったあとの部屋には、涼し気な煙草の匂いと、小さな寝息だけが残っていた。
あの日は大雨だった。
風は無い。ただ冷たい雨が暗闇から突然矢のように降り掛かってきた。
隣に、崩れるようにして青年がしゃがみこんできた。
胸元のはだけたワイシャツ姿と、濡れてなにいろか分からなくなったスラックス姿だけの男だった。
背は高くて、肩幅もこちらよりふた周りくらい大きい。
それなのに、雨に濡れて、迷子になった子供のように見えたのは、なぜだろう。
「あ、あの·····大丈夫、ですか?」
腕から血が滲んでいる。
繁華街の路地裏。こんな人が駆け込んできたら、まるでマフィアの抗争シーンの撮影かと思ってしまう。
死のうと思ってる人の横に死にかけみたいな人が来るんだから、放っておけるわけが無い。
思わず声をかけたら、濡れた髪の間から、鋭い視線と目が合った。
涙の膜の向こうでも、強い光を閉じ込めて、突き刺すような光だ。
雨のせいか、ネオンのせいか。雨の音は遠のいて、目の前が酷くチカチカした。
「苦しい」
「えっ」
「誰の目にも止まらないところへ行きたい」
「へ」
同じ日本語なのに、滑らかで淑やかな男の声は、なんだか外国語にも聞こえた。
「きゅ、救急車を·····──あっ!」
立ち上がりかけた腕を引っ張られてバランスを崩す。
(な、なに?)
受け止められて、そのままけが人の胸の中にとじこめられてる。
紫髪からとめどなく冷たい雫がたれる。
見上げた先ではミステリアスな唇が引き結ばれていた。
新手の変態かと思ったが、ぼやけた視界に映る1パーツ1パーツが、浮世離れした美形だ。
ぼうっとしてから、ミチルはハッとした。
「あの、はな、離してくだ、ひぁッ」
「温かい·····」
「·····!!」
硬い腕がこちらを抱きしめてくる。
身体は長い腕の形に歪んで、少し苦しい。
(あ·····)
心臓がとても早足だ。
こんなふうに人と抱き合ったのは初めてだった。
そっと抱きしめ返したのは、ほんの同情心と、胸の奥が疼いたから。
いい香りがする。
切なくて、寂しくて、なんだか色っぽい香りだ。
他人と初めて心を通わせた。
「ぁ·····ッ」
「はぁ·····っ」
「ひ、ぅッ」
耳元を熱くて震えた吐息が掠めたら、雑音は何も聞こえなくなった。
「キミも、なにかから逃げてきたの」
しばらくして落ち着いた声が聞いてきた。
「行く所がないなら、俺の家に来る?」
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