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🍸41.映画のワンシーン🍾
しおりを挟む相手の腕が、一瞬のうちに何者かに取り上げられたのだ。
「───彼女には先約がある」
雑音も遠のくような、深くセクシーな男の声。
目の前に現れた男を見上げたミチルは言葉を失った。
身長は190近くあるだろうか。
まず目に入ったのは、刃の切っ先の如く輝く白銀の髪。高い鼻から一筆で書いたような眉目、髪色と同じく輝く長いまつ毛の奥に、真っ赤なルビーが閉じ込められている。
そこには、あらゆる美の黄金比を掻き合わせて作られたような男がいた。
「な、ん·······っ·····───なんだと?!若造が、私を誰だと思ってるんだ!」
中年男もしばらく目をしばたかせてから、やっと怒りを思い出したようだ。
それ程、誰が見ても気後れするような美貌が目の前にあった。
「ええ、斐田工業株式会社の斐田信茂社長」
(斐田工業?)
聞いたことあるような、無いような。けれども、有名だとしても、普通フルネームで覚えてるだろうか。
名前を言い当てられた中年男は満悦そうだ。
「そ、そうだとも。それを知っていながら·····」
ふんぞり返って、しかし、再び白銀髪の男を見やり、はたと口を止める。
「───···は····───へ?」
ミチルは初めて、人の表情が文字通りサッと青くなるのを見た。
対し、相手はニコリと微笑む。
「堅実なイメージのある斐田工業の社長が、接待先のキャバクラでキャストに声を荒げ、アフターを強要した·····などと、つまらないゴシップが流れては残念だ」
「·····──っ!こ、此度の無礼を、どうかお許しください·····!」
偉ぶった態度はどこへやら。
中年男は怯え切った様子でそれだけ言い残し、店を出ていってしまった。
情けない後ろ姿を見送り、ミチルは呆然と目の前の男を見上げる。
CGみたいに万能のスタイルの持ち主だ。
美の神がいるとするのなら、彼のような見た目をしているだろうか。
(·····あれ·····?)
「怪我は?」
「··········あっ、、はい、ありません·····」
返答を聞くと、相手はこちらを振り向かないまま行ってしまおうとする。
クールブラウンのシャツにシックなスーツがよく似合っている。立ち去り座間サングラスをかけ直すのが、洋楽映画のワンシーンみたいで。
(それで、この人、なんだか·····)
「··········まって·····!」
1歩踏み出して、気がつけば腕を掴んでいた。
そして「あ」と思う。
振り払われる。
しかし、覚えのある予感は外れた。
目の覚めるような瞳と目が合い、彼の腕に縋り付いた手は、必然のように握り返された。
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