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🍸70.感謝と謝罪🍾
しおりを挟むきっと要らないお節介だと、鬱陶しがられる。
どちらにせよ、関わって欲しくないに決まっている。
「す、すぐ、いくから·····」
彼の嫌悪と侮蔑の顔を見たくない。
もうこれ以上、そんな顔はさせないからと心に決める。今はここから離れるべきだ。
息を殺し、逃げるようにして廊下を進み、自分の部屋へ急いだ。
扉が見えてきてホッと息をつく。
ノブをひねるより先に───横からなにか伸びてきた。
それが腕だと気がつくのと、扉に手を置かれるのは同時だった。
「あのさ、俺話しかけたよね?」
「へっ」
頭上で聴こえる力の抜けた声に、体は嘘みたいに動かなくなる。
早足でここまで来たのに、いつの間に追いつかれたんだろう。それだけ彼と脚の長さに差があるのだ。
「何無視してんの?」
寂しいサボンの香りがする。
「ご、ごめんなさい」
「あ?」
立っているのが面倒そうにこちらへ屈んできた男が顔を覗き込んでくる。
「声小さくて聞こえねえや。こっち向いて?」
肩に置かれた手は腕まで覆うくらい指が長い。
力を入れたら無理やり振り返らせることが出来るのに、広い手のひらは恐ろしいほど優しくそこを撫でた。
「ハ、ルくん」
前まで、いつも胸が張り裂けるほど辛かった。
どうして酷いことを言うのか。冷たく突き放して、平気で約束も破られて、その度泣きじゃくっては彼にせがんだ。
彼がそんな風にするのは、全部自分のせいだった。
「いままで、ごめんなさい」
彼の方を振り向いて、俯いたままでも告げる。
「ちゃんと、お金、全部返すから·····っも、もう·····」
まだ不安だ。
いつからか、彼のいない世界なんて、考えられなかった。
「もう、これ以上、迷惑かけないから·····いままで、ごめんなさい·····たくさん迷惑かけて、ハルくんの気持ち、考えてなくて、ごめんなさい」
純愛だった。
今ではもう執着と依存に腐った罰を、捨てなければいけない。
「いっしょの時間は、楽しくって·····」
生きる力をくれた。
いつの間にか、彼を愛する気持ちよりも、嫉妬と寂しさばかりになった。
それでもかけがえのない思い出だったから、宝物にする。
「ハルくんのことがだいすきだった·····ぜんぶ、ありがとう」
やっとハルキへの感謝の気持ちと、謝罪を伝えられる。
彼から離れるのは怖くて寂しすぎるけれど、きっとこれが正解だと、いつか納得できるだろう。
「あっそう」
果たして返ってきたのは、1秒にも満たないものだった。
ハッとして見上げた先だ。
華やかな美形が微笑むのを、こんなにゆっくりまじまじと見ることは無い。
そして目の前で、美しく歪にひきつった唇が出来上がった。
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