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🍸83.食いかけ?🍾
しおりを挟むじとりとしたつり目が、こちらをバックミラー越しに眺めた。
「ソレは俺のだったんすけど」
ちょうど残りを咥えたまま固まる。
そんなの、聞いてない。後出しだ。
「ご、ごめん·····」
そっと咥えてたのを口から出したら、相手は微妙な顔をした。
「いや、もう食ってください」
「ぅ」
諦めた声だ。
ふてぶてしい態度にも納得がいく。
毎回、"よりによって"を引き起こす、それが自分だ。
少し熱くなった目元をしばたかせ、ポケットに入れていた飴を取り出す。
「あげる」
本当は自分で食べたかったけど、謝罪の意を込めてシンヤにあげるのだ。
相変わらず冷めた瞳が、またバックミラー越しにこちらを見やる。
「食いかけ?」
「ちがう」
こっちのこと、どこまで食い意地張ってると思ってるんだ。
じっと見つめ返したら彼はぱかりと口をあけた。
「なに?」
「運転してるんで」
食べさせろということだ。
後ろから手を伸ばして彼の口に飴玉を放り込む。近づいたら、やっぱり黒服にしては勿体ないほど整った横顔だ。
「何味?」
「ミルクティー」
「砂糖味って感じ」
文句を言われても何も言い返す権利がない。
さっきまで美味しかったクリームを飲み込んで、両手に持っている残りのコロッケを見下ろす。
途端に重たく感じる。さっきまで咥えていたところが、心做しかしなりと萎れていた。
「·····やっぱ」
暫くとしない沈黙の後、シンヤが口火を切った。
「甘いの食ったら、塩っぱいのが食いたくなったんで、残ってんの下さい」
言いながらガリガリ音がする。
飴を全部噛み砕いたのだ。ゴクリと音がして、彼は再び口を開ける。
「·····これでいいの?」
さっきまで咥えてて、もういいと突き放されたものを少し持ち上げたら、目線だけが頷いた。
手にしていたカニクリームコロッケをおずおずと口の前に寄せる。
大口がパクリとそれを閉じ込める。
指先に上唇が触れた。
「他の食ってください」
飲み込むの、早くないだろうか?
ほぼ咀嚼しないで喉仏が上下して、直ぐに透き通った低音を発するから不思議だ。
言われた通り好きなのを選んで食べた。シュークリームを頬張りながらシンヤを見ていたが、彼はそれ以降全くこっちに話しかけなかった。
少し眠たくなってうたた寝したら、いつかに見た有名作品の、主人公がおにぎりを食べながら号泣するシーンが蘇ったりした。
シンヤは優しくもないし、この飯はコンビニ弁当だ。
ちょっとおかしくて夢の中で笑う。
目が覚めた時、車は店裏側の駐車場に止まっていた。
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